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1.2 沿海物流経済及びその発展傾向
 中国の東部沿海地域、主に北京市、天津市、河北省、遼寧省、山東省、上海市、江蘇省、浙江省、広東省、福建省と海南省の11の省・市は、経済の最も発達した地域であり、成長の速い地域でもある。速い成長は物流への大きな需要をもたらす。物流活動の密度から見ると、東部沿海地域には環渤海2、揚子江デルタ3、珠江デルタ4の三大物流経済圏が形成されている。この三大物流経済圏は大きな物流の集積・発散とこれに伴う周辺地区への経済波及効果を持ち、中国全国の物流、人流、情報流を融合する重要な要であり、中国における現代物流発展の「成長点」となっている。三大物流圏の経済発展は中国内陸河川航運業にも大きな波及効果を及ぼしている。
 
(1)三大物流経済圏の主要経済指標
 2004年、三大物流経済地域の生産総額は8.86万億元で、中国全国の生産総額の64.9%を占めている。うち工業生産総額は4.47万億で、中国全国の工業生産総額の71.2%を占めている。
 
2 環渤海:主に北京市、天津市、遼寧省、河北省及び山東省である。
3 揚子江デルタ:上海市全体、江蘇省の蘇南地域と蘇中地域及び浙江省の浙東地域と浙北地域であるが、揚子江デルタ地域の経済一体化の進展と今後の発展傾向から考え、本報告書は上海市、浙江省、江蘇省三省・市をもって揚子江デルタのことを表す。
4 珠江デルタ:主に広州市、深市、珠海市、佛山市、江門市、東莞市、中山と惠州市の市区、惠陽市、惠東県、博羅県、肇慶市の端州区、鼎湖区、高要市、四会市など14の市県区を含む。
 
図4  2003年及び2004年の中国における三大物流経済圏のGDP割合
出典:2004年及び2005年中国統計年鑑、2004年中国国民経済と社会発展統計公報、2004年北京市、天津市、河北省、遼寧省、山東省、上海市、江蘇省、浙江省、広東省、福建省と海南省11ヵ省・市の国民経済と社会発展統計公報
 
図5  2003年及び2004年の中国における三大物流経済圏の工業生産額割合
出典:2004年及び2005年中国統計年艦、2004年中国国民経済と社会発展統計公報、2004年北京市、天津市、河北省、遼寧省、山東省、上海市、江蘇省、浙江省、広東省、福建省と海南省11ヵ省・市の国民経済と社会発展統計公報
 
(2)沿海物流業の発展傾向
●急速な成長期に入る。
 まず、2005年の中国東部沿海地域の経済が依然として急速な発展傾向にあるため、国民経済の派生需要としての物流活動は地域経済発展と比例して、東部沿海物流市場にも発展と繁栄をもたらしている。
 つぎに、東部沿海地域では輸出入貿易が盛んになり、対外貿易への依存度はますます高まっている。従って、国際物流の市場スペースも更に拡大すると見こまれる。加えて、中国製造業はグローバル生産体系と融合し、製品加工・組立を特徴とした「世界の工場」とも言われ、これも現代物流業と開放型物流ネットワーク体系の発展を推進していると考えられる。
 
●地域物流一体化
 2004年、中国経済の地域間における一体的な発展が加速してきており、これに伴い、中国の地域間物流の発展が促進されている。
 まず、中国内陸地域と香港、マカオ地域との協力を強化するため、中央政府は香港、マカオ特区政府と「中国と香港の貿易緊密化協定」(CEPAと称す)と「内陸地と緊密な経済貿易関係の構築に関する手配」に調印し、2004年1月1日から実施した。うち物流業はCEPAの重要内容の一つであり、如何にしてCEPAの枠組みのもとで協力・提携による共同発展を図るかは中国航運業、貨物代理業など物流業及び各レベル政府の注目が集まっている。上海市政府は香港特区政府と航空、水運、港湾、物流、万博、旅行、展覧会など八つの方面において協力協議を締結した。北京市商務局は北京と香港間の主要協力分野をビジネス貿易、物流、金融と医療などの分野に定め、年に2回の物流関連推薦会を開催し、香港物流企業の北京物流産業園区への進出を促進する。CEPAの実施に伴い、上海市、北京市、広東省、江蘇省など省・市と香港の地域間の物流協力はますます拡大し、香港系物流企業の内陸地域物流市場への進出も加速される。
 一方、中国揚子江デルタ、珠江デルタ、環渤海地域内物流の一体的発展も加速され、中国現代物流業の迅速な発展を促進している。
 2004年6月3日、「環珠江デルタ地域5協力枠組み協定」が調印された。協定の内容によると、環珠江デルタ地域においては地域交通運送速達ネットワーク及び地域情報交流ネットワークなど九大協力ネットワークが構築される。中国交通部は深・香港西部の物流ネットワーク建設の加速を通じて、珠江デルタと香港間の道路、内陸河コンテナ運送の発展を促進し、香港の物流センターとしてのポジションを固め、香港と内陸地物流業の整合を加速する。
 2004年6月17日、上海市において「揚子江デルタ物流発展共同会議」が開催された。会議の主旨によると、揚子江デルタ地域物流業の協力と交流を強化し、揚子江デルタ地域物流業の建設を推進、揚子江デルタ物流産業ベルトを作り、揚子江デルタ地域経済発展を促進する。
 2004年6月26日、「環渤海地域協力枠組み協定」が調印された。環渤海地域経済一体化の実質的な進展が見られた。現在、環渤海地域においては、北京市、天津市間の協力関係が最も密接で、北京・天津間の三つの交通プロジェクトが計画され、新北京・藩陽通路の建設プロジェクト、大連〜青島間では海を専用車両輸送船でつなぐ鉄道プロジェクトなども計画・提案されている。
 
●開放型物流市場となる。
 2005年中国物流市場は全面的に開放され始めた。中国政府のWTO加盟への承諾によると、2004年末から、物流業の大半では外国単独資本企業の設立が認められ始めた。2004年12月11日から、外国独資企業の道路貨物運送業、入国・出国道路運送及び倉庫貯蔵業への参入が認められる。2005年12月11日から、外国独資の国際複合一貫運送と貨物運送代理(郵政専門経営業務は除外)への参入が認められる。
 特に、東部沿海地域は中国経済、科学技術、文化の最も発達している地域であり、中国国内でグローバル経済競争に参入できる実力と活力を最も備えている。その巨大な経済力と外国資本の誘導力は、多くの外資系物流企業の中国市場参入及び独資経営を誘発しようとしている。
 
5 環珠江デルタ地域には福建省、江西省、湖南省、広東省、広西自治区、海南省、四川省、貴州省、云南省など九つの省及び香港、マカオ特別行政区を含む。


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