吟剣詩舞の若人に聞く[第73回]《特別編》
村上裕煕くん
吉武幸太くん
吉川菜美さん
吟詠:村上裕煕くん(十二歳)熊本県熊本市在住
師:伊東昂峰さん(秀峰堂吟剣詩舞会)
剣舞:吉武幸太くん(十二歳)福岡県富津市在住
師:岡本義乃さん(大日本正義流剣詩舞隆義館)
詩舞:吉川菜美さん(十二歳)熊本県熊本市在住
師:入江嶺峯さん(錦心流詩舞渓水会)
火の国から、羽ばたけ若い力
これからの吟剣詩舞界を支える伸び盛りの若い力、村上くん、吉武くん、吉川さんの三人に、全国名流吟剣詩舞道大会を明日に控えたリハーサルのあと、いろいろお話をお聞きしました。
(収録:平成十七年五月四日・熊本市民会館にて)
――皆さんは、いつごろから吟剣詩舞を習っているの?
村上「幼稚園のころから習い始めて、本格的にやり始めたのは小学校三・四年生の頃からです」
吉武「四歳から始めました」
吉川「私も四歳の頃から始めました」
――みんな誰かに勧められて始めたの?
村上「曾おじいさんが宗家で、おばあさんが次の会長をしており、お母さんも吟詠をしているから、自然に吟を始めるようになりました」
吉武「おばあさんが詩吟をしていまして、詩吟にあわせて舞うことのできる剣舞を習ったらと、四歳のときに勧められました」
吉川「おばあさんが詩舞を習っていたので、おばあさんについていくうちに、何となく、自然にやるようになっていました」(笑)
――小さい頃だから忘れていると思うけど、習い始めて吟剣詩舞の印象はどうでしたか?
村上「聞いたこともない節回しとかがあって、これは何だろうと思いました(笑)。最初は特にやるつもりもありませんでしたから、よくわかりませんでしたが、習っていくうちに段々と吟詠の意味がわかり始め、面白くなってきました」
――剣舞を習っているのは学校でも珍しいのでは?
吉武「そうですね、僕ぐらいです。最初は遊びのつもりでやっていましたが、そのうち好きになりました」
――どんな点が好きになったの?
吉武「僕の兄も剣舞をしているのですが、それを見ているとカッコいいので(笑)、僕もあんなふうな剣舞ができたらと、いつのまにか引き込まれて好きになったのだと思います」
――吉川さんにとって詩舞の魅力はなに?
吉川「扇を使うところなどは楽しいです」
――練習で厳しいと感じることはありますか?
村上「今はあまり言われませんが、習い始めの頃は、吟じているときの姿勢や態度を言われました」
吉武「指導はもちろん厳しいですが、僕も年上の人に対する挨拶や態度などは特に厳しく言われました」
吉川「今回、名流大会で舞いますが、私以外は詩舞が初めての子ばかりなので、先生はその子達を注意していますが、本当は私も注意したいのではと思います」(爆笑)
――普段のお稽古では注意されないの?
吉川「構えをカッコ良くしろとか、今習っているのが男性の踊りなので、外股にしろとか言われますが、なかなかうまくできません」(笑)
――吟詠を習っていて、漢詩の意味などは理解できる?
村上「先生が丁寧に教えてくれるので、全部は理解できませんが、ある程度ならわかります」
――吟詠で難しいと思っていることはある?
村上「はい、あります。節回しと音のとり方です」
――いま何本で吟じているの?
村上「去年までは八本でしたが、いま声変わりの途中なので、八本はつらいですね」
――練習は週何回ですか?
村上「祖母からは週一回で、母からは週五・六日、毎日ほとんど練習しています」(笑)
――吉武君は週にどれくらいの練習かな?
吉武「週に一回です。あとは日曜日に、たまに研修があります」
――練習するにあたって、課題などはありますか?
吉武「特にありませんが、舞うとき身体の重心を落として、大きく舞うようにしています。」
――吉川さんは週何回ですか?
吉川「週に一回、士曜日の日が多いです」
――一回の練習は何時間くらいです?
吉川「三時間ほどです」
名流大会を明日に控えてそれぞれポーズをとる左から村上裕煕くん、吉武幸太くん、吉川菜美さん |
――明日の名流大会の舞台に立つようですが、皆さん同じ番組ですか?
村上「『熊本城』を吟じます」
吉川「私も『熊本城』に詩舞で出演します」
吉武「僕は『中庸』を舞います」
――「熊本城」は吟じていかがですか?
村上「今までやってきたなかでは、吟じやすいほうです」
――吉川さんは舞いやすいですか?
吉川「いつもは一人で舞うことが多く、今回は五人なので息を合わせるのが少し難しいけれど、舞そのものは踊りやすいと思います」
――今回一緒に出演する皆さんとは、初めて会ったの?
村上「半分くらいの人が初めて会った人なので、最初は合わせにくいこともありましたが、今はだいぶ慣れました」
――「中庸」は舞うのが難しいですか?
吉武「吟じてくれる人がうまいので、舞いやすいです」
――舞うときのポイントなどはありますか?
吉武「やはり大きく舞ったり、掛け声などもしっかり出すようにしています」
――吉川さんが気をつけている点は何ですか?
吉川「舞っている時に、時々下を見てしまうので、上を見て踊るように心がけています」
――他の人が初めてだから、引っ張っていく立場だね?
吉川「そういうこともありませんけど、小さな子が多いので・・・」(笑)
――先ほども練習していたようだけど、どうですか?
吉川「あまり・・うまくいきません」(笑)
――今の段階で点数をつけるとしたら、何点ですか?
吉川「五・六十点くらいです」
村上「八十点くらいです」
――マイナス二十点の理由は?
村上「声が小さなところです」
吉武「六・七十点ですね。マイナスはやはり掛け声とか、重心を落とすところがまだまだなので」
――みんなは大会やコンクールには出たことがありますか?
村上・吉武・吉川「出たことがあります」
村上「県大会に一、二回です。成績は三位というのがありました」
吉武「九州大会で二位になりましたが、一位を取れなかったことが悔しいです」(笑)
吉川「一年生のときに県大会で一位になり、全国大会には出ましたが、入選できなくて泣きました」(笑)
――全国大会の印象はどうですか?
吉川「あまりよく覚えていません」(笑)
――コンクールにはまた出たいと思いますか?
村上「実力をつけて、自信ができ、自分の力を試したいと思ったら挑戦すると思います」
吉武「趣味でいいかな」(爆笑)
――最後に、今後の抱負なりを聞かせてください。
村上「いつかは全国大会に出て、一位を取って、もっともっとうまくなりたいです」
吉武「全国大会へは行きたいですし、何とか兄貴を抜かしたいです」(笑)
吉川「昨年は全国大会へいけなかったので、また行きたいと思っています」
――今日はリハーサルのあとインタビューに答えていただき、ありがとうございます。明日の名流大会の舞台を楽しみにしています。
昨年四月号から始まった新企画「吟剣詩舞こんなこと知ってる?」の十一回目です。読者の皆さまと双方向で意見が交換できるコーナとして設けております。
吟剣詩舞の歴史、人物、身近な出来事など、読者の皆さまが驚くようなこと、是非、知らせたいことがありましたら財団事務局月刊誌係まで、ご寄稿をお願いいたします(形式は問いません。写真等も歓迎です)。
今回は、「万歳三唱の方法」についてのご投稿(FAX)を沖縄県吟剣詩舞道総連盟の加藤正山理事長から頂戴しましたので、早速、ご紹介いたします。「万歳三唱」は財団始め、吟剣詩舞道界各会の大会や行事には付き物となっている観がしますが、そのやり方の詳細については知らない人も多く、加藤理事長は、その都度、正式な方法はこうだと指摘されている姿をよく目にしました。今回は、その根本とも言うべき、資料をご提供いただきました。
『万歳三唱令』
(施行 明治拾弐年四月一日 太政官布告第百六拾八号)
第壱条 万歳三唱は大日本帝国及び帝国臣民の天壌無窮の発展を祈念し発声するものとす。
第弐条 発声にあたってはその音頭をとるものは気力充実態度厳正を心掛けるべしまた唱和する者は全員その心を一にして声高らかに唱和するものとす。
第参条 唱和要領の細部については別に定む。(朕万歳三唱令を裁可し之を交付せしむ此の布告は明治拾弐年四月壱日より施行すべきことを命ず〔御名御璽〕)
万歳三唱の細部実施要領
一 万歳三唱の実施にあたっての基本姿勢は直立不動の姿勢なりこの際両手を真づ、下方に伸ばし体側にしっかりつけるものとす。
二 「万歳」の発声とともに右足を半歩踏み出し同時に両腕を垂直に高高と挙げるこの際両手指が真っ直に伸びかつ両手の掌を正しく内側に開げた格好が肝要なり。
三 「万歳」の発声終了と同時に素早く元の直立不動の姿勢に戻すべし。
〈訂正〉四月号本欄の読みなどに誤記がありましたのでお詫びし、訂正致します。
●十六ぺージ上段:袖珍(しゅうちん)
●十六ぺージ下段:吟じた→吟じる
●十七ぺージ上段:敢然(かんぜん)
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