4.3 渦励振に関する実験結果と数値計算結果の比較
4.3.1 上端規則運動(一様流速あり)
Figs. 8に弾性管上端の運動時系列X0と代表計測点A〜Eにおける渦励振の時系列YA〜YEを示す。
Fig. 8a |
Time histories of transverse motion (Exp1, uniform flow + regular motion) |
Fig. 8b |
Time histories of transverse motion (Exp5, uniform flow + regular motion) |
Fig. 8aでは実験結果と数値計算結果は振動振幅・周期共に似た結果となっている。Fig. 8bにおいては短周期の運動については良く一致しているが、実験結果のYEには比較的長周期の動揺が発生しており、計算結果よりも振動振幅が大きくなっている事が分かる。
渦励振の振動周波数での比較を行う為、Figs. 9に渦励振の時系列の円振動数に関するFFTの結果を示す。
Fig. 9a |
FFT response of the transverse motion (Exp1) |
Fig. 9b |
FFT response of the transverse motion (Exp5) |
Figs. 9において実験結果と数値計算結果共に振動数に明確なピークがある事が確認出来る。Fig. 9aではピーク値の円振動数ωは両結果共に良く一致しているが、Fig. 9bに示されるようにYDやYEといった下端側でFig. 8bでも見られた長周期の動揺が発生している事が分かる。このような非線形な長周期の動揺は本数値計算法に考慮されていない為、数値計算結果にそのピーク値は存在しない。長周期の動揺に関しては、大楠10)によれば弾性管上端が上下方向に運動する事によって水平方向に励起される非線形現象である事が理論的に証明されている。しかし、本研究で行った実験で発生している運動の周期は大楠の理論から算定される周期とは異なっており、大楠による理論が全ての場合に適用されるとは限らない。長周期の動揺がどのような起振力により発生するのか、また数値計算法において考慮すべきか等は今後の課題である。
4.3.2 上端不規則運動のみ
Figs. 10に上端不規則運動を行う弾性管の上端の主運動方向時系列X0と代表計測点A〜Eにおける渦励振の時系列YA〜YEの実験結果と数値計算結果を示す。また、計測時間内に励起された渦励振を振動周波数で比較する為、Figs. 11に計測時間内に発生した渦励振のパワースペクトラムを示す。両図における実験結果については、上端に同じ不規則運動を与えて行った4回の実験結果の中で有義振幅(Hx)が150mmで平均周期(Tx)が4.0secの場合についてExp9を、またHx=150mm, Tx=6.0secの場合はExp13を代表例として示した。
Figs. 10において、実験結果と数値計算結果の振動振幅・周期は良く一致しているが、両結果の渦流出の位相がずれた為、渦励振の振動方向が正負逆となっている時刻がある事が分かる。
Fig. 10a |
Time histories of transverse motion (Exp9) |
Fig. 10b |
Time histories of transverse motion (Exp13) |
Fig. 11a |
Power spectrum of the transverse motion (Exp9) |
Fig. 11b |
Power spectrum of the transverse motion (Exp13) |
Flgs.11において、各深さ位置で発生した渦励振の振動ピーク域はExp9とExp13では異なっている事が先ず分かる。また、Fig. 11aでは、実験結果において模型全体に発生している最も高周波側の振動ピーク域が3.9 rad/secであるのに対して、数値計算結果では3.5 rad/secである。これは、数値計算法では主運動の平均移動速度で渦流出周波数ωs(z)を決定しているが、実験ではその値よりも早い周期で渦が流出した為だと考えられる。そして、Fig. 11aでの実験・数値計算結果の最大の相違点は、Fig. 10aで見られたような特に下端側で長周期の振動が発生している事である。
Fig. 11bの場合、実験ではExp9の場合と同様に模型の下端側で長周期(O.35 rad/sec付近)の振動が発生しており、低周波域において数値計算結果との差が見られる。しかし、各深さ位置におけるその他の振動ピーク域1.6、2.6 rad/secは良く一致している事が分かる。
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