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最終報告会
〜日間賀島合宿の報告会とお話を聞く会〜
場所:愛知県中小企業センター(名古屋市)
 
プログラム:
9:45〜10:00 受け付け
 
10:00〜12:00
[お子さん]
 「小学生・中学生」、「高校生」、「きょうだい」グループに分かれてスタッフとともに合宿の振り返りを行った。あわせて午後からの報告会の準備を行った。
[保護者]
 お子さんの合宿についての振り返りを、グループに分かれて行った。
 
12:00〜13:00 昼休み
 
13:00〜15:00 報告会
 「小学生・中学生」、「高校生」、「きょうだい」グループそれぞれが、日間賀合宿の振り返りの発表をした。
 辻井先生からのお話を聞いた。
 
15:00〜16:30 お話を聞く会
 小原玲さんのお話を、撮影された写真を見せてもらいながら聞いた。
 
☆小原玲(おはられい)さんプロフィール☆
1961年東京生まれ。
 報道カメラマンをして世界の雑誌で仕事をしたのち、アザラシの赤ちゃんとの出会いを契機に動物カメラマンに転身。アザラシ、マナティ、プレーリードッグ、シロクマなどを撮影されています。
 
17:00 終了
 
日間賀島の思い出(きょうだい)
 
次回の日間賀島合宿の計画と目標(高校生)
 
 
おわりに
1. 事業全体の構成と意義
 はじめに、予算上の都合なども考慮し、申請段階のスケジュールから若干の変更を加えているが、十分な成果があげられたと考えている。事業全体として、日間賀島での海洋体験を中核にし、事前に日間賀島での一般住民への事前レクチャー、南知多ビーチランドでの事前体験と海洋生物についての学習(長谷川修平所長のレクチャー含む)と、海洋体験のまとめを経て、集まっての報告会での保護者や一般の方、関係者への発表と動物写真家の小原玲氏の講演という充実したものとなった。
 事業全体として、海洋教育を理科教育的なものだけではなく、自分の日常体験を見直す支援の観点での体験型のプログラムとするように構成してきた。もちろん、理科教育的には、長谷川修平南知多ビーチランド所長による、海洋生物や海洋環境の保全に関するわかりやすい講演など、必要なプログラムは行ったが、実際に生きている貝を採る体験などの方が子どもたちには魅力的なものであった。
 体験的にも、目常では家庭でゲームなどをやる生活でも、海洋では子どもたちは長い時間楽しく時間を過ごすことができた。自然は、子どもごとでの遊び方を提供し、そうした遊び方の中に、新しい子どもたちについての支援のアイディアを見つけることができた。
 最後の発表会においては、自身が発達障害児の父でもある小原玲氏の心のこもった、人と自然との関係の話と写真に多くの子どもたちが目を輝かせていた。子どもたちの発表も保護者には好評で、体験をまとめ、発表することによって、次の年度の体験をしていこうという意欲が見られた。
 
2. 事業内容についての評価1−発達支援において得られた成果から
 発達障害の子どもたちの発達支援は、日常でのさまざまな形でのスキルの修得などから構成される。しかし、日常での支援を充実していくためには、たくさんの楽しみが必要で、そうした意味で、余暇支援など、非日常の場での楽しい体験が必要である。そうした意味で、今回の海洋教育は余暇支援としての意味も併せ持つと考えられる。『余暇』という日本語は誤解されがちだが、楽しみと意欲を創り出すための位置づけと捉えなおす必要がある。
 ところが、今回の事業においては、海洋教育そのものが非常に意味あるものとなっていた。日常場面では取り組みにくい課題であっても、海洋体験、宿泊体験のなかでは取り組むことができ、非常に意味のある体験になった。非常に長い時間、いろいろな遊びに取り組むことができ、課題を通して、協力したり、役割分担したりすることもできた。日間賀島合宿での最後の夜のキャンプファイヤーでは同年代の子どもたちと協力して、積極的な取り組みをしていた。
 今回、日間賀島合宿中に台風に遭遇し、予定のプログラムができないこともあったが、そうしたプログラム変更も違和感なく取り組むことができ、日間賀島観光協会のはからいで映画鑑賞を行うことができた。
 海洋教育が結果的に合宿体験として行うことができたので、生活上のスキルの確認において、非常に意義があった。日常の支援のなかでの見落としが少なくなく、こうした機会で、先の長い人生を踏まえて、個別の支援プログラムを見直す機会ともなった。
 最終のまとめの会においても、楽しそうに思い出を話し、「またキャンプファイヤーのゲームしようね」と日ごろは寡黙な子どもがしてくるなど、今回のプログラムが非常に意味あるものであったと考えられる。多くの子どもが次の夏の海洋体験プログラムへの参加を希望している。
 
3. 事業内容についての評価2−リフレッシュ体験において得られた成果から
 発達障害の子どものきょうだいである定型発達(健常)児においても非常に意味ある成果が得られた。発達障害の子どもたちのなかで、特に小学生中学年から高学年の時期が配慮が必要な時期であることが、今までのアスペ・エルデの会の研究の中からは明らかになっている。今回、この年代のきょうだいたちの参加を得られ、気持ちの上で不安定な状況で、落ち着きがなかったり、攻撃的(時には発達障害のある兄弟姉妹をいじめるような対応もする)になったり、保護者としては気になる状態が続いていることがあった。特に、家庭において発達障害のある兄弟姉妹に対する対応と、(障害のない)自分に対する対応との違いからいらいらすることが多い。今回、発達障害のある兄弟姉妹がいても、まったく別グループ構成にしたので、きょうだいたちで集まり、楽しい体験を、リフレッシュ体験として積み上げることができた。健常児の場合、すぐに友だち関係になることができ、スタッフも含め、楽しい体験をすることができた。なかなか自分の同じ境遇の他者と出会える機会はなく、一緒にキャンプファイヤーの企画をしたり、話し合うことは気持ちを安定することにつながったと思われる。今後、自己理解プログラムを含める形で、きょうだいの支援プログラムを合宿式の海洋教育プログラムとして組み立てることは非常に魅力的な課題であると考えられる。
 
4. 未来の海洋体験参加への意欲を創り出すために
 今回の成果として、参加した子どもたちが、『また日間賀島に行きたい』という希望をもったことは、今回のプログラムの成果の一つの側面であるといってもよいのであろう。前書きにも書いたが、今回参加した子どもたちのなかには、海に入るのが初めてという子どもたちもいた。海洋環境を大切になど伝えるにも、海洋体験の素晴らしさを知らなくては無理である。そうした意味で、発達支援の位置づけや、きょうだいたちのリフレッシュ体験と合わせて、海洋環境の中で、自然や人と出会うことは意義の大きなことであることを実感した。今後、さらに海洋教育を活用したプログラム開発をしていきたいと考えている。
 
事業責任者:辻井正次(中京大学社会学部教授)
事業担当者:川上ちひろ


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