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●第3部/ノーテレビ・ノーゲームの取り組みは何をもたらしたか
事例報告(2)
子どもたちをテレビ・テレヒゲーム漬けから守るために
〜小学校・幼稚園・PTA・地域連携でのノーテレビデー〜
島根県雲南市立久野小学校校長 伊藤 紀子
 
 久野小学校は、世帯数210戸の山間部にある、児童数37名の小さな学校である。ここには、園児数12名の久野幼稚園も併設されている。このような小さな山間部地域であることによって、子どもたちは「遊ぶ」ことにさまざまな困難を抱えており、メディア漬けになっている状況にあった。これに対し、それまでも学校として取り組みをおこなってきたが、清川代表理事の著書に出会ったことを契機に、ノーテレビ運動に取り組むことになった。
 ここでは、子どもたちや保護者、地域の認識を高めるためのさまざまな工夫がされた。
 子どもたちに対しては、清川さんが授業をおこなうなどして、テレビ・テレビゲーム漬けの怖さを認識させている。
 家庭に対しては、親子で「標語」を考えてもらい、そのコンテストをおこなっている。その標語は「テレビのスイッチOFFにして、家族のふれあいONにしよう」である。
 また、家庭の意識を高めるとともに、地域へのアピールのために、小学校や幼稚園、郵便局に掲げる「大フラッグ」、各家庭に掲げる「小フラッグ」、PTA活動の時かぶる「帽子」などのグッズを、PTAを中心に作成している。
 このように、子どもたち、家庭、地域で「ノーテレビ」の認識が高まるように、丁寧な取り組みがなされた。その結果、子どもたちはメディア漬けから脱却し、家庭内でのコミュニケーションも充実した。
 
 さらに、他事業とのタイアップによって、子どもたちの「遊び心」の充実にも力を注いでいる。文部科学省「子どもの居場所づくり」事業では、「子どもの豊かな心育て」として、平日週2日の放課後、休日月1回、小学校の空き教室を利用し、「子どもたちがやりたいこと」として、笹巻き、沢登り、稲刈り、餅つきなどさまざまな活動に、地域ぐるみで取り組んでいる。また、島根県教育委員会の「豊かな体験活動推進事業」による活動や、雲南市地域活性化事業による看板の製作など、地域を巻き込んだ取り組みを継続的に進めている。
 私たちの提起は、単にテレビを消しましょうというものではなく、メディアとの主体的な関わりを持てるようになるために、テレビと少し離れてみませんかということである。そして、メディアと離れた子どもたちに、豊かな体験ができるような取り組みが必要であることも常々提起してきた。この久野小学校を中心とした取り組みは、創意工夫と丁寧さにあふれた、「小さな地域の大きな実践」といえよう。
 
(レポート:子どもとメディア常務理事 原 陽一郎)
 
 
久野小学校「ノーテレビデー週間」のようす
 
全国セミナー参加者の声より
◎第1部(小泉氏の講演)
・環境によって遺伝子が発現するかどうかが決まるというお話が印象に残った。(学生)
・脳の構造や働きなど、詳しくお話ししていただいてとても勉強になりました。環境の大切さ、実体験の大切さを痛切に感じました。(保育園)
・小泉先生のように、子どもたちの未来、人間の未来を見すえた研究、提言をする方がどんどん声をあげてくださることを本当に望みます。(小学校)
・すばらしい講演でした。ぜひ抄録にまとめて広く伝えて欲しいです。(小児科医)
・とても刺激になり、驚きの連続でした。(養護教諭)
 
◎第2部(モデル授業)
・掲示板、チャットを体験して、子どもたちが密室でこんなものにのめり込んでいるのかと思いゾッとしました。(学生)
・授業で実際に子どもたちが体験することで、本当の危険性がわかり、力をつけることができると思いました。学校現場で実現することを願いたいです。(保育園)
・子どもたちの置かれている環境のすさまじさに改めて驚きました。保護者に現実を伝えるためにも、自分がもっと勉強しなければと思いました。(小学校)
・チャットにながれている言葉の羅列に驚きました。子どもたちが何時間もはまってしまうのが、自分がやってみてよくわかりました。(養護教諭)
・学校に帰り、一緒に広めてくれる人を探します。(養護教諭)
 
◎第3部(ノーテレビデーの取り組み)
・元気の出る報告でした。この資料は、学校と、教育長に持っていきます。(NPO)
・ノーテレビはやったもん勝ち!学校は地域や家庭を結ぶ役目だと思う。ひとりでも仲間を増やすことが大切だ。(小学校)
・この取り組みの成熟の兆しを感じた報告会でした。メディア漬けの脱出法としての実際的な方法を、他の関係機関と協力して提示する必要性を感じました。(小児科医)
・今後PTAで取り組むにあたり、たくさんのヒントがあり勉強になった。完璧な体制で取り組まなくてもやることで広がりがあるなど、力強い言葉を頂いた。(PTA)
 
◎全体への感想、今後に向けて
・内容の濃いお話が多く聞けて大変勉強になりました!町全体で取り組んでいけるようがんばります。(保育園)
・夜の学習会でインターネットの実情を知ることができて勉強になった。(保育園)
・次回は、ワークショップ形式でやるとより広がりやすいものができると思う。(小児科医)
・最後に出された「製造者責任」の話こそ、今後のキーポイントだと思います。次世代を担う子どもたちが金儲けの対象、犠牲になる社会であってはならない。(研究会)
・改めてこの活動に取り組んでいく決意ができた。(PTA)
・次の一歩が見えてきました。ありがとうございました。(子ども劇場)


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