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今月の詩(7・8)
平成十八年度全国吟詠コンクール指定吟題から
【幼年・少年の部】(続絶句編)(7)
宝船  藤野君山
 
【大意】さまざまな宝物を積み、七福神を乗せた帆船といわれる“宝船”を詠じたおめでたい詩。
 寿海は波もなく穏やかで、朝日が真赤に照り輝いて鮮やかである。
 この穏やかな海の遥か向こうには「宝」の文字を書いた錦の帆を揚げた宝船が見える。その宝船に乗った七福神は皆、笑みを浮かべている。これこそが金銀珠玉の宝船であるよ。
 
【青年の部・一般一部・二部・三部】(続絶句編)(7)
磯浜望洋楼に登る  三島中洲
 
【大意】磯浜(茨城県大洗町)の望洋楼に登り、太平洋を望んだ詩である。
 夜、海辺の高楼に登ってみた。見わたす限りの、ひろびろとして果てしもない太平洋の、どこかアメリカ大陸であろうか。そうするうちに、雄大な気持ちが湧いて、ふと、海の向こうに渡ってみたいという心が起こってくる。秋の白い月の光が、果てしなく続く太平洋を照らしている。
 
【幼年・少年の部】(続絶句編)(8)
熊本城  原 雨城
 
【大意】雄大な阿蘇の五岳を東の空に望み、西は洋々として不知火の海が広がる。白川の水は悠然と熊本平野を南にさらさらと音をのこして流れる。
 熊本城(銀杏城)が厳としてその威容を長久に示すように、加藤清正の赫々たる武勲、偉大な治水工事による安民救済の功績は後世に粲として輝くことである。そして、菩提寺本妙寺の苔深い石鐙に降る蕭々たる秋の雨や、春の楠の若葉に嫋々と吹き来る東風も、清正のたけき魂をなぐさめることである。
 
【青年の部・一般一部・二部・三部】(続絶句編)(8)
獄中の作  橋本左内
 
【大意】二十六年の生涯は、まるで夢のように過ぎてしまった。過ぎ去った日々を振り返れば、感慨はいよいよ多い。かの文天祥の守り抜いた節義には常々感服していたが、いまこうして文天祥と同じように土牢の中に囚われていると、土牢の中で悠然と正気の歌を吟じていた人となりが、ますます慕わしく思われるのである。
(解説など詳細は財団発行「吟剣詩舞道漢詩集」をご覧ください)


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