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3.2. 関連国内法
 2002年12月12日に1974年の海上における人命の安全のための国際条約締約政府会議の決議2により採択されたISPSコードの制定を受けて、国内法制化が必要となってきた。
 その結果、「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(平成16年4月14日法律代31号)」は、2004年の第159回通常国会において成立し、改正SOLAS条約の発効に合わせ、2004年7月1日に施行された。同法律は、第1条から第65条、及び附則より構成され、その概要は以下の通りである。
第1章. 総則(第1条−第3条)
1. 目的(第1条関係)
 この法律は、国際航海船舶及び国際港湾施設の所有者等が講ずべき保安の確保のために必要な措置を定めることにより国際航海船舶及び国際港湾施設に対して行われる恐れがある危害行為の防止を図るとともに、国際航海船舶の本邦の港への入港に係る規則に関する措置を定めることにより当該国際航海船舶に係る危害行為に起因して国際航海船舶又は国際港湾施設に対して生ずる恐れのある危険の防止を図り、合わせてこれらの事項に関する国際約束の適確な実施を確保し、もって人の生命及び身体並びに財産の保護に資することを目的とした。
2. 定義(第2条関係)
 「国際航海船舶」とは、国際航海に従事する次に掲げる船舶をいうものとした。
・日本船舶であって、旅客船又は総トン数が500トン以上の旅客船以外のもの(漁船等は除く)
・日本船舶以外の船舶であって、本邦の港にあり又は本邦の港に入港しようとする旅客船又は総トン数500トン以上の旅客船以外のもの(漁船等を除く)
次に、「国際港湾施設」に関しては、
・国際埠頭施設(国際航海船舶の係留の用に供する岸壁その他の係留施設をいう)及び国際水域施設(国際航海船舶の停泊の用に供する泊地その他の水域施設をいう)をいうものとした。
3. 国際海上運送保安指標(第3条関係)
 国土交通大臣は、国際航海船舶及び国際港湾施設について、国際海上運送保安指標を設定し、公示しなければならないものとした。
第2章. 国際航海船舶の保安の確保(第4条−第27条)
1. 国際航海日本船舶に関する措置(第5条関係〜第22条関係)
2. 国際航海外国船舶に関する措置(第24条関係〜第25条関係)
第3章. 国際港湾施設の保安の確保(第28条−第43条)
1. 国際埠頭施設に関する措置(第29条関係〜第34条関係)
2. 国際水域施設に関する措置(第37条関係〜第42条関係)
第4章. 国際航海船舶の入港に関する規制(第44条関係〜第46条関係)
第5章. 雑則(第47条関係から第65条関係)
第6章. 罰則(附則第1条関係)
 
 上記法律に加え、施行規則として「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律施行規則(平成16年4月23日国土交通省令第59号)」が準備されました。この施行規則の概要は下記の通りです。
第1章. 総則(第1条−第5条)
・定義:
(1)日本船舶であって総トン数500トン以上の旅客船以外の船舶であっても国際航海日本船舶に該当しない船舶を規定。
(2)外国船舶であって総トン数500トン以上の旅客船以外の船舶であっても国際航海外国船舶に該当しない船舶を規定。
(3)特定海域:東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海の具体的な海域を規定
(4)危険行為を規定
・国際海上保安指標:
(1)低い順に、保安レベル1、保安レベル2、保安レベル3とした
(2)国際海上保安指標の公示機関の公示方法(掲示板及びインターネット)
第2章. 国際航海船舶の保安の確保(第6条−第52条)
・国際航海日本船舶の保安の確保に関する措置関係
・国際航海外国船舶の保安緒確保に関する措置
第3章. 国際港湾施設の保安の確保(第 53条−第73条)
・国際埠頭施設に関する措置
・国際水域施設に関する措置
第4章. 国際航海船舶の入港にかかわる規則(第74条−第78条)
 本邦以外の地域の港から本邦の港に入港しようとする国際航海船舶の船長が行う船舶保安情報の通報は、本邦の港に入港しようとする24時間前までに海上保安官署の長に対して行うものとした。
第5章. 雑則(第79条−第84条)
附則
 
3.3. ISPSコード関連EU Directiveの概要
 2002年12月12日のIMO決議(Resolution)を受けEU(European Union)においても法制化の動きがあり、2004年3月31日付け「船舶と港湾施設の保安向上に関する欧州議会と評議会による規則(Regulation(EC) No.725/2004)」をメンバー国に配布した。同規則の概要は下記の通りです。
1項. 目的(Objectives)
・国際不法行為に直面している国際商取引及び国内海運に従事する船舶と関連する港湾施設の保安を高める目的のためにEUメンバー国で導入される手段を紹介するものである。
・当規則は、2002年12月12日にIMOの外交会議(Diplomatic Conference)で採択された海上における保安の向上に関する特別手段に関する統一された解釈、導入及び欧州共同体の監視に対する基準を提供するものである。その外交会議では、1974年の海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS Convention)の改正及び国際船舶及び港湾施設の保安に関する国際条約(ISPSコード)の制定をした。
2項. 定義(Definitions)
・SOLAS条約に関する海上における保安向上のための特別手段とは、SOLAS条約の付属書に対する新たな章(X1-2)に挿入された付属書1に修正を言う。
・ISPSコードとは国際船舶及び港湾施設保安コードのことを言う。
・ISPSコードの第A部とは、序文とISPSコードの第A部を構成する必須条件を言う。
・ISPS コードの第B部とは、ISPSコードの第B部を構成するガイドラインを言う。
・海上における保安とは、国際不法行為であるテロに対して船舶及び港湾施設を保護するための予防手段を言う。
・海上における保安に対する連絡先(Focal point)とは、メンバー国により指定された組織を言う。
・海上における保安に対する所管官庁(Competent authority)とは、メンバー国により指定された官庁を言う。
・国際海運(International shipping)とは、メンバー国の港湾施設からメンバー国外の港湾施設(又は逆を含む)に船舶により海上輸送サービスを言う。
・国内海運(Domestic shipping)とは、メンバー国の港湾施設から同じ港湾施設若しくは他の港湾施設への船舶による海上輸送サービスを言う。
・定期サービス(Scheduled service)とは、二つ以上の港湾施設を結ぶサービスを提供するための進路を構成する一連の航路を言う。
・港湾施設とは、船舶と港湾のインターフェースが発生する場所で、錨泊地、停泊バース等を含む。
・船舶/港湾インターフェースとは、船舶が直接に又は貨物や人の動きを含む行動により発生する相互作用を言う。
・国際不法活動(International unlawful act)とは、国際又は国内海上交通、乗客や貨物、それらに関連する港湾施設に対する意図的な活動を言う。
3項. 合同処置及び範囲(Joint measures and scope)
・国際海運(International shipping)に関しては、メンバー国は2004年7月1日までにISPSコードを適用しなければならない。
・内航海運(domestic shipping)に関し、2005年7月1日よりClass Aの旅客船にも適用する。
4項. 情報の通知(Communication of information)
・メンバー国は、IMO、EU委員会、他のメンバー国に対してSOLAS条約の海上における保安を高める特別な手段に関しSOLAS条約第11章−2の第13規則(Communication of information) に従って必要な情報を提出しなければならない。
5項. 代替保安措置又は同等保安措置(Alternative security agreement or equivalent security arrangement)
・当規則の目的のために、SOLAS条約の海上における保安を高めるための特別手段に関する規則(第11規則:Alternative security agreement)は、決められた欧州共同域内体定期航路サービスを運航する船舶や関連する港湾施設を使用することにも適用される。
・海上における保安を高める特別手段に関する規則11条4節で規定されている合意事項の定期的な見直しは、5年以内に実施されなければならない。
6項. メンバー国の港に入港する前の保安情報に関する規定(Provision of security information prior to entry into a port of a Member State)
・SOLAS条約やISPSコード又は当規則第3項の海上における保安を高める特別手段の要求に従う船舶がメンバー国の港に入港する意図を通知する場合、当該メンバー国の海上保安を管轄する所管官庁はSOLAS条約第11章−2の第9規則の2.1節(他の締約政府の港に入ろうとする船舶:Ships intending to enter a port of another Contracting Government)で規定された情報を要求する。所管官庁は必要な限り提供されて情報を分析し、必要ならばSOLAS規則の第2節で規定された手続を適用する。
・上記で規定される情報とは
a)少なくとも24時間前の通告
b)前の港からの航海時間が24時間未満の場合、少なくとも前港の出港時に通告
c)寄港地が決まらない若しくは航海が変更した場合、寄港地が決まり次第通告
7項. 入港前の保安情報に関する規定の免除(Exemption from the provisions of security information prior to entry into a port)
・メンバー国は、以下の条件に該当する場合、メンバー国の港湾施設間で行われる定期航路サービスを第6項で規定されている必要事項から免除することができる。
a)上記で述べられた定期航路サービスを行っている会社は従事する船舶の一覧表を保管しかつ修正し、関連港湾の海上における保安を管轄する当局に送る。
b)航海ごとに、SOLAS条約の海上における保安を高めるための特別手段である11章−2の第9規則の2.1で述べられている情報は要求を受け次第海上における保安に責任を有する当局に対して提示されなければならない。会社は、いつでも要求され次第また遅滞無く関係する情報を海上における保安に責任を有する当局に送ることができる社内システムの構築をしなければならない。
・国際定期航路サービスが二つ以上のメンバー国で行われている場合、当該メンバー国は他のメンバー国に対して第1節で規定された条件に従って、当該サービスに対して免除が認められることを要求することが出来る。
8項. メンバー国の港における保安チェック(Security checks in Member State ports)
・SOLAS条約の海上における保安を高める特別手段に関する11章−2の第9規則の1.1(港湾における船舶の管理)で規定された証明書の検証は、当規則の第2項7で規定された海上における保安に責任を有する当局もしくは95/21/EC指示の第2項5で規定された検査人の何れかによって実施されねばならない。
9項. 実施及び検査の適合(Implementation and conformity checking)
・メンバー国は、SOLAS条約やISPSコードの海上における保安を高める特別条項に従って必要な行政上や管理上職務を実行しなければならない。
・メンバー国は、2004年7月1日までに海上における保安に関する連絡先を指定しなければならない。
・メンバー国は、当規則を導入するために国内計画を導入しなければならない。
10項. 国際法律文書に対する修正の取り組み(Integration of amendments to international instruments)
・第2項に関する適用可能な国際法律文書は、一部例外を除き最新の修正を網羅して発効したものでなければならない。
・欧州共同体海事法に取り込まれている全ての国際法律文書に対する修正文は、欧州連合の官報にて発表されねばならない。
11項. 委員会手続(Committee procedure)
・欧州委員会は委員に支援されなければならない。
・委員会は手続に関する規則(Rules of Procedure)を採用しなければならない。
12項. 守秘義務(Confidentiality)
・この規則を適用するに際し、欧州委員会はメンバー国によるアクセスや連絡に対する守秘義務の必要性により、情報を保護するために適切な手段を講じなければならない。
・メンバー国は関連国内法に対応する手段を採用しなければならない。
13項. 情報の普及(Dissemination of information)
・EUメンバー国の検査報告及び回答は秘匿すべきものであり、発刊されるものではない。検査報告は関連官庁のみ入手できるし、当該官庁は機密事項を扱う情報の普及に対する適用国内法に従って、知るべき権利を根拠に関係者のみに知らすことが出来る。
14項. 許可(Sanctions)
・メンバー国は、当規則の諸規定に違反に対する効率的、バランスの取れたかつ諫止する制裁を与えることを保障するものである。
15項. 実施(Entry in force)
・当規定はEUの公式刊行物として発刊されてから20日後に発行する
・但し、国際航海船舶(2004年7月1日)、国内航海船舶(2005年7月1日)等はこの限りにあらず。
附属書1 1974年の改正された海上における人命の安全のための国際条約付属書の付属書に対する修正(第11-2章)
附属書2 船舶及び港湾施設の保安に対する国際条約
序文
第A部
附属書3 現在改正されている1974年の海上における人命の安全のための国際条約第XI-2章及びこのコードの第A部の規定に関する指針
第B部


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