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5. 24時間ルール(24-Hour Advance Vessel Manifest Rule)
5.1 背景
 米国関税法は、米国に到着し、貨物を陸揚げするすべての船舶に対して所定の手続を定めています。米国向けの船舶は、関税法第431条(19 USC 1431)に従って、入港に際して同法第434条(19 USC 1434)に定める要件を充たすマニフェストを税関に提出しなければなりません。米国税関は、同法第431条(d)項に基づいて、船舶マニフェスト(Vessel Manifest)の様式、記載項目、作成方法および書類提出または電子データ伝送を指定できます。
 
 改正前の関税規則第4.7条(19 CFR 4.7)によると、米国に到着し、入港手続きを行うすべての船舶の船長は、関税法第431条(19 USC 1431)および関税規則第4.7条(19 CFR 4.7)に定める要件を充たす船舶マニフェストを本船上に用意し、その原本と謄本を最初の税関職員に提出しなければなりません。船舶マニフェストの様式および記載項目などは、関税規則第4.7条(a)項および4.7a条に定められています。
 
 関税規則第4.7条(a)項によると、貨物申告書(Cargo Declaration)[Customs Form 1302または電子的等価物]は、船舶マニフェストを構成する書類の一つです。貨物申告書には、米国の港で陸揚げするか否かを問わず、本船に積載されているすべての外国貨物をリストアップしなければなりません(同第4.7条(c)(i)項)。
 
 さらに、関税法第448条(19 USC 1448)は、次のように定めています。同法第431条(19 USC 1431)に従って入港手続きを行う船舶は、税関の陸揚げ許可書が発行されるまで、積荷の陸揚げができません。また、同法第448条は、米国に到着した船舶の積荷について、陸揚げ許可書を発行するか否か、その発行の条件を含めて、税関に合理的な判断を下す権限を与えています。関税規則第4.30条(19 CFR 4.30)は、米国に到着した船舶から外国貨物を陸揚げする税関の許可書の発行要件および条件を定めています。
 さらに、関税法(19 USC 1436 (a) (1)および(a) (4))は、431条、433条、434条、その他関連規則に一致しないものを違法行為(unlawful)と定めています。また同法436条(a)(2)項は、偽造(forged)、変造(altered)または虚偽(false)の書類(紙の書類または電子データ)を提出(または電子伝送)することを違法行為と規定しており、同条(b)項にもとづいて、このような違反行為をした船長に対して、税関は、最初の違反の場合、5,000ドルのcivil penaltyを科し、2回目以降の違反の場合には、その都度10,000ドルのcivil penaltyおよび違反した積荷の輸送に用いた船舶を差し押さえる(seizure and forfeiture)ことができます。
 
5.2 マニフェスト事前提出の必要性
 2002年8月8日付け官報(67 FR 51519)で、米国関税庁(当時)は関税規則第4.7条を次のように改正する提案を公表しました。前述のように旧関税規則第4.7条は、米国に到着したすべての船舶は、関税法第431条(d)項(19 USC 1431(d))に従って船舶マニフェストを作成し、同法第434条に従って入港手続きを行うことを定めています。しかし、改正後は、米国に向けて貨物を輸送するすべての船舶の運送人は、船舶貨物マニフェスト(申告書)を、当該貨物が外国の港で本船に船積みされる24時間前に税関に提出しなければならなくなりました。
 2002年1月、米国関税庁は“Container Security Initiative (CSI)”計画を発表しました。CSIは、グローバル貿易チェーンにとって必要不可欠なもので、無防備な海上コンテナ輸送のセキュリティを強化するものです。世界の貿易貨物の約90%がコンテナで輸送されており、毎年2億個のコンテナが世界中の海港の間を運送され、グローバル貿易の重要なコンポーネントになっています。米国の輸入額のほぼ半分が海上輸送によるもので、その大部分が海上コンテナで到着します。米国の海港で陸揚げされるコンテナの数は年間約900万個です。
 しかし、重要なグローバル貿易システムのセキュリティは皆無に等しいので、テロリストがコンテナを利用して引き起こす可能性のある危険の恐ろしさは計り知れません。多くの専門家は、もしテロリストが、例えば核装置のような大量破壊兵器を海上コンテナに隠して輸送し、米国の海港に到着したときに起爆させたら、グローバル貿易や世界経済に与える影響は破壊的なものです。どのような大量破壊兵器が、どこに向けて輸送されているのか、港に到着し、テロリストが犯行予告(または実行)するまで、誰にも分からないので、世界中の国々にとって非常に恐ろしいことです。
 テロリストの脅威への対策として、米国関税庁は、他の政府機関と協力して、米国向けに船積みされるコンテナ貨物が外国の港で本船に積込まれる前に「ハイリスク・コンテナ貨物」を識別し、事前に検査するCSI計画を実施したのです。CSIは2.2節で説明するように、ハイテク技術を使用してコンテナ貨物の検査を行いますが、これに関連して貨物情報の収集・分析が必要になります。そのために、米国向けに輸出されるコンテナ貨物に関するマニフェストを船積み前に電子データで米国税関に提出することになり、またデータの分析に少なくとも24時間が必要であると考えられたのです。
 
5.3 2002年通商法事前申告ファイナル・ルール
 2002年通商法事前申告ファイナル・ルール案が2003年7月23日に発表されました。24 これに対して、関係業界などから126通のコメントがCBPに寄せられました。これらの意見とCBPの回答、およびファイナル・ルールが2003年12月5日、Federal Registerに発表されました。25 Trade Act Regulations(Final Rule)は、発表から90日後の2004年4月1日に発効になりました。Trade Act Regulations, Sec.103.31a は、Advance electronic information for air truck, and rail cargoについて規定しています。 次表は、米国への輸出及び米国からの輸出について、電子メッセージの送信媒体、申告者、輸送形態別にまとめたものです。なお、事前電子貨物情報に関するFinal Ruleについて、CBPは質疑応答集(Frequently Asked Questions: FAQs)を発行しています。これは、全輸送形態に共通のもの(All Modes)と形態別(船舶、航空機、鉄道、トラック)のものがあります。本稿では、米国向けの全輸送形態用のFAQ(2005年10月7日改訂)および船舶用のFAQ(2005 年8月12日改訂)により、以下の主要事項を纏めました。随時、FAQの内容が改訂されますので、up-to-dateの資料を参考にして下さい。
 
区分 米国への輸出 米国からの輸出
送信媒体 主としてAMS 主としてAES
申告者 船会社等の輸送業者 輸出者
輸送形態 船舶 外国の港で船積の24時間前(コンテナ貨物とBreak-bulk貨物) 米国の船積港で本船出港の24時間前
鉄道 米国内最初の鉄道駅到着の2時間前 列車が国境到着の2時間前
航空 赤道以北の米州から離陸時点
上記以外は、米国到着の4時間前
米国最終空港の予定出発時間の2時間前
自動車 FAST参加者:米国到着の30分前
FAST不参加者:米国到着の1時間前
国境地点到着1時間前
(2005年10月7日改定のFAQ)
 
24 Federal Register, Vol. 68, July 23, 2003 , at 43574.
25 Federal Register, Department of Homeland Security, Bureau of Customs and Border Protection: 19 CFR Parts 4, 103, et. al. Required Advance Electronic Presentation of Cargo Information; Final Rule, Vol. 68, No. 234, December 5, 203, pp.68140-68177.
 
5.3.1 米国への輸出
・船舶:Final Rule, 19 CFR Part 4, Sec. 4.7 (b) (2)に規定されています。船舶の場合のSea AMSは2004年3月4日以降導入されています。船舶の24時間ルールは、コンテナ貨物およびBreak-bulk貨物(CBPから24時間ルール適用除外の承認を受けてないもの)に適用されます。Bulk 貨物およびBreak-bulk貨物(CBPによる適用除外の承認)は、米国到着24時間前に申告します。
・鉄道:Final Rule, 19 CFR Part 123, Sec. 123.91 (a)に規定されています。
 Rail AMSは2004年7月12日以降導入されています。
・航空:Final Rule, 19 CFR Part 122, Sec. 122.48 (b)に規定されています。
 Air AMSは2004年8月13日以降導入されています。
・トラック:Final Rule, 19 CFR Part 123, Sec. 123.92 (a)に規定されています。
 Truck AMSは2004年11月15日以降導入されています。
 
5.3.2 米国からの輸出
・上記の輸出申告書提出時間は、Export License不要貨物の場合です。輸送形態別の法的根拠は次のとおりです。
・船舶:Final Rule, Sec. 192.14 (b) (i)
・鉄道:Final Rule, Sec. 192.14 (b) (iv)
・航空:Final Rule, Sec. 192.14 (b) (ii)
・トラック:Final Rule, Sec. 192.14 (b) (iii)
 
5.3.3 AMS、AESおよびFASTの定義
・AMSは、Automated Manifest Systemの略称で、米国に貨物が到着する前に米国税関(CBP)へ貨物情報を提供する送信媒体です。本来、このシステムは税関手続簡素化のため、米国に貨物が到着する前の検査に使用されました。
・AESは、Automated Export Systemの略称で、米国からの輸出申告書(Shipper's Export Declaration: SED)および船舶マニフェスト(Vessel Manifest)の送信媒体です。
・FASTは、Free And Secure Tradeの略称です。BRASS(Border Release Advance Screening and Selectivity)システムに参加するトラック輸送業者は、トラックの運転手にFASTカード(身分証明書)を持たせなければなりません。
 
5.4 責任のある当事者
 提出したマニフェストの内容に誤謬または記入漏れがあった場合、あるいは所定の時間までに提出しなかった場合、何れの当事者に責任があるのか、またどのような処罰が課せられるのか 、という質問が多くよせられたようです。あるいは、提出したマニフェストに記載された貨物の一部が積み残しとなり、仕向港に到着しなかった場合、または、航路変更によりマニフェスト記載の仕向港と異なる港に本船が到着した場合、誰が、どのような責任を問われるのかという疑問が生じます。
 
 税関当局の意見では、マニフェストの情報を提供した当事者にpenalty actionを提起するということです。例えば、NVOCCがVessel AMSに参加し、米国税関に直接マニフェスト情報を伝送した場合、このNOVCCが責任を負う当事者であり、所定の時間内にマニフェスト情報の提出を行わなかったこと、あるいは誤謬や記入漏れのある情報提供にたいして責任を問われます。NVOCCが貨物のマニフェストを作成し、当該貨物が不積みになった場合も同様です。NVOCCが本船に積込まれた貨物のリストを正確にするため、船舶運送人とNVOCCとの間でマニフェスト情報を訂正する適時の通信が必要です。同様に、本船の航路変更または仕向港の変更の場合でも、船舶運送人とNVOCCとの間の有効は通信が大切になります。
 
 荷送人の提供したデータ(例えば、物品の名称(description)、HTS番号、数量などに関するデータ)を信頼してマニフェスト情報をCBPに申告した場合、もしこのデータに誤りがあるとき、運送人(Carrier)または認定されたデータ送信者(NVOCC、Container Freight Station、Deconsolidator、Express Consignment Carrier Facility)は、2002年通商法に基づく違反責任が問われます。
 
 NVOCCがVessel AMSプログラムの参加者である場合、当該NVOCCは、税関手続き上、運送人として扱われます。他のVessel AMS 運送人から船腹の一部を賃貸契約で使用するSlot Chartererは、当該船舶を運航する運送人が税関にマニフェストを提出する場合と同じ方法でマニフェストを提出します。Slot Chartererとは、他の運送人が所有または運航する船舶の船腹の一部に余裕が生じた場合、このスペースを賃貸契約にもとづいて貨物を運送する運送人をいいます。 26
 
 船舶運送人は、関税規則(19 CFR 4.7a (c) (2) (iii))に定められているNVOCCの標準運送人アルファベット・コード(Standard Carrier Alpha Code: SCAC)を税関に提出する税関様式(CBP Form 3171)に記載する責任を負います。したがって、船舶に積載された貨物にかかわるすべてのNVOCCおよびSlot ChartererのSCACコードを記載しなかった場合、船舶運送人は、関税法(19 USC 1436)にもとづいてpenaltyが課せられます。
 輸送形態を問わず、すべての運送人はAMSに参加しなければなりません。運送人およびAMSに参加した認定されたデータ送信者は、 Activity Code 3 CBP International Carrier Bondを提供することになります。Bondの最低金額は5万ドルです。
 
26 Federal Register, Vol. 67, No. 211, October 31, 2002, at 66323.
 
5.5 提供したデータのAMS受信確認
1)海上貨物:運送人または認定されたデータ送信者がマニフェスト・データを送信した後、CBPはマニフェスト・データの受信確認、B/Lの受領または拒絶を示すacceptance messageを返信することになっていますが、これはあくまでも原則のようです。他の輸送形態の場合も同様のようです。
2)航空貨物:運送人または認定されたデータ送信者がマニフェスト・データを送信した後、CBPは、要請がある場合、freight status notificationを返信することになっています。
3)鉄道貨物:運送人または認定されたデータ送信者がマニフェスト・データを送信した後、CBPはbill on file messageを返信することになっています。
 
5.6 船舶マニフェストに記載するデータ・エレメント
 基本的に次の14項目の記載が要求されています。
○ 船舶運送人(vessel carrier)に関する項目:
・船舶が米国に向けて出港した最終の外国港名(Last Foreign Port of Departure for the US)
・運送人の「標準運送人アルファベット・コード」(Standard Carrier Alpha Code)
・運送人の航海コード番号(Carrier Assigned Voyage Code)
・本船が米国関税領域内の最初の港に到着する予定日時(Date of Arrival at the first US port)
・米国向けの積荷を船積した最初の外国港名(First Foreign Port of Loading Cargo bound for the US)
・本船の名称(Vessel Name)、書類作成国(Country of Documentation)およびLloydsまたはIMOの公式船舶番号(Official Vessel Number)
・通過貨物(Freight Remain on Board: FROB)の仕向港
○ 荷送人(shipper/vendor)に関する項目:
・貨物の数量(number and quantity)
・貨物の名称(precise description)(および補足的にHTS番号)
・荷送人の完全な名称および住所(Shipper's Complete Name and Address)またはID番号(B/Lに記載されているもの)。ID番号はVessel AMS参加者に米国CBPから与えられます。
・荷受人の完全な名称および住所(Consignee's Complete Name and Address)またはID番号(B/Lに記載されているもの)
・危険物コード(Hazardous Material Code)
・コンテナ番号(Container Number)
・すべてのシールとその番号(All Seals and their Numbers)(例:コンテナにシールが2つ以上使用されている場合、すべてのシール番号を記載する。
 これらのデータ・エレメントのうち主要なものについて、以下に説明します。
 
5.7 データ・エレメント―Cargo Description
 CBPは、貨物の詳細な説明(precise description)と重量、またシールを施したコンテナについては荷送人が申告した貨物の明細と重量を求めています。CBPに貨物申告情報を提供した当事者は、情報が正確であることを保証する責任を有します。CBPは運送人の法令遵守データを保持し、違反が重なるときは19 CFR 4.3aに定める罰金が科せられます。
 
 “Precise description”とは、CBPがマニフェスト記載貨物の形、物理的性質、包装の状態などを確認できるような程度に詳細な説明です。例えば、“Electronics”は詳細な説明でなく、“CD Players,”“Computer Monitors”が望ましいということです。
 
 いかなる場合でも、商品名欄(Cargo Description)に「記入のないもの」、あるいは次のような文言は受け入れられません。“Freight of all kinds” (FAK)、“Said to Contain” (STC)、“General Merchandise”、“26 Pallets”、“Various Retail Merchandise”、“Consolidated Cargo”、その他類似のもの。
 
 下記の表に、貨物の説明として「受け入れ不能」(Not Acceptable)と「受け入れ可能」(Acceptable)な例を参考までに掲げますが、もちろんこれがすべてでありません。カッコ内の文言は、例示です。27
 
27 Frequently Asked Questions, Inbound Only (All Modes)-Trade Act of 2002 Final Rule, pp.16-18.
 
Not Acceptable Acceptable
Apparel
Wearing Apparel
Ladies' Apparel
Clothing
Shoes
Footwear
Men's Apparel Jewelry (may include watches)
Appliances Kitchen Appliances
Industrial Appliances
Heat Pump
Autoparts
Parts
New Autoparts
Used Autoparts
Caps Baseball Caps
Blasting Caps
Bottle Caps
Hub Caps
Chemicals, hazardous
Chemicals, non-hazardous
Actual Chemical Name (not brand name)
Or UN HAZMAT Code Identifier #
Electronic Goods
Electronics
Computers
Consumer Electronics, Telephones
Electronic Toys (can include Gameboys, Game Cubes, Dancing Elmo Doll, etc.
Personal/Household Electronics (i.e. PDA's, VCR's, TV's)
Equipment Industrial Equipment, Oil Well Equipment
Automotive Equipment, Poultry Equipment, etc.
Flooring Wood Flooring, Plastic Flooring, Carpet,
Ceramic Tile, Marble Flooring
Foodstuffs Oranges, Fish
Packaged Rice, Packaged Grain, Bulk Grain
Iron Iron Pipes, Steel Pipes
Steel Iron Building Material, Steel Building Material
Leather Articles Saddles, Leather Handbags, Leather Jackets, Shoes
Machinery Metal Working Machinery
Cigarette Making Machinery
Pipes Plastic Pipes, PVC Pipes,
Steel Pipes, Copper Pipes
Plastic Goods Plastic Kitchenware, Plastic Houseware,
Industrial Plastics
Toys, New /Used Auto Parts
Polyurethane Polyurethane Threads
Polyurethane Medical Gloves
Personal Effects
Household Goods
Rubber Articles Rubber Hoses, Tires, Toys,
Rubber Conveyor Belts
Rods Welding Rods, Rebar, Aluminum Rods
Reactor Rods
Scrap Plastic Scrap, Aluminum Scrap, Iron Scrap
STC (Said to Contain)
General Cargo
FAK (Freight of All Kinds)
“No Description#
Tiles Ceramic Tiles, Marble Tiles
Tools Hand Tools, Power Tools
Industrial Tools
Wires Electric Wires, Auto Harness
Coiled Wire (industrial)
 
5.8 データ・エレメント―Shipper's Name and Address
 フレイトフォワーダーが多数の荷送人との契約の下に、“Agents for”として運送人と運送契約を締結している場合、“Shipper's Name and Address”欄に、実際の荷送人の名前と住所を記載しなければなりません。また、“Second Notify Party”欄に、この積荷に関する電子情報を受信するため、CBPと自動的に情報交換可能な当事者(フレイトフォワーダー)を記載できます。記載された荷送人が、運送人、銀行または輸入者と確認できるような情報は、CBPにとって役に立たないので、このような情報は監視の対象となり、貨物は慎重に検査されることになります。
 
5.9 データ・エレメント―Consignee and To Order Bills
 取引または金融目的で、荷送人欄に“To Order”と記載されることがあります。CBPは、荷受人欄には荷受人の正確な名前と住所またはB/L上のID番号を求めています。混載貨物の場合、Master B/L上、荷受人欄にNVOCC、フレイトフォワーダー、コンテナターミナル業者、その他の業者が記載されることがあります。個々のHouse B/Lでは、荷受人欄に米国で貨物を受取る当事者が記載されます。“To Order of (a named party)”の場合、運送人はこの記名当事者を荷受人として報告しなければなりません。B/Lに着荷通知先が記載されているときは、運送人は事前の電子データ送信にこの当事者の名前・住所を記載しなければなりません。
 
5.10 データ・エレメント―Seals
 法律上、貨物をコンテナに詰める荷送人がコンテナにシールを施す義務はありません。しかし、荷送人はシールを施す立場にありえます。また、船舶運送人は、コンテナ詰めが行われたときにシールを施した者を確認することはできませんが、コンテナを受取ったとき、コンテナのシール番号をチェックできます。コンテナ・シールの施封は安全なサプライチェーンの重要な要素です。シールがいじられた形跡があるとか、シ−ル番号が船荷証券上のそれと一致しない場合には、運送人はその旨をCBPに通報しなければなりません。
 
5.11 船舶の場合:貨物申告データ送信の時間
 船積前24時間という期間は、CBPが情報を受信したとき始まります。Bulk CargoおよびCBPが承認したBreak-bulk Cargoの運送人は、船舶が米国に到着する前に、貨物申告データをSea AMSによってCBPへ送信します。
 24時間ルール適用対象貨物には、FROB(Foreign Remain on Board)貨物を含みます。FROB貨物とは、外国の港で船積され、米国の寄港地では陸揚げされずに第三国へ向けて通過する貨物をいいます。これらのコンテナ貨物についてもマニフェストを提出しなければなりません。この場合、荷送人、荷受人、着荷通知先は米国内に住所を持たないので、CBPはこれらのデータ・エレメントの米国内住所の記載を求めません。
 貨物の形態と航海時間により、CBPへの送信時間は、次のように異なります。
 
貨物の形態 航海時間の制限 CBPの受信時間
コンテナ貨物 なし 船積24時間前
Break-bulk (non-exempt) なし 船積24時間前
Bulk貨物 24時間以上の航海 米国到着24時間前
Bulk貨物 24時間以下の航海 出港時
Break-bulk貨物(exempt) 24時間以上の航海 米国到着24時間前
Break-bulk貨物(exempt) 24時間以下の航海 出港時
(2005年8月12日現在)
 
5.12 本船の出港日時の報告
 CBPは、AMS参加者に対して、Sea AMSで本船出港報告に関する指図を行います。Sea AMS参加者は、本船の出港時または出港後の所定時間内に本船出港報告を提出しなければなりません。手順は以下のとおりです。28
(1)運送人/認定されたデータ送信者は、貨物申告データをSea AMSでCBPへ送信します。
(2)CBPは、運送人/認定されたデータ送信者へB/L番号と承認または拒絶のメッセージを送信します。
(3)拒絶メッセージの場合、運送人/認定されたデータ送信者は、このB/L情報の修正を行い、本船に積込むすべてのB/LについてCBPから承認メッセージを受信します。
(4)運送人/認定されたデータ送信人は、次表に示すとおり、本船出港の日時をCBPへ送信します。
 
貨物の形態 航海時間による制限 CBPの受信時間
コンテナ貨物 24時間以上の航海 出港後24時間
コンテナ貨物 24時間以下の航海 ★ 出港時
Break-bulk(non-exempt) 24時間以上の航海 出港後24時間
Break-bulk (non-exempt) 24時間以下の航海 ★ 出港時
Bulk Cargo 24時間以上の航海 ★ 米国到着前24時間
Bulk Cargo 24時間以下の航海 ★ 出港時
Break-bulk (exempt) 24時間以上の航海 ★ 米国到着前24時間
Break-bulk (exempt) 24時間以下の航海 ★ 出港時
★ 必ずCBPの承認メッセージを受信すること。 (2005年8月12日現在)
 
2819 CFR 4.7a (c)(4)(xv)および(xvi). FR, Vol. 68, N0.234, December 5, 2003.,at 68146. 本船に積込むすべてのB/LについてCBPから承認メッセージを受信してから60日以内に出港しなければなりません。
 
5.13 本船の入港手続
 米国の港に入港し、貨物の陸揚許可を得るため、船舶運送人は、関税規則(19CFR Part4)に従って、入港届(CBP Form1300)、貨物申告書(CBP Form1302)、船用品申告書(CBP Form1303)、乗組員所持品申告書(CBP Form1304)、その他の書類と陸揚許可申請書(CBP Form3171)を税関に提出しなければなりません。また、米国に到着する前に、事前入港届をする船舶運送人は、貨物申告書(CBP Form1302)と陸揚許可申請書(CBP Form3171)とを電子方式により本船到着48時間前に、各港の税関へ提出しなければなりません。これを到着前48時間ルールと呼ぶ場合があります。船積み前24時間ルールの場合、船積港での米国向けのすべての貨物を記載した貨物申告書(CBP Form1302)を提出しますが、到着前48時間ルールの場合は、陸揚港別に貨物申告書を提出します。
 
 これとは別に、沿岸警備隊(USCG)の96時間ルールというのがあります。これは、沿岸警備隊規則(33CFR Part160)に従って、船舶運送人が、本船到着96時間前に入港通知(Notice of Arrival: NOA)および危険状況報告(Notice of Hazardous Condition: NHC)をUSCGに提出するというものです。ただし、Bulk cargoの輸送船の場合、および航海日数が96時間未満の場合には、本船到着24時間前にNOAおよびNHCを提出すればよいことになっています。NOAには、入港届、船舶情報、航路通報、船用品目録、乗組員リスト、乗客リスト(乗客がいる場合)、国際安全管理コードおよびISPSコードに関する報告、貨物申告書(CBP Form1302)などが含まれています。2003年7月1日以降、貨物申告書(CBP Form1302)は電子方式により提出することになりましたので、船舶運送人がこれをVessel AMSで各港の税関に提出すれば、USCGに提出する必要はありません。それ以外のNOAは、USCGのthe National Vessel Movement Centerに電話、FaxまたはE-Mailで提出します。
 
 到着する船舶運送人は、本船を共同運航する船舶運送人および賃貸契約によるSlot Chartererを含むすべての運送人のSCACコードを含めて報告しなければなりません。Vessel AMS参加運送人を除いて、船舶運送人、NVOCC、Slot Chartererは、米国到着24時間前に本船に積載されている空コンテナのマニフェストを税関に提出しなければなりません。通商法規則(Trade Act Regulations)に定める電子システムによる貨物申告データの提供義務には適用除外はないので、従来の紙の貨物申告書(Inward Cargo Declarations (CBP Form1302))を提出した場合、同施行規則の違反により、貨物の陸揚げ許可が拒否されます。なお、CBP Form 3171の提出期限は次表のとおりです。
 
貨物の形態 航海時間による制限 CBP Form3171提出時間
コンテナ貨物 なし 米国到着48時間前
Break Bulk(non-exempt) なし 米国到着48時間前
Bulk Cargo 24時間以上の航海の場合 米国到着24時間前
Bulk Cargo 24時間以下の航海の場合 出港時
Break Bulk Cargo (exempt) 24時間以上の航海の場合 米国到着24時間前
Break Bulk Cargo (exempt) 24時間以下の航海の場合 出港時
(2005年8月12日現在)
 
5.14 米国の港での陸揚げ許可
 米国の港に到着した船舶に積載されている一部の積荷が船積み24時間前ルールに違反する場合、当該貨物だけでなく、この船舶に積載されているすべての貨物の陸揚げが不許可になるのかという質問が多く寄せられたようです。また、米国の港湾関係者(Port Authorities)から、船混みの一因になる懸念が示されました。税関当局(CBP)の回答によると、米国での貨物陸揚げ許可書の発行について、関税法(19 USC 1448)は明示的に、いかなる船舶も入港手続が完了し、税関の陸揚げ許可書が発行されるまで、積荷を陸揚げできないと定めています。法規に従わずに積込まれて米国に到着した貨物であることを米国税関が確認した範囲内で、税関は当該貨物を他の積荷と区別して処理する権限を有します。税関は、他に異なる状況がある場合を除いて、法規に従って積込まれた貨物について、米国の港での陸揚げを認めます。29
 
29 Federal Register, Vol.67, NO.211, October 31, 2002, at 66323.


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