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2. 海外文化の受容と暮らしを彩る輸入品
 対外港湾坊津は、アジア諸国の文化が交錯する場所でした。坊津町内の各地には、往時の海上交流を物語る様々な資料が残されています。
 坊津町泊の清水に所在する「唐人墓」は、中国の福建省等で見られる「亀殻墓」に類似した墳墓です。南九州では、このような中国式の唐人墓が築かれるケースは珍しく、坊津地域で中国式の墳墓を築くレベルの、唐人コミュニティが存在した可能性が示唆されます。
 
泊の唐人墓(正面)
 
泊の唐人墓(側面)
 
参考:中国福建省福州市内の琉球墓
 
 次ページ下の写真は、泊に伝世していた媽祖(娘媽)像です。媽祖は中国の女神で、中国や世界各地の華人社会で、現在でも盛んに信仰されています。日本では、長崎などでの媽祖信仰が有名ですが、南九州の各地にも古い媽祖像が点々と残されています。特に、野間半島を軸に左右に展開する薩摩半島西南端地域には、海上交通における山岳信仰と媽祖信仰が結び付いた野間岳信仰を核とする、一つの媽祖神像分布圏(媽祖信仰文化圏)の形成がみられます。
 
薩摩半島西南端地域における媽祖像の分布
 
 また、坊津地域には、港の人々の暮らしを彩った、海外からの輸入品が数多く残されています。下の写真は、東道盆と呼ばれる器です。東道盆は、もともと中国伝来の食器で、琉球漆器等で作られた様々なタイプの東道盆が、食文化等と同様に薩摩へもたらされました。この作品は、朱漆の地に沈金の技法で牡丹唐草文が描かれています。
 
朱漆牡丹唐草沈金東道盆
(輝津館寄託)


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