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4.2.5 評価結果
 2005年の始めに投資を行うと同時にサービスを開始するという条件で、運賃を14.5万円として計算を行った。Table.17は25ノットの船舶を例としての収支の試算結果を表にしたものである。NPVを計算する際の割引率は、海運市況が変動の大きいものであることから、利子率よりも高い10%とした。
 
Table.17 Income and expenditure of 25 knot fleet
Year 2005 2010 2015
Income [billion yen] 7.0 8.3 10.5
Cost
[billion yen]
Fuel & Grease 2.3 2.3 2.3
Port 0.1 0.1 0.1
Manning 0.6 0.6 0.6
Maintenance 0.4 0.4 0.4
Insurance 0.2 0.2 0.2
Indirect cost 0.4 0.4 0.4
Cash Flow [billion yen] 3.1 4.3 6.5
NPV [discount rate: 10%] -10.0 2.9 15.3
 
 Fig. 10は各速度の船舶を2005年に購入して運航する場合の2015年までのキャッシュフローのNPVを計算した結果である。このグラフより、25ノットの船舶が投資対象としての価値が最も高いという結果が得られた。高速になると評価が悪くなる原因としては、本論文で用いた設計方法では高速船の船価が非常に高く見積もられることが考えられる。Fig. 11、Fig12は、各船速の船隊の輸送量が日中間航路の総輸送需要のうちに占める割合を表したものである。これらの船隊に対する輸送需要は輸出では総輸送需要の1.44%、輸入では3.29%であるが、速度が小さい船舶は積載量が小さくなるために需要をカバーできていない。そのために、速度が小さい船舶の評価が悪くなっていると考えられる。
 
Fig. 10 NPV of each speed of fleet
 
Fig. 11  Ratio of each fleet's transportation amount to the entire transportation demand in volume (export)
 
Fig. 12  Ratio of each fleet's transportation amount to the entire transportation demand in volume (import)
 
5. 結言
 本論文では、貨物量の将来予測と船舶の設計・評価方法を組み合わせて行う手法を提案した。また、その過程において中国経済と日中間貿易の現状を統計データや文献調査により明らかにした。
 貨物量の将来予測方法は、日本と中国の1人あたりGDPを用いた対数線形回帰モデルを作成することによって予測する方法を提案した。この方法を用いて実際に貨物量の将来予測を行ったところ、2015年の貨物量は、輸出が2004年の2倍から4倍に、輸入が2.2倍から5倍になるという結果を得た。
 現在東京―北海道間を運航しているフェリーをベースに住吉の式や山県の図表を用いてRORO船を設計し、貨物量の将来予測結果を地域ごとの総生産額に応じて配分したODの下で東京―上海間に運航する場合について投資対象としての評価をNPV法により行ったところ、25ノットの船舶を導入する場合が最も投資対象として価値があるという結果を得た。
 
謝辞
 本研究では独立行政法人海上技術安全研究所・物流研究センターのセンター長 勝原光治郎博士をはじめとする独立行政法人海上技術安全研究所・物流研究センターの方々には必要な資料の収集から研究の全般にわたる助言を頂きました。また、東京大学大学院教授 湯原哲夫博士、東京海洋大学教授 鶴田三郎博士、同助教授 黒川久幸博士、財団法人日本造船技術センター 鷲尾祐秀博士には研究会においてさまざまな面から助言を頂きました。ここに感謝の意を表します。
 
参考文献
1)中華人民共和国国家統計局:中国統計年鑑2004、中国統計出版社、2004
2)財務省: 貿易統計, http://www.customs.go.jp/toukei/info
3)鶴田三郎他: 国際海上貨物流動における相互依存関係について, 日本物流学会誌, pp.96-105, 2000
4)小坂浩之他: 環太平洋地域における国際コンテナ分布貨物量の推計、日本物流学会誌、Vol.8, pp.87-95、2000.5
5)United Nations Population Division: World Population Prospects 2002, United Nations, 2003
6)(財)運輸政策研究機構:長期輸送需要予測に関する調査報告書、2001
7)宮下國生:日本物流業のグローバル競争、千倉書房、2002
8)日本経済研究センター:日本経済研究センター長期経済予測、2001
9)UFJ総合研究所:2015年の中国(長期経済予想)、2003.1
10)内閣府:県民経済計算, http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kenmin/h14/main.html
11)田中謙司:シミュレーションによる幹線輸送システムとその適合船舶仕様の決定手法に関する研究、東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修士論文, 2000
12)山内康友:複数モードの競合区間における輸送システムの設計に関する研究、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学専攻修士論文、2003
13)海上保安庁:距離表、1995年
14)オーシャンコマース:2003年 版国際輸送ハンドブック, 2002
15)中小企業基盤整備機構:中小企業国際化支援レポート, http://j-net21qa.smrj.go.jp/fQA.php?qid=296
16)繊研新聞:2003年11月14日記事, http://www.senken.co.jp/column/k200311.htm
17)鷲尾祐秀:高速船の位置づけと果たすべき役割、日本造船学会誌、Vo1.867, pp.310-319, 2002.5
18)海事産業研究所:「テクノスーパーライナーの事業運営システムに関する調査」報告書, 1997


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