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1.4 PWC市場
1.4.1 市場の概況
 水上オートバイ(PWC)は一般的には「ジェットスキー」という呼び方で知られているが、「ジェットスキー」という名称は、カワサキ・モーターの登録商標であるため、一般名詞ではない。
 
(ボンバルディアからカワサキ、そしてまたボンバルディアに)
 PWCは1960年代にボンバルディア(Bombardier)が動力付きウォータースキーの概念に沿って、立って操作する型を発明したものの、それほど普及しなかった。しかし、カワサキが1970年代に入って、オートバイにまたがるように操作する「ジェットスキー」を初めて売り出して、一気に普及した。その後しばらくは、PWC市場はカワサキが最大手だったが、近年ではBRPが最大手に成長した。
 
 図14は、最近のPWCの利用台数を示す。利用台数は、2004年で148万台である。
 
図14 PWC利用台数
 
(90年代後半から低迷)
 PWC市場は1990年代中盤に全盛期を迎えた後、毎年のように縮小し続けている。PWCは2001年、パワーボート(何らかの動力で水上を航走する船舶すべての総称)市場の25%を占めているものの、1995年の36%からは大幅に減少している。
 シェア減少の主因は、騒音公害による苦情の急増を筆頭に、水質汚染問題(PWC使用禁止規制の浸透と強化)、事故発生率の高さにある。1995年には年間20万台が売れたが、2001年には8万3,000台、2002年には7万9,000台にまで減少した。米国コーストガード(U.S. Coast Guard)によると、2000年の事故発生率を比較した場合、PWCはその他のボートよりも5倍高いと言っている。
 
 図15は、PWCの販売台数と販売総額の推移を示す。
 
図15 PWC販売台数の推移(1990年〜2004年)
 
(価格上昇と個人向けという性質も低迷の要因)
 水上オートバイ工業会(Personal Watercraft Industry Association: PWIA)のエリノア ボウク(Elinore Boeke)広報担当によると、シェア縮小の原因の1つには価格上昇もある。1995年当時、PWCの平均販売価格は5,722ドルだったが、2003年は8,798ドル、2004年は9,226ドルと年々上昇している。
 しかも、2000年春から2003年末まで米国は不況だったため、ボートに比べて個人的娯楽性(家族全員が一緒に楽しめず、一人一人が利用する)が高いPWCへの購買意欲が抑制されたためと考えられている。1995年と2002年の売上げ(販売隻数ベース)を比較すると、船外機ボートが8%減少したのに対しPWCは60%も減少した。
また、2002年にPWCを売却した所有者数は2001年の2倍に達した。
 PWIAは、シードゥ(Sea-Doo)を生産するBRP、ジェットスキー(JETSKI)を生産するカワサキ・モータース、ウェイブラン(WaveRunne)を生産するヤマハ・モーター、そして、アクアトラックス(AquaTrax)を生産するアメリカン・ホンダ・モーターの4社で構成される。
 2003年までは、スノーモービルやATVの生産で知られるポラリス・インダストリーズ(Polaris Industries)もPWIAの会員だったが、「過去2〜3年の販売台数減少や、PWC部門が黒字になったことがないこと」、「ピークの1996年に比べると市場が半分に縮小したこと」、そして、「北米にあるポラリス・ディーラーの25%以下しかマリーン製品を扱っていないこと」を考えた結果、撤退を決定した(ビジネス・ジャーナル(Business Journal)、9/2/2004)。同社のトム・ティラー(Tom Tiller)最高経営責任者(CEO)は、「マリーン部門で1,300万ドルの損失を計上した。関連部署の20人を解雇し、在庫を抱えるディーラーには在庫清算を手伝うとともに、部品供給と保証に関連する業務は継続する」と発表している。
 
表18 1990〜2004年におけるPWC販売台数の推移
販売台数 利用台数 売上高総額($) 平均販売価格($)
1990 72,000
1991 68,000
1992 79,000
1993 107,000
1994 142,000
1995 200,000
1996 191,300
1997 176,200 1,000,000
1998 130,000 1,100,000
1999 106,000 1,180,000
2000 92,000 1,240,000 720,146,000 7,825
2001 80,900 1,290,000 641,456,100 7,929
2002 79,300 1,350,000 697,681,000 8,798
2003 80,600 1,420,000 716,501,800 8,890
2004 79,500 1,480,000 733,454,700 9,226
出典:PWIA、National Sporting Goods Association、NMMA
 
(各種改善で回復に期待)
 PWC市場に明るい材料がないわけではない。各社は1998年から2002年にかけて改良を重ねた結果、炭化水素の排出量を75%、エンジン音を70%低減させるのに成功している。さらに3人乗りの機種も増え、家族向け娯楽性を高めることで、売上げ回復を目指している。PWIAによると、米国でPWCを販売するディーラーは約2,000軒ある。1991〜1996年で、PWCの購入者平均年齢は41歳でそのうち85%が男性、71%が既婚、69%が何らかのパワーボートをそれ以前に所有していたことがある。
 また、スタティスカル・サーベイ(Statistical Survey)の調査によると、2005年1月に限って言えば、PWCの売上げ台数は前年同月比20%の増加を記録(ナイト・ライダー(Knight Ridder)、3/5/2005)した。景気回復を背景に、消音技術と排ガス抑制機能の向上、そして2〜3人が乗れる機種の拡充によって売上げが伸びたものと考えられている。実際、PWIAによる最近の調査では、PWC市場で現在売れているPWCの97%が2人以上乗りとなっている。
 
 表19にPWCの販売台数と売上高の動向及び予測を示す。
 
表19 PWCの販売台数と売上高の動向及び予測
1993年 1998年 2003年 2008年 2013年
販売台数 75,000 85,000 60,000 65,000 75,000
売上高(千$) 350,000 465,000 470,000 585,000 720,000
平均価格($) 4,700 5,500 7,800 9,000 10,300
プレジャーボート
売上高総額(千$)
3,960,000 5,810,000 7,190,000 9,240,000 11,780,000
PWCのボート
市場シエア(%)
8.8 8.0 6.5 6.3 6.1
出典:The Freedonia Group、2005年2月


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