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1.2.2 プレジャーボートメーカー
 プレジャーボートメーカーには、ボート、エンジン、舶用機器等、プレジャーボートをワンパッケージとして取り扱う戦略で、次々と関係企業を買収して大きくなっている業界第1位のブランズウィック・ボートグループがある。
 また、やはりこれまで小さなボートビルダーを吸収して大きくなり業界第1位であったが、負債返済のため一部門を競合相手のブランズウィックに売却したため、2位になったゲンマー・ホールディングスがある。ゲンマーは、ブランズウィックと異なり船体のみを製造する専門メーカーで、エンジン、舶用機器は、別のメーカーから購入して搭載するといったビジネス形態をとっている。
 この2大メーカーの他、中小又は零細な独立系ボートビルダーにより市場が形成されている。
 
<Brunswick Boat Group>
所在地:800 S. Gay St., Knoxville, TN 37929
電話:865.582.2200/ ファックス:865.582.2301
従業員:2万5,600人(親会社)
年間売上高:22億7,100万ドル(親会社の2004年実績)
年間純利益:1億792万ドル(親会社の2004年実績)
 
【概要】
 ブランズウィック・ボートグループ(BBG)は、ブランズウィック・コーポレーションのボート部門である。
 ブランズウィック・コーポレーションは、元々ビリヤード、ボーリング機器等の製造会社として設立されたが、現在では事業の骨子をプレジャーボートに移行し、売上総額の80%をボート部門とマリーンエンジン部門で占めている。その他の部門には、フィットネス施設及び機器の運営・製造部門がある。
 
 ブランズウィック・コーポレーションの2大部門であるボート部門とマリーンエンジン部門は、中小競合社を相次いで吸収することで、ここ数年の間に急激に拡大され、それぞれの市場で最大手の地位に躍り出た。
 マリーンエンジン部門には、「マリナー(Mariner)」、「マークルーザー(MerCruiser)」、「タインブリッジ・プロペラーズ(Teignbridge Propellers)」、そして量大手の船外機メーカー「マーキュリー・マリーン(Mercury Marine)」という4つのブランド又は技術部署がある。
 さらに、舶用電子機器メーカーのノーススター・テクノロジーズとタインブリッジプロペラーズを買収し、ブランズウィック・ニューテクノロジーズ(BNT)というマリーン関連機器部門も新設した。
 もう1つ注目されているのは、カミンズ(Cummins)傘下のカミンズ マリーン(Cummins Marine)と合弁会社カミンズ・マークルーザー・ディーゼル(Cummins MerCruiser Diesel Marine LLC)を設立し、ディーゼルエンジンを世界市場に出荷する事業を開始した。
 ボート、エンジン、関連機器という3部門により、最大手の総合プレジャーボートメーカーとしての地位を確立し、それぞれの部門を融合させながら、プレジャーボート市場の支配力を強めている。
 
 ブランズウィック・ボートグループ(BBG)は、高性能ボートで人気の高い「バハ(Baja)(長さ20〜44フィートのプレジャーボート)」ブランドを始めとして、「ベイライナー(Bayliner)(長さ16〜34フィート)」、「ボストン・ホウェイラー(Boston Whaler)(近海フィッシングボート)」、「ランド(Lund)(フィッシング及びユーティリティボート)」、「クレストライナー(Crestliner)(パーティーボート)」、「ロウ(Lowe)(フィッシング小型ボート)」、「メリディアン(Meridian)(ヨット)」、「シー・ボス(Sea Boss)(海水漁釣ボート)」等をそろえ、さらに2005年5月には「トリトン(Triton)(グラスファイバー製及び海水アルミニウム製フィッシングボート、平底ボートのメーカーで、従業員600人、2004年売上高は1億5,600万ドル)」を買収し、有名ブランドを擁する業界最大手にのし上がった。
 ブランズウィックの事業所は、国内ではカリフォルニアとフロリダをはじめ、イリノイ、ケンタッキー、メリーランド、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、ノース・カロライナ、オハイオ、オクラホマ、オレゴン、テネシー、テキサス、ワシントン、そしてウィスコンシンにある。
 外国では、オーストラリア、ベルギー、カナダ、フランス、ハンガリー、メキシコ、シンガポール、スウェーデン、そしてイギリスにある。
 
表3 ブランズウィック(親会社)の四半期業績
2004年第1四半期($) 2005年第1四半期($)
エンジン部門
 売上高 527,900,000 605,600,000
 純利益 42,600,000 52,000,000
ボート部門
 売上高 512,000,000 677,500,000
 純利益 32,000,000 49,500,000
全体売上高 1,199,600,000 1,411,000
全体純利益 78,500,000 99,100,000
 
表4 2004年におけるブランズウィック(親会社)の部門別売上高
売上高($) 同社全体に占める割合(%)
エンジン 2,353,000,000 42
ボート 2,271,000,000 40
フィットネス 558,000,000 10
ボーリング&ビリヤード 442,800,000 8
調整 (395,000,000)
合計 5,229,000,000 100
純利益 269,800,000
 
米国内売上高 3,540,000,000 68
国外売上高 1,689,000,000 32
合計 5,229,000,000 100
 
<Genmar Holdings, Inc.>
所在地:80 S. 8th St., Minneapolis, MN 55402
電話:612.337.1965/ ファックス:612.337.1994
従業員:5,600人
年間売上高:11億ドル(2003年推定)
年間純利益:非公開
 
【概要】
 1978年に設立されたプライベート企業のゲンマーは、250種類以上のプレジャーボートや高級ヨット、フィッシングボートを生産する業界第2位のボートメーカーである。特に60フィート以上の大型ヨットでは最大手である。
 また、競合他社と違って、ゲンマーの特徴は、米国内と30ヵ国以上で1,000軒以上の独立系ディーラーにボートを卸していることである。
 
 主要ブランドには、アクアスポーツ(Aquasport)、カリバー(Carver)、 チャンピオン(Champion)、フォーウィンズ(Four Winns)、ゲンマー・バイ・ゾディアック(Genmar by Zodiac)、グラストロン(Glastron)、ハイドラ・スポーツ(Hydra Sports)、ラルソン(Larson)、ランジャー(Ranger)、シーウィル(Seaswirl)、ストラトス(Stratos)、トライアンフ(Triumph)、ウェルクラフト(Wellcraft)がある。
 また、同社は、カーバー・ボート(Carver Boat Corporation, L.L.C.)とウェルクラフト・マリーン(Wellcraft Marine Corporation)の親会社でもある。カーバー・ボートは、ウィスコンシンに本社がある動力付き高級ヨットのメーカーで、年間売上高は約2億ドルである。ウェルクラフト・マリーンは、フロリダに本社があるフィッシングボートメーカーで、年間売上高は6,760万ドルである。
 「ゲンマー・ホールディングス」という社名からも分かるとおり、同社は、ボートメーカーを吸収し、それらボートメーカーの集合体の上に管理会社として存在する。同社は過去25年以上で計16社のボートメーカーを買収し、現在に至っている。
 これらのボートブランドとボートメーカーにより、消費者に対し最も広い選択肢を与えるボートメーカーとして信頼を勝ち取ってきた。
 
 他方、ゲンマーは2004年、傘下のクレストライナー、ロウ及びランドというボートブランドを競合社のブランズウィックに売却し、過去2年以上に渡ってボートメーカーを相次いで買収してきたブランズウィックに、ボート製造最大手の座を奪われている。
 
 ゲンマーは、大富豪のアーウィン・ジェイコブス(Irwin Jacobs)(63)と知人投資家達が、倒産したラーソン・インダストリーズ(Larson Industries)を1977年に3億ドルで買い取って創設された。以来、ジェイコブスは同社のトップに座り続けている。1987年と1989年、そして1999年に上場する機会をうかがったが、利益率の低さと1億3,000万ドルという負債、さらに時価総額がマイナス260万ドルという財務状況が理由で上場を見送ったという経緯がある。
 しかし、同社の40%を所有する同氏は、1990年中盤から2005年にかけて、アウトボード・マリーン(Outboard Marine Corp.)を2,800万ドルで買収するとともに、負債2億5,000万ドルを返済するために自己資産を売却し、中小ボートメーカーを傘下に収めながら、製造技術の向上に投資して業績を飛躍的に伸ばし、黒字転換に成功した。
 
表5 ゲンマーの過去4年間の売上高
2000年 2001年 2002年 2003年
売上高($) 858,000,000 990,000,000 1,200,000,000 1,100,000,000
*プライベート企業であるため、財務関連情報は非公開。数字は推定。
出典:Forbes、11/29/2004
 
 業績改善の理由には、ウォルマートとの業務提携もある。ゲンマーは1996年、バス釣り競技大会では全米最大級の「Wal-Mart FLW Tour」(いくつものサーキットが含まれる)のスポンサーになった。「Wal-Mart FLW Tour」は、自動車レースで言えばナスカー、テニスで言えばウィンブルドン、ゴルフで言えばマスターズのような存在である。その大会で、ジェイコブス会長は、ゲンマー・ランジャー・ボートを操舵する優勝者には優勝賞金を上乗せすることに決め、そのことが市場拡大に大きくに貢献した。
 アウトボード・マリーンを買収したことが手伝って、ゲンマーのボート販売数は2001年以来倍増した。ゲンマーは2004年、16万隻を記録した国産グラスファイバー製ボート販売の15.7%を占めた。首位はブランズウィック・ボートグループの17.3%であった。
 ゲンマーの生産施設は、アーカンソーとフロリダをはじめ、カンザス、ミネソタ、ノース・カロライナ、オレゴン、ウィスコンシン、そしてカナダにある。


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