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第3節 武力攻撃災害への対処
1 生活関連等施設の安全確保
○長官及び管区本部等の長は、生活関連等施設の管理者等から当該施設の安全の確保について支援の求めがあったとき、又は自ら必要と認めるときは、指導、助言、連絡体制の強化、資機材の提供、職員の派遣など生活関連等施設の安全確保のための必要な支援を行うよう努めるものとする。
○海上保安部長等は、国民保護法第102条第5項の規定に基づき、都道府県知事からの要請があったとき又は事態に照らして特に必要があると認めるときは、生活関連等施設の安全を確保するため立入制限区域を指定するものとする。この場合の立入制限区域の範囲は、生活関連等施設の特性及び周辺の地域の状況を勘案しつつ、生活関連等施設の安全確保の観点から合理的に判断して、立入りを制限し、禁止し、又は退去を命ずる必要があると考えられる区域とする。また、武力攻撃災害の状況等に応じ、立入制限区域の範囲の変更を行うものとする。
○海上保安部長等は、立入制限区域を指定したときは、速やかに当該施設の管理者に対してその旨を通知するとともに、広く住民に周知するため、生活関連等施設の所在する都道府県の公報や新聞への掲載、テレビ、ラジオ等を通じた発表等を行い、その範囲、期間その他必要な事項を公示するものとする。また、現場において、海上保安官は、可能な限り標示の設置等によりその範囲等を明らかにするものとする。
○海上保安官は、国民保護法第102条第7項の規定に基づき、立入制限区域が指定されたときは、特に生活関連等施設の管理者の許可を得た者以外の者に対し、必要に応じ立入りを制限し、禁止し又は退去を命ずるものとする。
 
2 武力攻撃原子力災害への対処
○武力攻撃原子力災害への対処に関する措置の実施に当たっては、国民保護法第105条第13項に規定する応急対策を的確に行うものとする。また、実施に当たっては、防災基本計画(原子力災害対策編)及び海上保安庁防災業務計画に定めのあるものについては、その定めの例により措置を講ずることを原則とするほか、特に以下に掲げる事項に留意するものとする。
(1)公示の通知及び伝達
 長官は、政府対策本部長から武力攻撃原子力災害に関する公示の通知を受けた場合は、その内容を管区本部長及び独立行政法人海上災害防止センターに通知するとともに、船舶内に在る者に伝達するよう努めるものとする。
(2)武力攻撃原子力災害合同対策協議会等への参画
 長官及び管区本部等の長は、国民保護法第105条第1項に規定する放射性物質等の放出又は放出のおそれに関する通報がなされた場合に設置される現地対策本部や武力攻撃原子力災害合同対策協議会等に職員を参画させ、関係機関と連携した応急対策の実施に努めるものとする。
(3)応急対策における安全確保
 応急対策を行う職員の安全を確保するため、原子力防災資機材を有効に活用するものとする。また、応急対策の実施に当たっては、放射線測定器等による状況把握のほか、専門家等から安全確保上必要な情報を入手するものとする。
(4)原子炉の運転停止に係る対応
 長官及び管区本部等の長は、原子炉の運転停止に係る当該施設及び運転要員の安全確保、関係機関との連絡等については、国の一元的な指揮の下で文部科学省、経済産業省、原子力安全・保安院、国土交通省、警察庁、原子力事業者等と相互に緊密に連携し対応するものとする。
 
3 NBC攻撃による災害への対処
○長官及び管区本部等の長は、NBC攻撃による武力攻撃災害が発生した場合は、NBC攻撃に関する迅速な情報収集を行い、関係機関と連絡調整を行いつつ、NBCの特性に十分留意し、職員の安全確保を図るための措置を講じた上で、専門部隊を中心として被災者の救助・救急活動等を行うものとする。この場合、汚染物質や当該汚染物質の検知等に関する情報を、消防機関、都道府県警察、保健所、地方衛生研究所、医療機関等の関係機関と共有するものとする。
○長官及び管区本部長は、国民保護法第108条第1項の規定に基づき、汚染の拡大を防止するため特に必要があると認めるときは、汚染され、又は汚染された疑いのある場所の交通を制限し、又は遮断する等汚染の局限化のために必要な措置を講ずるものとする。
○長官及び管区本部長は、国民保護法第109条第1項の規定に基づき、汚染の拡大を防止するため必要があると認めるときは、所属する職員に、他人の工作物又は船舶等に立ち入らせることができる。この場合、当該工作物又は船舶等に立ち入ろうとする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係人の請求があるときはこれを提示するものとする。
 
4 消火・防除活動及び救助・救急活動
○長官及び管区本部等の長は、武力攻撃災害が発生した場合は、当該武力攻撃災害の種類、規模等に応じて合理的な計画を立て、消火・防除活動及び救助・救急活動を行うものとする。この場合、必要に応じて地方公共団体及び民間の協力を求めることにより、必要な資機材を確保し、効率的な活動を行うものとする。
・危険物質等による災害発生時においては、火災、爆発、ガス中毒等による二次災害の発生を防止するため、ガス検知器による危険範囲の確認、火気使用制限等の危険防止措置、防護服の着用、ワクチンの接種等安全を図るための所要の措置を講じた上で消火・防除活動及び救助・救急活動等を行うものとする。
・必要な場合、陸上において被災市町村の消火・防除活動及び救助・救急活動を支援するものとする。
 
5 排出油等の防除等
○長官及び管区本部等の長は、武力攻撃災害の発生に伴い、船舶又は海洋施設その他の施設から大量の油等が海上に排出されたときは、武力攻撃災害の種類、規模等を勘案し、安全を確保した上で、次に掲げる措置を講ずるものとする。
・排出油等の状況、防除作業の実施状況、漂流予測等を総合的に把握した上で防除方針を策定し、防除措置に関係する者に対して必要な指導等を行うものとする。
・大量の排出油等を防除するために必要があると認めるときには、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)第39条第3項又は第40条に基づく防除措置命令、同法第41条の2に基づく関係行政機関の長等に対する防除措置の要請、同法第42条の26に基づく独立行政法人海上災害防止センターに対する指示等を適切に実施するものとする。
 
6 退避の指示、警戒区域の設定等
○海上保安部長等は、武力攻撃災害が発生するおそれがある場合であって、市町村長又は都道府県知事から要請があったときは、国民保護法第111条第3項の規定に基づき、武力攻撃災害が発生した場合にこれを拡大させるおそれがあると認められる設備又は物件の占有者、所有者又は管理者に対し、武力攻撃災害の拡大を防止するために必要な限度において、当該設備又は物件の除去、保安その他必要な措置を講ずべきことを指示するものとする。この場合、直ちにその旨を市町村長に通知するものとする。
○海上保安官は、武力攻撃災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、武力攻撃災害から住民の生命、身体若しくは財産を保護し、又は当該武力攻撃災害の拡大を防止するため特に必要があると認められ、かつ、市町村長若しくは都道府県知事による退避の指示を待ついとまがないと認めるとき、又はこれらの者から要請があったときは、国民保護法第112条第7項の規定に基づき、必要と認める地域の住民に対し、退避の指示をするものとする。この場合、必要に応じその退避先を指示するほか、直ちにその旨を市町村長に通知するものとする。
○海上保安官は、武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、武力攻撃災害への対処に関する措置を講ずるため緊急の必要があると認められ、かつ、市町村長若しくは都道府県知事による措置を待ついとまがないと認めるとき、又はこれらの者からの要請があったときは、国民保護法第113条第5項の規定に基づき、同条第1項及び第2項に規定する応急公用負担等の措置を講ずるものとする。この場合、直ちにその旨を市町村長に通知するものとする。
○海上保安官は、武力攻撃災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合において、武力攻撃災害による住民の生命又は身体に対する危険を防止するため特に必要があると認められ、かつ、市町村長若しくは都道府県知事による措置を待ついとまがないと認めるとき、又はこれらの者からの要請があったときは、国民保護法第114条第3項の規定により、警戒区域を設定し、船艇、航空機等により、船舶等に対し当該区域への立入りを制限し、禁止し、又は当該区域外への退去を命ずるものとする。この場合、直ちにその旨を市町村長に通知するものとする。
○住民への退避の指示、工作物等の使用等応急公用負担の措置及び警戒区域の設定等に当たっては、市町村、都道府県等と連絡調整を行いつつ、これまで情報収集した武力攻撃災害の状況、専門家の意見等を参考に退避場所や退避時期、警戒区域の設定場所等を決定するものとする。
 
7 漂流物等の処理の特例
○海上保安部長等は、国民保護法第116条の規定により、武力攻撃災害が発生した場合において、航路障害物等として漂流物又は沈没品を取り除いたときは、水難救護法(明治32年法律第95号)第29条第1項の規定にかかわらず、当該物件を自ら保管することができる。この場合、当該物件の処理については、水難救護法第2章の規定を準用する。
 
8 赤十字標章等及び特殊標章等の交付等
○国民保護法第157条第1項の特殊信号及び身分証明書、同条第2項の赤十字標章等並びに第158条第1項の特殊標章及び身分証明書(以下「標章等」という。)は、医療関係者、国民保護措置に係る職務を行う者等のほか、これらの者が使用する場所若しくは車両、船舶、航空機等を識別させるため、交付又は使用させることができるものであり、これらの者は、1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)の規定に基づき尊重され、かつ、保護されるものである。
○長官は、関係省庁申合せによる「赤十字標章等及び特殊標章等に係る事務の運用に関するガイドライン」に基づき定める要綱により、標章等を交付し、又は使用させるものとする。


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