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(2)部分溶込みの効果
 
Photo 2  Inclined Welded Joints of Partial Joint Penetration Weld (PJPW)
 
Fig. 5  Fracture Mode Change by relationship between Thickness of Web Plate and Total Thickness of Throat of Fillet Weld
 
 傾斜継手で、角度の大きい方の溶接ビードに部分溶込み溶接を行った場合の溶接線直角方向せん断強度特性を調べるために、Photo.2に示すように、傾斜角度の大きい方の溶接ビードにウェブ板厚(13mm)の約1/4(: 3mm)、または約1/2(: 6mm)の溶込み深さを持つ部分溶込みの傾斜継手を溶接し剪断試験を行った。試験片は、Fig. 1(b)に示した傾斜継手試験片と同形とした。この試験溶接継手は、同じく、KA32鋼を用いて手溶接(溶接材料B17)で溶接した。Fig. 5に示すように、合計のど厚がウェブ板厚(13mm)よりも小さい場合は負荷と反対側の溶接ビードA(図中A bead)で、大きい場合はウェブで、それぞれ破断することが分かった。ここに、Fig. 6にFEM解析結果を示す。FEM解析条件はFig. 3と同じである。このFig. 6から分かるように、ウェブが全面降伏しているときに、部分溶け込みが3mmの継手(TP: +20(3))では溶接ビードAが全面降伏しているのに対し、部分溶込みが6mmの継手(TP: +20(6))では全面降伏していない。即ち、ウェブが全面降伏する段階で溶接ビードAが全面降伏している場合に「溶接ビード破断」、全面降伏していない場合に「ウェブ破断」となるものと思われる。
 
Fig. 6  Stress Distribution of PJPW by FEM Analysis ( PJPW 3mm, 6mm)
 
(3)ギャップの影響
 傾斜継手のギャップの影響を調べるために、傾斜角度10°、15°の傾斜継手(A+10G、A+15G試験片)について面取りをせずに溶接し勇断試験を行った。A+10試験片はギャップ無しとするために面取りした。試験片は、Fig. 1(b)に示した傾斜継手試験片と同形とした。この試験溶接継手は、同じく、KA32鋼を用い手溶接(溶接材料B17)で溶接した。Table 1に各隅肉溶接部の最小のど厚(MINと記す)と見かけ上ギャップが無いとした場合ののど厚(STと記す)を、また、Photo 3に各溶接継手の断面マクロ写真をそれぞれ示す。ギャップが大きい場合(A+15G)は、溶接金属の一部がギャップ内に入り未溶着部は小さくなっている。Table 2に、破断荷重(最大荷重Pmax)及び最大荷重をMINまたはSTで割った値σmax(MIN)、σmax(ST)を示す。σmax(MIN)は、ギャップが有る場合の方が大きくなっている。これは、各試験片は溶接ビードAの未溶着部から破断したが、必ずしも溶接ビードAのMINと同じ断面では無く若干傾いた面(Photo 2中の図のF)であったことによる。σmax(ST)はギャップがある場合も、無い場合と同程度となった。今回の実験結果では、ギャップによる傾斜継手のせん断強度の低下は見られなかったが、安全側を考える場合には、日本鋼船工作法精度基準JSQS-19997)の“仕上げ:部材の隙間、板と骨材の隙間仕上げ、骨材が板に斜めに取付く(開先無)の許容限界は3mm以下”を用いるべきかと考える。
 
Table 1 Measurements of Inclined Welded Joints
TP No. Troat (mm)
n1 n2 n1+n2
MIN ST MIN ST MIN ST
A+10 4.7 4.6 4.7 3.4 9.4 8.0
A+10G 4.8 4.8 3.7 3.4 8.5 8.2
A+15G 4.6 5.3 3.6 4.0 8.2 9.3
Web thickness: 13mm, Web width: 50mm
 
Table 2 Normal Shear Strength of Inclined Welded Joints
TP No. I Angle (°) Gap (mm) Pmax (kN) σmax (MPa)
MIN (/A+10) ST (/A+10)
A+10 10 - 63.5 135 (1.00) 159 (1.00)
A+10G 10 2.2 77.5 183 (1.35) 189 (1.19)
A+15G 15 3.4 73.5 179 (1.33) 158 (1.00)
 
Photo 3 Sectional View of Inclined Welded Joints


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