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1 調査の概要
1.1 調査の背景、目的
 日本海は、日本、韓国、ロシア等により囲まれた閉鎖性海域であり、経済交流や文化交流の国際的な歴史的舞台であるとともに、沿岸地域にとって、漁業資源や海洋レクリエーションの場として数多くの恵みをもたらしてくれる貴重な共有財産でもある。このため、このような国際海域は、沿岸諸国が共に連携・協力して環境汚染の未然防止を図り、守り育てていくことが極めて重要である。
 この豊かで美しいといわれている日本海では、近年、漂流・漂着物の増大による海洋環境、漁業および船舶の航行などへの影響が懸念されている。その主な原因物質は、熱や圧力を加えることによって容易に成型加工のできる高分子物質、いわゆる“プラスチック製品”であることが指摘されており、これらの漂流・漂着は、国際的な問題としても顕在化している。
 これらのことから、(財)環日本海環境協力センター(以下「NPEC」とする。)では、漂着物等による海辺の環境汚染の実態を把握するため、平成8年度に「日本海沿岸の海辺の埋没・漂着物調査」を秋田県から山口県までの日本国内10自治体の連携・協力により、16海岸で実施した。続いて平成9年度には、新たに日本国内3道府県に加え、韓国、ロシアの自治体の参加が得られ、日本海沿岸の国際共同調査として実施した。
 その後、この調査は日本海沿岸の国際共同調査として続けられ、平成13年度には新たに日本の九州地域の3自治体及び韓国の1民間団体が参加し、さらに平成14年度には韓国の忠清南道と中国の遼寧省、平成15年度には韓国の慶尚北道が参加するなど、調査範囲を日本海沿岸のみでなく黄海沿岸にまで拡大した。調査参加自治体数、海岸数及び参加人数の推移を表1.1-1、図1.1-1に示す。
 これらの調査結果からは、広く日本海沿岸に、プラスチック等の人工物が散乱していることが確認されるなど、今後の海洋環境保全対策、廃棄物対策、漁場保全対策のための基礎資料が得られるだけでなく、調査への参加を通して日本海沿岸の地域住民一人ひとりが「ごみを捨てない心、日本海の環境を守ろうとする心を育む」という共通意識が醸成されることにも役立つものである。
 
1.2 調査の対象地域、構成
(1)調査の対象地域及び海岸
 調査は、日本海及び黄海に面する日本、ロシア、韓国、中国の4か国、25自治体の51海岸で実施した。各国の調査地域は、以下のとおりである。
日本(16道府県26海岸):
北海道、青森県、秋田県、山形県、新潟県、富山県、石川県、福井県、京都府、兵庫県、鳥取県、島根県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県
ロシア(2自治体5海岸):ハバロフスク地方、沿海地方
韓国(3自治体6海岸):江原道、慶尚北道、忠清南道
中国(4自治体14海岸):遼寧省、河北省、山東省、江蘇省
 
 調査海岸の名称及び位置は、「2 実地調査の概況」に示すとおりである。
 
表1.1-1 調査参加自治体数、海岸数及び参加人数の推移
年度 参加自治体数 海岸数 参加人数
(人)
日本 ロシア 韓国 中国 合計
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
10
13
13
13
13
16
16
16
16
-
2
3
3
3
3
3
2
2
-
1
-
-
-
1
2
2
3
-
-
-
-
-
-
1
4
4
10
16
16
16
16
20
22
24
25
16
27
29
26
26
35
43
48
51
548
1,268
957
851
831
1,065
1,346
1,620
1,864
 
図1.1-1 調査参加自治体数、海岸数及び参加人数の推移
 
(2)調査の構成及び方法
 調査は、海岸に漂着した人工物を調べる「漂着物調査」と海岸の砂浜に埋もれているプラスチック等を調べる「埋没物調査」で構成され、埋没物調査については、主に富山県立大学短期大学部 楠井隆史教授が分析等を行った。
 
 調査方法については、「2 実地調査の概況」に示すとおりとした。図1.2-1に調査全体フローを示す。
 
図1.2-1 調査全体フロー


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