日本財団 図書館


表紙説明◎名詩の周辺
寒夜の即事―寂室元光作
滋賀・東近江市永源寺
 作者寂室元光は鎌倉・室町時代の高僧で臨済宗大本山永源寺の開山。美作(みまさか)(岡山県)の人で、俗姓は藤原、名は元光、字が寂室です。十三歳で出家。元応二年三十一歳の時に中国の元に渡り、天目山で中峰和尚につき修行。七年間各地の名僧を歴訪し、帰国しました。康安元年(1361)に近江の守護職佐々木六角氏頼より雷渓の地の寄進を受け、そこに瑞石山永源寺を創設し、禅の道場としました。寂室はその後天竜寺、建長寺などの大刹から請を受けましたが、謝して行かず、貞治六年(1367)七十八歳で没しました。勅旨により円応禅師の諡(おくりな)を賜り、また、昭和三年には昭和天皇より正燈国師の称号も賜っています。
 生涯行脚説法の旅を続け、修行僧の教化に専念しました。当時、永源寺山中には五十六坊の末庵を有し、二千余りの修行僧がいたと記されています。「文教の地近江に移る」といわれるほど隆盛を極めましたが、明応(1492)、永禄(1563)と度重なる兵火に焼失し、それ以後往時の面影もなく衰微しました。その後、寛永年間(1624〜46)に後水尾天皇の勅により、彦根藩の援助を受けて復興、葭(よし)葺きの大本堂、元光の像を祀る開山堂、法堂、含空院などの今も残る大伽藍が完成しました。
 
 
 標題の詩は、いつどこで作られたかは不明ですが山中の趣致と山僧の境涯を述べたものとして味わい深いものがあります。
 取材に訪れたのは、紅葉の盛りも過ぎた十二月中旬でしたが、ちょうど雪も降り、冬枯れの林の枝が風にざわざわと鳴る、まさに詩中にあるような雰囲気の俗世を離れた山寺という感じがひしひしと伝わる世界がそこにありました。
 
開山堂。開祖寂室元光を祀る堂。毎年10月1日法要が営まれる。開祖の塑像は重要文化財。
 
開山当時の様子を今に伝える禅の専門道場の門
 
【永源寺】近江鉄道「八日市」駅より近江バスで約35分。名神高速「八日市インターチェンジ」より車で20分。


前ページ 目次へ 次ページ





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION