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はじめに
1. 今日の子どもたちと海洋体験
 今回、日本財団より貴重な助成金をいただく機会を得て、海洋体験による発達障害の子どもたちの支援プログラム作成を行うことができた。4年前より、南知多ビーチランドでのイルカ介在療法を開始しだし、そのプログラム構成の中で、「海に浮く体験」を実施したところ、そもそも、海に入る体験、海水浴の体験をしたこと自体がないという子どもばかりで驚いた記憶がある。
 愛知県の場合、南側には伊勢湾、三河湾と海岸線があり、海を「見る機会」はあっても、泳ぐのはプールで、海には入らないという子どもが多い。紫外線が身体に好ましい影響ばかりではないという知識の普及はあるものの、それにしても、これほど多くの子どもたちが海水浴をしたことがないことは驚きだった。従って、実際に海に入ると、海の水が塩辛いことを実体験し(知識としては知っていても、実際にはしらなかった)、泣きそうな顔になるわ、浮いていると波がくることに怯えていたり、驚いて溺れそうになったり、驚くことが多かった。今日の子どもたちにとって、海洋体験は明確に設定し、体験を行うべき教育プログラムになってしまったのだと考えざるを得ない。
 ちなみに、海に浮く体験を、大学生年代のスタッフに尋ねたところ、やはり初めてというスタッフがおり、また、海に浮けない大学生がいた。波が怖くて身体を硬直させてしまったり、自分が海の中で気持ちよく浮けるというイメージももてないようだった。海に対する親和性が十分にないと、海洋環境のことを大切に思うことは難しいだろうし、より多くの海洋体験の必要を痛感した。
 
2. 発達障害児における海洋体験の重要性について
 一般の子どもたちにとっても重要な海洋体験だが、体験の幅が設定されない限り広がりにくい発達障害の子どもたちにとっては、より重要性が高いように考え、発達障害児と、定型発達(健常)児として、そのきょうだいを対象としている。今回、日本財団の支援を得て、海洋体験の意義について、プログラム構成上の意味や、実際の体験のなかでのポイントなどを明確にすることができ、今後、汎用性の高い海洋体験を準備することが可能になった。
 今回の事業に参加した子どもたちの多くは4泊5日というやや長めの日程設定での合宿体験は初めてで、保護者も心配しながらの参加であった。海沿いの町にでも住んでいない限りにおいて、海洋体験を継続的に行うためには合宿などの設定が必要になり、総合的な発達支援において、重要な意義をもったと考えている。実質的な成果などは巻末にまとめて示す。
 
3. 初めての体験の中で見えてくるもの
 実際、海洋体験において印象に残っているのは、子どもたちの楽しそうな表情である。どの子どもも本当に楽しそうにいろいろなプログラムに参加することができた。ただ、各々のプログラムに速やかに参加していったかといえば、そうでもなく、1つ1つの細かな課題を乗り越えていくことが多かった。ある子どもは、砂の感触がダメで、海には入りたくても、砂に触れなくて困って叫んでいる姿なども見られた。
 1年を通した日本財団助成事業の成果について、ご覧いただき、ご意見を賜れれば幸いである。
 
「海洋教育による子どもの体験学習プログラム」事業内容
2005年5月25日 支援者事前学習会
場所:日間賀島(愛知県知多郡)
参加人数:20名
講師:2名
内容:島民海洋教育支援ボランティア育成講習(講演:発達障害と支援、海洋活動論)
成果:日間賀島観光協会の協力のもと、夏の合宿のときに関っていただく島民に皆さんに、発達障害児についての理解を深めてもらうことができた。
 
2005年7月25日 参加者事前学習会
場所:南知多ビーチランド(愛知県知多郡)
参加人数:15名(きょうだい5名含む)
スタッフ参加人数:10名
講師:3名
内容:伊勢湾の海洋生物についての学習(館内プログラムを活用した演習)
成果:海洋についての理解や、伊勢湾に住む海洋生物についての知識を得ることができた。
 
2005年8月24〜28日 日間賀島合宿
場所:日間賀島(愛知県知多郡)
参加人数:18名(きょうだい6名含む)
スタッフ参加人数:22名
講師:2名(夜間に海洋生物についての話、島での生活の話)
内容:4泊5日の宿泊、海水浴・いかだ作り等の海洋体験
成果:普段の生活から離れ、海での生活や活動を共にすることで社会的な活動を体験することができた。
 社会性に配慮したプログラムのもと、参加した仲間とともに協力して活動に取り組むことができた。
 5日間の合宿を通じて、達成感と充実感を味わうことができた。
 
2005年11月 参加者事後学習会
内容:プログラム参加者に合宿を振り返って感想文等を書いてもらった。
成果:それぞれに合宿での思い出などを振り返ることができた。
 
2006年3月21日 最終報告会
場所:愛知県中小企業センター(名古屋市)
参加人数:36名(外部参加者あり)
スタッフ参加人数:16名
講師:1名(プロカメラマンによる海洋生物などの話)
内容:参加者は4泊5日の宿泊合宿を振り返り、保護者らへ報告をした。
 プロカメラマンを招き、海洋生物や環境に関するお話を聞いた。
成果:合宿で体験したことを振り返り、再び仲間と協力して発表の準備を行うことが出来た。
 保護者たちの前で、合宿で体験したことを発表することが出来た。
 合宿での体験を共通理解することが出来た。
 講演会で海洋生物の写真を見せてもらい、海洋生物に親しむことが出来た。
 環境問題について考えるきっかけとなった。
 
参加者 事前学習会
場所:南知多ビーチランド(愛知県)
(集合場所はビーチランド入場門前)
 
集合時間:9時30分(活動は10時〜12時)
 
持ち物:筆記用具、暑さをさけるためのもの(帽子・飲み物)
 
行なったこと:
・海の生き物について調べる。
 ビーチランドで飼育されている日間賀にいる海の生き物をワークシートを使って調べた。また南知多ビーチランドの長谷川所長さんから、その海の生物たちのお話を聞きました。
 
・日間賀島合宿のお知らせ
 合宿に参加するときの注意事項や連絡を伝えました。
 


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