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4.2 陸上試験装置による検証試験
 4.1節で述べたように陸上試験装置は主にばいじん除去と増湿冷却機能を持たせたジェットスクラバとSOX除去を行なうACF反応器から構成される。本研究では先ずジェットスクラバ単体の性能試験を実施し、ジェットスクラバの基本性能を把握する。また、ばいじん除去性能および実船での適用も考慮したジェットスクラバ運用条件を明らかにする。その後ACF反応器とあわせた排煙処理システムとしての性能試験を実施し、船舶への適用および課題を検討する。
 
4.2.1 試験方法および条件
(1)ジェットスクラバ単体性能評価試験
 性能試験ではスプレー水として海水を使用した。一般的な海水中の主要成分濃度(3)を表4.2.1に示す。
 
表4.2.1 海水中の主要成分と濃度(単位:g/kg)(3)
Dittemar(1884)の値
Cl 19.354
Na 10.702
S04 2.691
Mg 1.310
Ca 0.419
K 0.387
C03 0.145
Br 0.0659
 
 ジェットスクラバ単体の性能評価試験では主にばいじん除去性能を把握することを目的としているため、スクラバにて噴霧する海水は循環して使用した。SOX除去によるpHの低下が生じるので循環海水は図4.1.1に示すジェットスクラバ給水タンク内にて苛性ソーダ(NaOH)を用いてpHを7.9〜8.1に制御した。
 排ガス源に用いた小型発電機用ディーゼルエンジンの仕様を表4.2.2に示し、使用したA重油の燃料性状は表4.2.3に示す。硫黄分は1%以下となっている。当該ディーゼルエンジンはばいじん濃度が100mg/Nm3以上になるように調整し、硫黄酸化物(SOX)、窒素酸化物(NOX)等の排ガス成分の濃度調整は行なわなかった。
 
表4.2.2 小型発電機用エンジン仕様
項目 仕様
形式 4サイクル過給器付
シリンダ数 4
定格出力 90kW級
 
表4.2.3 使用したA重油の燃料性状
項目 性状
灰分[wt.%] 0.003
残留炭素分[wt.%] 0.49
セタン指数(JISK2204) 47
動粘度(50℃)[mm2/s] 2.708
密度(15℃)[g/cm3 0.8723
引火点[℃] 75
硫黄分[wt.%] 0.88
窒素分[wt.%] 0.02
推定水素分[wt.%] 12.8
推定炭素分[wt.%] 86.3
水分[vol.%] 0.01
 
 本試験ではジェットスクラバのばいじん除去およびSOX除去性能に寄与するスプレー水流量、スプレー水粒径をパラメータにして性能を評価することとした。水量と粒径は使用ノズルと噴霧圧により決まるため表4.2.4に示す3種のノズル(図4.2.1、図4.2.2)を使用し、試験条件は表4.2.5に示す6条件とした。ジェットスクラバの効果が明確になるよう、噴霧圧力が0.3〜0.5MPa(スプレー水粒径:小、中)となるRun1、Run2、Run4、Run6ではジェットスクラバのスロート部において、ガス流速よりも水滴の速度が大きくなるように設定し、噴霧圧力が0.1MPa(スプレー水粒径:大)となるRun3、Run5ではガス流速よりも水滴の速度が小さくなるようにした。
 
表4.2.4 使用ノズルの仕様
(1)スプレー水流量
オリフィス径
[mm]
スプレー水流量
[L/min]
0.007MPa 0.15MPa 0.3MPa 0.5MPa 0.7MPa
ノズルA 2.4 2.7 3.9 5.5 7.1 8.4
ノズルB 3.2 5.7 8.4 11.8 15.3 18.1
ノズルC 5.6 17.2 25 36 46 54
 
(2)スプレー角度
オリフィス径
[mm]
スプレー角度
0.007MPa 0.3MPa 0.7MPa
ノズルA 2.4 13° 15° 15°
ノズルB 3.2 13° 15° 15°
ノズルC 5.6 13° 15° 15°
 
図4.2.1 使用ノズル外観と噴霧状況
(a)ノズルA
 
(b)ノズルB
 
(c)ノズルC
 
図4.2.2 スプレー水流量と圧力の関係(仕様と実測値)
 
表4.2.5 ジェットスクラバ単体性能評価試験条件
ノズル種 噴霧圧力
[MPa]
スプレー水流量
[L/min]
スプレー水粒径 処理ガス量
[Nm3/h]
L/G
[L/Nm3
Run 1 ノズルC 0.5 46 146 19.0
Run 2 ノズルC 0.3 36 148 14.6
Run 3 ノズルC 0.1 21.4 146 8.8
Run 4 ノズルB 0.5 15.3 152 6.0
Run 5 ノズルB 0.1 7.5 146 2.9
Run 6 ノズルA 0.5 7.1 146 2.9


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