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3. 水槽試験結果
3.1 規則波中動揺と船首部での上下加速度
 Fig. 5に上下揺と縦揺の振幅の比較,Fig. 6にFP位置における上下加速度の振幅の比較を示す。上下揺の振幅zaは波振幅haで,縦揺の振幅θは波傾斜で,上下加速度の振幅azは波傾斜と重力加速度の積で無次元化されている。
 フルード数の増加とともに,上下揺や縦揺が最大となるピークが波長の長い方向にずれるという傾向が見られる。ピークが最大を迎えるまでは,3つの三胴船の中ではTri-Aの運動の振幅が最も小さく,Tri-Fの振幅が最も小さい.しかし,運動の振幅が最大となるピークを越えると,逆にTri-Aの振幅が最も大きく,Tri-Fの振幅が最も小さくなる。Tri-MはTri-FとTri-Aの中間に位置する。この傾向はどのフルード数においても同じである。FP位置での上下加速度は,縦揺における傾向とほぼ同じとなる。
 単胴船と比較すると,運動が最大となるビークまではTri-Aの振幅が最も小さいが,その領域を除くと単胴船の振幅が最も小さい。単胴船と比較して,三胴船の波浪中での縦運動が小さくなるとは一概には言えないことが分かる。この結果は,三胴船の方が波浪中運動が小さくなるとしたLee等の結果4)とは異なり,Dubrovsky等の見解5)に一致する。また,アウトリガーを後方にもってくるほど縦揺が小さくなるとしたBegovic等の理論計算結果3)とも異なるものである。
 
Fig. 5 Comparison of amplitudes of heave and pitch
(拡大画面:57KB)
 
Fig. 6  Comparison of amplitude of vertical acceleration at FP
(拡大画面:32KB)
 
3.2 波の打ち込みについて
 波の打ち込み状況を観察し,フルード数別に波長・船長比(λ/L)で整理したのがTable 4,5である。表中,
×:打ち込みは見られない
△:わずかに打ち込む
○:打ち込む
◎:激しく打ち込む
を意味する。
 フルード数が大きいほど,また船体運動の大きな波長・船長比のところで,波の打ち込みが観測されている。
 
Table 4 Situation of green water on deck (Fn=0.35)
λ/L Tri-F Tri-M Tri-A Mono
0.50 × × × ×
0.75 × × × ×
1.00 × × ×
1.25 ×
1.50 × × ×
1.75 × × × ×
2.00 × × × ×
2.25 × × × ×
2.50 × × × ×
 
Table 5 Situation of green water on deck (Fn=0.65)
λ/L Tri-F Tri-M Tri-A Mono
0.50 × × × ×
0.75 × × × ×
1.00 ×
1.25 ×
1.50
1.75 ×
2.00 × × × ×
2.25 × × × ×
2.50 X × × ×
 
 ここで特徴的なのは,単胴船と比較して,三胴船における波の打ち込みが顕著であるということである。Fn=0.35においては,3つの三胴船(Tri-F,Tri-M,Tri-A)に波の打ち込みが発生しており,単胴船では打ち込みは観測されていない。Fn=0.65では,その傾向がより顕著となっており,三胴船では激しい打ち込みが発生していたのに対し,単胴船ではλ/L=1.5においてわずかな打ち込みが観測されたに過ぎない。
 三胴船における代表的な波の打ち込み状況は次の通りであった。船体運動が大きくなると,主船体が動揺したことによって発生するスプラッシュ状の水が,アウトリガー先端部ならびに主船体と連結しているデッキ上に上がってくる。波長によっては,このスプラッシュ状の水がデッキ下部面に衝突する。なお,主船体の船首部から波が打ち込むことは,単胴船と同様に,ほとんど見られなかった。
 このような波の打ち込みを防ぐには,Fig. 3に示したような矩形平面のデッキ形状では不十分であり,主船体部先端からアウトリガー先端を結んだような大きな三角形平面のデッキ形状にする必要がある。また,デッキ下における波の衝突影響を緩和するため,Fig. 7に示すように,デッキ下部の形状を丸くする必要があると考えられる。これらは,既存の三胴船において既に採用されている6)
 
Fig. 7 An idea of deck sectional shape


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