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2.3.2 珠江水系
2.3.2.1 船舶の概況
 2003年の珠江水系における運送船舶は2.04万隻、406.25万DWT、16.5万客席である。船舶は自航貨物船を主としており、押船の船隊、曳船の船隊の割合は比較的小さい。船舶の種類は河川及び船型の特徴に基づいて、主に珠江デルタ船型、西江幹線船型、支流及び山岳地帯河川船型に分類されている。
 
(1)珠江デルタ船型
 珠江デルタ航路は1,000トン級、3,000トン級海船航路及び内陸河川三級航路を主要航路として、四級、五級の航路を補助航路としている。船舶の多くは河川・海域直航船舶及び香港、マカオまで運航するコンテナ船、砂利船、ばら積み・雑貨貨物船、油船、液体危険品貨物船などであり、船型は短く、広く、喫水の深い大型船舶で、新造船は1,000トン以上で、航行速度は9ノットが主である。
 
(2)西江幹線船型
 西江幹線の船型は主に300DWT〜1,000DWTの動力貨物船であり、一般貨物船、液体危険品貨物船及び多目的コンテナ船もある。一部の1,000トン級江河川・海域直航多用途コンテナ船及びばら積みケミカル船は、主に西江貴港の下流で運航している。広西省の区間流域には内陸河川専用コンテナ船がなく、主に一般貨物船または多目的コンテナ船によっている。西江幹線の船型は中国その他の内陸河川航路の自航船船型と類似している。多数の香港、マカオ航路の船舶は全長を50mに制限されている。
 
(3)支流及び山岳地帯河流の船型
 珠江水系の支流の多くは山岳地帯の河川であり、運航している船舶は100DWT〜300DWTの機動船を主とし、一般的に喫水は浅く、長さの幅に対する比率及び喫水は大きく、やせた船型である。
 
 2003年の中国珠江水系における船舶用途別の保有数及び輸送力を調べてみると、中国珠江水系における内陸河川船舶は、揚子江幹線における船舶と同じように、ばら積み・雑貨船の隻数の割合が最も大きく、珠江水系内陸河川船舶総隻数のほぼ四分の三を占めている。つぎは客船で、17.4%を占めている。また、珠江水系における貨物船の平均船齢は10年であり、揚子江水系における貨物船平均船齢の14年より若い(表28を参照)。
 そのほかに、珠江水系のコンクリート船、木造船、船外機船の隻数は珠江水系船舶総隻数の約33%を占め、実輸送べースでは珠江水系全体の約11.3%を占めている。
 
表28  2003年の中国珠江水系における船舶用途別の保有数及び運送力
内陸河川船舶の分類 隻数 万DWT
(万客位)
平均DWT 平均船齢 老朽船舶率
(%)
改造船率
(%)
1. 機関動力船 ばら積み
ケミカル船
132 2.56 193.8 11.1 14.5 21
ばら積み
雑貨船
15,279 323.16 211.5 10 10 8.5
油船 483 26.52 549.1 12 31.3 34.6
コンテナ船 724 46.53 642.7 6 3 19.3
機動貨物船小計 16,618 398.78 240.0 10
2. 内陸河川はしけ 144 7.48 519.6 13.9 41.4 10.3
3. 内陸河川曳船
 (Towing Boat)
77 10.2 77.3 2.7
貨物船小計 16,839 406.25 241.3
4. 内陸河川客船 3,554 16.5 35.0 17.1 67.8 2.4
運送船舶合計 20,393 406.25 199.2
出典:MIRU調べ
 
図12 2003年の中国珠江水系における各種類の船舶隻数の割合
出典:MIRU調べ
 
図13 2003年の中国珠江水系における各種船舶の運送力の割合
出典:MIRU調べ
 
 2004年6月、中国交通部より公布された「珠江水系における貨物運送船舶主要寸法シリーズ」の基準に基づいて、現在、珠江水系において基準と一致した貨物船の運送力は珠江水系運送力全体の25%を占めている。50%ほどの既存貨物船はこれから強制的に改造され、または船舶設備の老化、船齢の超過などの原因で廃棄される。
 
※2003年の中国珠江水系における船舶運送の特徴
 珠江デルタ:珠江デルタにおける内陸河川運送企業は338社あり、うち、省間の運送企業は19社で、省内の運送企業は319社である。珠江デルタにおける内陸河川運送企業の平均運送力はわずか6,970DWTである。万DWT以上の運送力を持つ企業はわずか59社で、運送企業総数の17.4%を占めている。珠江デルタ地域における運送船の専用化は遅れており、セメント及び液体危険品貨物は簡易に改造された一般貨物船により運送されている。RO/RO船はほとんどない。多くのコンテナは多目的バラ積み雑貨船により運送され、専用コンテナ船は非常に少ない。
 西江幹線:西江幹線における内陸河川運送企業は194社であり、うち、省間の運送企業は138社で、省内の運送企業は56社である。西江幹線における内陸河川運送企業の平均運送力はわずか6,598DWTである。万DWT以上の運送力を持つ企業はわずか30社で、運送企業総数の15.5%を占めている。西江幹線地域の液体危険品貨物は、ほとんどが改造船で運送されており、一般貨物船に液体貨物タンクを取り付けて運ばれ、専用化は遅れている。そのほか、西江幹線運送業においては運送情報の交流が不足しているため、多くの船舶はほとんど片道運送の状態にあり(すなわち船舶は貨物を運送して空で帰るケースが多い)、船舶運送の効率と収益の低下をもたらしている。
 珠江上流:珠江上流における内陸河川運送企業は主に私営運送業者である。運送業務の多くは地方郷鎮農民による市場への農産物輸送であるため、超荷重量及び客・貨物の混合運送が多い。
 総じて言うと、珠江水系における船舶運送の専門化レベルや船舶の技術レベルが低く、船舶の積載量が小さく、船齢は高い。珠江水系における貨物船の平均積載量はわずか241.3DWTである。珠江デルタ及び西江幹線においては、300DWT以下の船舶が船舶総隻数の70%を占めている。一般ばら積み雑貨船の運送能力は過剰で、運送船舶の専用化の度合いは低い。
 
表29  2003年の中国珠江水系における内陸河川運送企業の企業数及び船舶保有隻数
珠江水系 運送企業 船舶保有数(隻) 万DWT
珠江デルタ 341 8,185 198.3
西江幹線 179 4,276 94.8
珠江水系 520 12,461 293.1
出典:MIRU調ベ
 
2.3.2.2 珠江水系における航運業の発展方向
 2005年3月、中国交通部は「珠江水系における航路運送の構造調整に関する意見」(中国語原文:「珠江航運結構調整意見」)(以下「意見」と称する)を作成し、初めて珠江水系航路運送の構造調整に関する指導文を配布した。「意見」では珠江水系における航路運送の構造調整の目標を明確にし、2010年までには貨物運送船舶の大型化、船隊の専業化、企業経営の集約化、内陸河川船舶の標準化を図ろうとしている。
 
表30  「珠江水系における航路運送の構造調整に関する意見」の調整目標
調整構造 珠江デルタ 西江幹線
輸送力構造
・船舶大型化、標準化、専門化を促進し、2010までに年間船舶平均積載量は400DWT以上に達し、標準化した船型は60%に達し、珠江デルタ水系地域の専門化運送システムを形成する。
・適当に旅客運送を発展し、快速化、個性化、地域化及び環境保護化の方向に発展する。
・2008年までに基本的に船外機船とコンクリート船を淘汰する。
・2004年から、老朽客船の省間運送市場への参入は承認されないこととなった。
・2010年までに標準化された船型を60%にし、船舶平均積載量は280DWT以上に、うち省間運送船舶の平均積載量は400DWTにする。
企業構造
・国有企業、集体企業の企業体制改革及び資産再編を積極的に促進し、出資者制度を設けて、これを突破口として、民間資本を吸収し、投資の多元化を促進する。株式制または民営企業をつくり、次第に産業または地域をまたがる経営体制の河川運送企業または運送集団企業となる。
・民営企業の発展に力を入れ、持ち株での提携、連合、併合などいろいろな方式を取り入れ、経営の多元化を実現する。
・法規により経営資格の不足企業、信用を守らない企業を淘汰し、水運経済の発展の促進役割を果たしている河川運送企業を発展させる。
運送構造
・2010年までに専門化した運送船舶の割合を50%にする。
・石炭、セメント、鉱石建築材料、液体危険品貨物及びコンテナなど専門化した運送と港の物流園の発展を重点として、集約化した経営を目標として、一部の専門化したバースを改造・建設し、基本的に珠江デルタ水系地域の専門化運送システムを形成する。
・2010年までに、専用化した運送船舶の割合を30%以上にする。
・石炭、ばら積みセメント、鉱石建築材料、液体危険品貨物及び内陸河川コンテナの専門化した運送を重点的に発展させる。
出典:MIRU調べ
 
 総じていうと、ここ数年の発展傾向に基づいて、珠江水系における内航運送では、大口ばら積み貨物の運送、特に鉱石建築材料、石油及びその製品、石炭などの運送が依然として大きなウエイトを占めている。そのほかに、ばら積みケミカル船、コンテナ船、ばら積みセメント船、LPG船などの市場潜在力も大きいと見られている。内航運送市場の需要に基づいて、「意見」は集約化した経営を目標として、一部の専門化したバースを改造・建設し、専門化した中堅運送企業をサポートして、河川・海域直航運送、対外貿易運送及び専門化運送の発展を奨励し、国内コンテナ運送の発展を促進し、次第に珠江デルタと西江幹線の専門化運送システムを形成させる。


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