第5章 平成17年度事業の成果
平成17年度事業は、「情報統合化による相手船動静監視システムの開発」に関し、第4章で述べた平成16年度で実施されたプロトタイプの試作および実験艇搭載試験も含めた工場評価による基本動作評価の成果を受けて、実船搭載による総合的評価試験を基本とした実用化に向けたデータ取得や各種の機能/性能改善を実施する事を大きな目標とした。そのための事業の骨格として、プロトタイプの実船搭載作業、海上評価試験の実施、プロジェクトチームによる評価結果の分析およびソフトウェア改善提案、それらに基づいたソフトウェア改善作業の実施を各個別目標として設定した。加えて本事業の成果に対して、操船経験者に参加していただき海上評価試験や陸上評価試験等の客観的評価を実施する事も個別目標の一つとして設定した。
以上の各目標に対してプロトタイプの実船装備、ソフトウェアの改善作業、陸上評価環境の構築、海上評価試験の実施、陸上評価試験の実施などをプロジェクトチーム全体として、あるいはチーム内の各担当として実施して以下の様な成果が得られた。
なお、プロトタイプに関する改善内容、陸上評価システムの概要、海上および陸上評価指針、評価方法ならびに評価結果等に関しては、それぞれ本章にて項を別にして報告するものとする。
(1)プロトタイプの実船装備および撤去作業
相手船動静監視システムの「さんふらわあ とまこまい」殿への装備および撤去に関し、平成17年度は以下それぞれの一連の関連作業が実施された。
・4月初旬〜 実船実験搭載用機材(ブリッジ内据付のためのラック等)設計、製作/装備機器のコンパス安全距離測定/実船搭載・据付工事(商船三井フェリー「さんふらわあ とまこまい」)/搭載レーダの無線局免許取得(実験局:期限平成17年12月末)
・12月中旬〜1月初旬 商船三井フェリー(株)にて「さんふらわあ とまこまい」実験機器撤去計画打合せ/ユニバーサル造船(株)因島事業所にて実験機器撤去工事の打合せ/実験機器撤去工事および原状復旧工事実施(於:ユニバーサル造船・因島事業所)
(2)プロジェクト会議の実施
事業内容の実施方針確認、相手船動静監視システムのソフトウェア変更に伴う評価、さらなる機能/性能向上に資するための提案を行なう事や、その他事業遂行上に必要な事項等を審議する事などを目的としたプロジェクト会議を計5回実施した。(平成17年6月3日〜平成17年12月8日)
(3)プロトタイプのソフトウェア改善作業
(2)項のプロジェクト会議およびその他の評価結果ならびに改善提案に基づき相手船動静監視装置プロトタイプのソフトウェア改善作業を実施した。
(4)陸上評価用航行データ再生システムの構築
プロジェクトチームならびに操船経験者が陸上においても相手船動静監視システムの動作確認および動作評価が可能な様に、「さんふらわあ とまこまい」殿にて収録した各種航行環境データが再現できる陸上評価用航行データ再生システムを構築した。
(5)「さんふらわあ とまこまい」殿による海上評価試験の実施
相手船動静監視システムプロトタイプの海上評価試験に関し、商船三井フェリー(株)殿、(株)エム・オー・マリンコンサルティング殿のご協力をいただき平成17年5月から同年12月までの間に計8回実施された。
各回の日時および主要テーマ等に関してはP37に示す。
(6)陸上評価システムによる陸上評価試験の実施
相手船動静監視システムの航行データ陸上再現システムによる陸上評価試験に関し、(株)エム・オー・マリンコンサルティング殿および独立行政法人海上技術安全研究所殿のご好意により、また全面的なご協力をいただき平成17年8月から同年12月までの間に計5回実施された。なお、最後の5回目は古野電気におけるプロジェクトメンバーによる最終的な機能チェックおよびデータ取得作業である。
各回の日時、場所ならびに主要テーマ等に関してはP38に示す。
(7)日本舶用工業会における平成17年度事業中間報告の実施
・平成17年12月8日(日本舶用工業会会議室)
日本舶用工業会の航海計器部会において中間報告用説明資料を基に主として平成17年度事業の中間報告を行なった。
(8)平成17年度事業成果報告書作成
(5)項および(6)項の各種評価試験の結果も含め平成17年度事業成果報告書を作成した。
海上評価試験実施内容
回数 |
日時 |
主要テーマ |
備考 |
第1回 |
平成17年5月20日〜21日 |
・基本的な動作確認
・大きな問題点の洗い出し
・航行環境データの収録 |
プロトタイプ搭載後初航海 |
第2回 |
平成17年6月19日〜21日 |
・第1回乗船確認時に判明した大きなソフトウェア不具合に関する修正動作確認
・景観画像に関する主としてカメラ部の調整 |
景観画像のカメラ画角以後45度とした |
第3回 |
平成17年7月8日〜9日 |
・これまでのソフトウェア修正内容の船上評価試験
・航行環境および動作状況の写真撮影記録 |
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第4回 |
平成17年7月23日〜24日 |
・基本的な動作確認
・航行環境データの収録 |
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第5回 |
平成17年9月26日〜27日 |
・これまでのソフトウェア修正内容の船上評価試験
・ズームカメラによる景観画像表示の確認 |
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第6回 |
平成17年11月17日〜18日 |
・最新ソフトウェア内容の船上評価試験
・航行環境データの収録 |
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第7回 |
平成17年11月19日〜20日 |
・操船経験者による実航海中における本システムに対する客観的評価
・評価開始前の事前アンケート調査
・上記に関する聞き取り調査
・上記に関する事後アンケート調査 |
操船経験者による海上評価第1回 |
第8回 |
平成17年12月9日〜10日 |
・操船経験者による実航海中における本システムに対する客観的評価
・評価開始前の事前アンケート調査
・上記に関する聞き取り調査
・上記に関する事後アンケート調査 |
操船経験者による海上評価第2回 |
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陸上評価試験実施内容
回数 |
日時 |
実施場所 |
主要テーマ |
備考 |
第1回 |
平成17年8月3日 |
(株)エム・オー・マリンコンサルティング殿シミュレータルーム(第2船橋) |
・動作全般に関わる基本的確認
・動作全般に関わる問題点・改善点の洗い出し
・陸上データ再生システムとしての仕様の妥当性の検証 |
3面の55V型大型プラズマ画面による景観画像とレーダ画像の表示 |
第2回 |
平成17年10月1日 |
(株)エム・オー・マリンコンサルティン殿シミュレータルーム(第2船橋) |
A OZT画面内の各種情報の表示色を変更可能なようにソフト変更。
B AISシンボルを補間処理してなるべくレーダターゲット位置と連動して表示。
C 浮標や灯標にENCから抽出したシンボルをOZT表示画面にマーキング。
D トレール表示付きのレーダPPI表示。(主として陸上評価システムのため) |
同上 |
第3回 |
平成17年11月29日 |
独立行政法人海上技術安全研究所殿 |
・操船経験者による陸上評価システムによる航行環境再現試験に対する客観的評価
・評価開始前の事前アンケート調査
・上記に関する聞き取り調査
・上記に関する事後アンケート調査 |
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第4回 |
平成17年12月2日 |
独立行政法人海上技術安全研究所殿 |
同上 |
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第5回 |
平成17年12月16日 |
古野電気(株)西ノ宮本社 |
・平成17年度12月までのソフトウェア改善作業に関し、陸上評価システムにより各機能などの最終チェックを実施 |
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平成17年度事業の大きな目標は5-1項でも述べたように、相手船動静監視システムプロトタイプの実用化に向けた総合的評価試験の実施とその結果に対するシステムの改善であった。すなわち、本事業プロジェクトチームならびに関係者による本システムの評価(各種動作確認)を通じての機能性能向上のための提案、およびそれらを受けての改善作業を繰り返す事が基本となった。
しかしながら本事業実施にあたっては、一方で本システムを使用する事によって得られる従来からの一般的操船方法に対する付加価値を客観的に評価することも重要なテーマであった。
以上を考慮して評価の基本を検討し、以下に示す指針を策定し実施した。
評価指針を概略以下の3つのカテゴリーに分類した。
A)プロトタイプのユーティリティ(機能、性能面等)の評価
−実海上運航にて、景観画像、レーダ、AIS情報を基にした情報の統合化機能やOZTの計算/表示機能、およびシステム各部における個々機能の妥当性などの評価を、それぞれ異なった航行環境下において十分に行なう。
−陸上においても船上評価を補う意味で上記評価が実施できる環境を構築し評価を行なう。
B)プロトタイプのユーザビリティ(使い勝手)の評価
−操作性、画面の見易さ、データの表示色や表示位置等の妥当性など主としてマンマシンインターフェースに関する評価を実施する。
C)衝突予防援助機能としての有効性に関する客観的評価
−上記要素の評価も一部含めて相手船動静監視システムは従来の操船(目視、レーダ、ARPA、AISをそれぞれ独立な情報源とし、操船者がそれらを組合わせて航行判断を行なう)に対してどの様な有効性を持つか、あるいは持つと予想されるかについて、操船経験者に客観的立場から評価をいただく。
上記にて、A)およびB)項は主として本事業に関わるプロジェクトチームが主体となり実施した。またC)項に関しては本事業の成果に対する客観的な評価を得るという指針の基、主としてプロジェクトチーム以外の操船経験者に評価を依頼した。
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