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(推進システム関連)
●MTU社の最大出力エンジン4機で、2機が中央ウォータージェット(ブースター)を駆動。残りの2機がそれぞれブースターの両側の操船用ウォータージェット1基ずつを駆動する。エンジン1機が故障した場合、航海は不可能となる。
 
船尾中央ウォータージェット(ブースター、下方)
 
●2006年10月頃にはエンジンを8,200kWから9,200kWにアップグレードし、船速を2ノット程度上げる予定。(船体後部にはMTUのロゴがある。)
 
エンジン・ルーム
 
●煙突内には非常用の発動機MTU 60 250kW×1が収納されている。
●燃料タンク容量は145,000リットル。
●エンジンはコモンレール式電子制御噴射ポンプ搭載で効率と経済性を上げている。
●操船は隣接したウォータージェット3基、ラダー2基、及びアジマス・バウスラスター2基(Rolls Royce Aquamaster)で行っている。ウォータージェットとアジマス・バウスラスターのコントロールは同期化されているが、マニュアルで別々に操作することもできる。
●モーション・コントロールは、船首のTフォイル1基、船尾側のフィン・スタビライザー2基、トランサムのインタセプター2基というシステムである。
 
(その他運航、メンテナンス等)
●カタマラン特有の横揺れがなく、船首側で縦揺れが多少感じられるが快適性は高い。乗り心地はモノハルに似ている。Austalによると、乗客の快適性はカタマランよりも25〜40%向上した。
●また、当社カタマランと比較して、乗客・車両収容能力、重量の効率が35%向上。
●大型車両で重くなる船尾のバランスをとるため、入港時に、チーフ・オフィサーがチーフ・エンジニアを補佐し、ブリッジのノート型パソコンでバラスト・タンク×2とヒール・コントロール・タンク×2を操作する。
●船体の幅は30mでカタマランよりも4m広く、車両レーンは3本あり、同時に搬入・搬出が可能。港での停泊時間は20分程度。
 
車両搬出
 
●天候に左右されやすいカタマランと違い、理論上波高6mまでは航行可能であるが、同海域ではそれほど天候が悪化することはほとんどない。
●船体は塗装でなく、ノルウェーOrca Maritime社のビニール製接着フィルムでコーティングされていることも特徴。フィルムは10〜12年は交換の必要がない。
●本船は高速船としては珍しく乗員用の居住区があり、エンジン・ルームの前方に位置している。
●船体の幅が広く、乗客エリアは明るく広々としている。VIPラウンジもある。
 
乗客エリアとギフト・ショップ
 
●定期ドックはラ・パルマ島のドックを利用しているが、カタマランよりも船体が長いため、乾ドックはスペイン本土のドックを利用する必要がある。
●本船は昼間にテネリフェ島=ラ・ゴメラ島航路を3往復、夜間・早朝にテネリフェ島=ラ・パルマ島航路を1往復する。
●本船はプロトタイプであるため、各機能がモニタリングされており、AustalとMTUのエンジニアがほぼ常駐している。
●Austalは、米国General Dynamics社と共同で、本船を基本としたトリマラン船型の米国海軍向けLittoral Combat Ship(LCS)を開発中である。
●新デザインの高速船としては、軸プロペラとポッド推進装置を組み合わせた初のハイブリッド推進フェリーである新日本海フェリー「はまなす」、「あかしあ」も興味深い。


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