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(4)埋没物の国別比較
 埋没物の国別の比較を行うため、1m2当たりの平均重量及び平均個数に換算し汚染度の比較を行った。埋没物の国際比較を図4.3-5に示す。
 プラスチック類を中心に計測した日本の埋没物の1m2当たりの平均重量は、ロシアと比べ1.7倍、韓国と比べ11.8倍、平均個数は、ロシアと比べ15.5倍、韓国と比べ272.4倍であった。
 埋没物における重量と個数の関係は、一般的には重量の増加に伴い、個数も増加するものの「製品破片」や「発泡スチレン」のように重量割合に比べ個数割合が極端に大きくなっているものも確認された。(「発泡スチレン」日本:2,220個/m2、ロシア:92個/m2、韓国:0個/m2
 漂着物調査結果を踏まえると、この理由として日本海沿岸の砂浜への恒常的に漂着する「製品破片」(または「製品」)や「発泡スチレン」などの漂着物が、ある程度の時間を要して劣化・破砕化され、海象・気象要因等の環境要因等により砂浜に埋没し、自然分解されず蓄積されていることが推察される。
 一方、漂着物と同様に日本とロシアの埋没物量の相違は、プラスチック類で説明され、これは両国でのプラスチック製品使用実態(量、用途)の相違を反映していると推察される。また、韓国では「タバコフィルター」が日本、ロシアより多いものの、他のプラスチックの項目は非常に少なくなっている。この理由は、韓国では、海岸管理者等による海岸清掃活動が活発に行われているため、それらの効果が反映していると考えられる。
 
図4.3-5 埋没物の国際比較
 
(5)埋没物と漂着物の関係
 海岸に漂着したプラスチックなどのうち細分化したものは砂に埋もれて蓄積し、「埋没物」となる。しかし、視認などの通常の海岸調査では計測することができないため、漂着物と埋没物の関係を1m2当たりに換算し、標着物調査海岸(51海岸)と埋没物調査海岸(11海岸)のうち共通する11海岸で海岸毎の漂着物量と埋没物量の比較検討を行った。漂着物及び埋没物の海岸別重量・個数を表4.4-1、漂着物と埋没物の相関関係を図4.4-1〜2に示す。
 重量では、漂着物が1m2当たりの平均49.28g/m2(1.57〜389.95g/m2)、埋没物が1m2当たりの平均19.23g/m2(0.01〜91.87g/m2)であり、11海岸全体の埋没物の比率(埋没物重量/漂着物重量)は0.39であった。この中で、埋没物の比率が最もの高かったのは、富山県の松太枝浜(日本)の8.83であり、次いで佐賀県の相賀の浜(日本)3.45 ウスリイスキー湾エンゲリマ入江(ロシア)3.37などであった。
 個数では、漂着物が1m2当たりの平均8.94個/m2(0.37〜60.89個/m2)、埋没物が1m2当たりの平均2,225.19個/m2(6.25〜14,906.25個/m2)であり、11海岸全体の埋没物の比率(埋没物重量/漂着物重量)は248.82であった。この中で、埋没物の比率の高かったのは、富山県の松太枝浜(日本)3,023.58であった。
 全般的な傾向としては、漂着物の多い海岸では埋没物も多い傾向が認められるが、明瞭な相関関係は認められなかった。
 埋没物の比率で評価した場合、重量では、11海岸中、1以上が5海岸、0.1以上1未満が3海岸であった。つまり、全体の約7割程度の海岸で埋没物が漂着物と同程度若しくは、それ以上に埋没していることを意味しており、広範囲に多くの人工プラスチック類が埋没されていることが示唆される。
 また、富山県の松太枝浜(日本)のように漂着物調査と埋没物調査の重量比率(8.83)に比べ個数比率(3,023.58)が極端に大きい海岸も存在しており、重量が軽く、破片化されやすいプラスチック類は、海岸に漂着した後、埋没物として沿岸に蓄積している可能性も推察される。
 長崎県の清石浜海水浴場(日本)では、平成14年度の調査にて、埋没物が601.92g/m2、42,551個/m2(平均1,253.99g/m2、88,648個/m2)という驚異的な量が採集された。平成15年度の調査は106,53g/m2、7,536個/m2(平均221.94g/m2、15,700個/m2)であり、平成14年度と比べて減少はしたものの日本の海岸の中で最も埋没物の多い海岸であったが、本年度の調査では、平成14〜15年度の調査に比べると清石浜海水浴場(日本)は、埋没物の重量・個数とも少なかった。
 このようなことから、海岸ゴミにおけるプラスチックごみ汚染の実態や挙動を解明するためには、今後とも埋没・漂着物調査を実施し知見の充実や調査精度の向上を進める必要がある。
 
図4.4-1 漂着物と埋没物(重量)
 
図4.4-2 漂着物と埋没物(個数)
 
表4.4-1 漂着物及び埋没物の海岸別重量・個数
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