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3.2.3 海外のものと推定される漂着物の分析
(1)海外からの漂着物の集計
 海外からの漂着物と推定される調査海岸別の漂着物重量を表3.2.3-1、個数を表3.2.3-2に示す。
 海外のものと推定される漂着物は、5海岸中3海岸で採集され、その総数は874.0g、16個であった。ロシア国内で採集された漂着物(15,797.5g、1,439個)に対する割合は、重量で5.5%、個数で1.1%であった。
 
表3.2.3-1  海外の漂着物と推定される調査海岸別の漂着物重量
(拡大画面:52KB)
 
表3.2.3-2  海外の漂着物と推定される調査海岸別の漂着物個数
(拡大画面:52KB)
 
(2)組成別分類
 海外からのものと推定される漂着物の組成別重量比率を図3.2.3-1、個数比率を図3.2.3-2に示す。
 海外のものと推定される漂着物は、重量別では、「ガラス・陶磁器類」734.0g(海外重量の84.0%)と最も重く、次いで「金属類」54.0g(同6.2%)、「ゴム類」50.0g(同5.7%)の順であった。
 個数別では、「プラスチック類」7個(海外個数の43.8%)と最も多く、次いで「ガラス・陶磁器類」4個(同25.0%)、「布類」2個(同12.5%)の順であった。
 
図3.2.3-1 海外のものと考えられる漂着物重量比率
 
図3.2.3-2 海外のものと考えられる漂着物個数比率
 
 最も多く採集された「プラスチック類」の内訳は、「雑貨類」が3個(プラスチック類の42.9%)と最も多く、次いで「袋」2個(同28.6%)、「プラボトル」1個(14.3%)、「容器類」1個(14.3%)であった。
 「プラスチック類」は、自然界で分解されにくく、軽く浮遊しやすいなど長距離輸送型の特性を有しているため、最も多かったものと推察される。
 また、100m2当たりの海岸別海外漂着物個数を図3.2.3-3に示す。
 最も多く海外漂着物が採集された海岸は、沿海地方のウスリイスキー湾エンゲリマ入江 2個/100m2であり、次いでポポフ島ポグラニチナヤ入江 1個/100m2であった。また、ハバロフスク地方のムチケ入江、トキ入江、オブマンナヤ入江では1個/100m2未満であり、ロシアにおける海外漂着物は僅少であった。
 
図3.2.3-3 100m2当たりの海岸別海外漂着物個数
 
(3)漂着物の発生源
 ハバロフスク地方のムチケ入江は、ヴァーニンスキー地方トキ村周辺の鉄道駅の近くの海岸である。調査地区は、ムチケ入江の中で最も遮蔽されている地区であり、陸側は盛土の土手になっており、土手は車道として使用されている。その近くには、砂・砂利の採掘場がある。夏場は保養地として利用されている。清掃は行なわれていない。ムチケ入江では、「ガラス・陶磁器類」の占める割合が高く、遮蔽された地形であり、清掃等も行なわれていないことから、それらの漂着物は、漂着した可能性が強いものの、明確な判断は困難である。
 ハバロフスク地方のトキ入江は、トキ島地方自然公園(オットセイの群棲地)の一部であり、トキ島は、海岸から1Kmほど離れている。入江の海岸に鉄道が沿っており、海岸には、番人の家や補助棟がある。入江の場所は、囲って仕切られており、立ち入りが制限されている。トキ入江では、海外漂着物は確認されなかった。
 ハバロフスク地方のオブマンナヤ入江は、調査海岸近くの状況は不明である。オブマンナヤ入江では、海外漂着物は確認されなかった。
 沿海地方のウスリイスキー湾エンゲリマ入江は、ムラヴィヨフ・アムールスキー半島東の中心部に位置し、海水浴場として利用されている。海水浴場側には、全ロシア児童センターや休養施設がある。湾は、工業地域や住宅地から離れていて、森に囲まれている。海水浴場の清掃は、児童センター開館前と海水浴シーズン後の年に2回と海水浴シーズン中に行なわれている。また、年間利用者は約5万人である。ウスリイスキー湾エンゲリマ入江では、「プラスチック類」の割合が高かったが、それらの漂着物は、漂着した可能性が強いものの、明確な判断は困難である。
 沿海地方のポポフ島ポグラニチナヤ入江は、ポポフ島南東部に位置し、工業地域や住宅地域から離れており、年間50万人が利用する海水浴場である。海水浴場の清掃は、シーズン中は、毎日行われているが、「プラスチック類」の割合が多く、それらの漂着物は、漂着した可能性が強いものの、明確な判断は困難である。
 
3.2.4 漂着物調査のまとめ
 平成9年度から実施され、平成16年度で8回目を迎えた本年度の調査は、ハバロフスク地方、沿岸地方の2自治体、5海岸で共同実施された。
 平成16年度調査は5海岸、24区画、2,250m2で実施され、採集された海岸漂着物の総重量が15,797.5g、総個数が1,439個であった。
 重量別では、「ガラス・陶磁器類」が7,252.0g(総重量の45.9%)と最も重く、次いで「その他の人工物」が3,412.0g(同21.6%)、「プラスチック類」が2,517.0g(同15.9%)、「金属類」が1,589.0g(同10.1%)、「布類」433.0g(同2.7%)、「ゴム類」344.0g(同2.2%)の順であり、「発泡スチレン類」、「紙類」の漂着物に占める割合は低かった。
 個数別では、「プラスチック類」が513個(総個数の35.6%)と最も多く、次いで「ガラス・陶磁器類」が504個(同35.0%)、「その他の人工物」が236個(同16.4%)、「発泡スチレン類」88個(同6.1%)、「紙類」が35個(同2.4%)、「金属類」が35個(同2.4%)の順であり、「ゴム類」、「布類」の漂着物に占める割合は低かった。
 プラスチック類では、「プラスチックの破片」、「シートや袋の破片」、「ふた・キャップ」、「タバコのフィルター」、「ひも」などが多く採集された。また、プラスチックの原材料である「レジンペレット」も7個採集された。
 海外のものと推定される漂着物は、5海岸中3海岸で採集され、その総数は874.0g、16個と少なく、ロシア国内で採集された漂着物(15,797.5g、1,439個)に対する割合は、重量で5.5%、個数で1.1%であった。
 個数別では、「プラスチック類」が7個であり、海外個数の43.8%を占めており、ロシア国内のものと考えられる漂着物と同様の傾向であった。
 本年度調査は昨年度調査と比較すると、調査規模をみると、区画数は2割程度少なく、海岸調査延べ面積は1割程度少なかった。採集された漂着物の総重量については5割程度、総個数は1割程度多かった。両年度とも総重量、総個数の採集内訳としては「プラスチック類」、「ガラス・陶磁器類」の占める割合がやや高かった。


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