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(2)船首喫水の影響
 前項(1)で、波浪中におけるノンバラスト船型空荷状態の船首船底衝撃について検討し、在来船型の空荷状態に比べて同等程度の性能を示すことが判明した。しかしながら、頻度は少ないとしても、通常以上の荒天状態に遭遇する可能性がある。避航を行ってもやむを得ず遭遇する荒天の場合には、減速運転以外に、バラスト水を搭載して航海することにより、船首船底衝撃圧力を軽減することが可能である。ここでは、ノンバラスト船型に対して、バラスト水(在来船が通常積載するバラスト水の1/4程度)を積載した状態を荒天時バラスト状態として評価した。
 図21に、船首喫水を変えた場合の船首船底衝撃圧力の計測結果を示す。ノンバラスト船型の空荷状態と荒天時バラスト状態とで同一衝撃圧力となる波高を比べると、平均的には1.5m程度の波高増に対応できることが判った。また、この図にはノンバラスト船型空荷状態の船首喫水と同じ船首喫水の在来船型の載貨状態(ライトバラスト状態)についても印で示しているが、この両者の間には、大きな違いがありノンバラスト船型のV型船首形状の効果が顕著に現れている。
 次に、図22にはスラミング衝撃荷重推定システムによる計算結果として、船首船底の衝撃圧力が同一となる船首喫水と波高の組み合わせを示す。図中、は在来船型とノンバラスト船型の空荷状態を示し、はノンバラスト船型の荒天時バラスト状態の船首喫水に対応する点を示す。ノンバラスト船型の荒天時バラスト状態の船首船底衝撃が空荷状態のそれと同一となる波高差は、1.5mとなっており、前述の試験結果に合致している。
 
 なお、図22から、このような衝撃圧力以下に対応する在来船型の船首喫水は約9mとなり、これに必要なバラスト水は約61,000トンと算定されるが、これは通常のスエズマックスタンカーが有する分離バラストタンクを最大限に使用したヘビーバラスト状態以上のバラスト量となっている。
 
図22 船首船底衝撃圧力を一定値とした場合の波高と船首喫水
スラミング衝撃荷重推定システムによる計算結果
スエズマックスタンカー  規則波 λ/LPP=1.0
 
8 波浪中抵抗増加
 実海面における性能評価として、不規則波中の抵抗増加の模型試験結果を図23に示す。横軸は有義波高、縦軸は波浪中の抵抗増加を有効馬力に換算したものである。
 満載状態ではノンバラスト船型の抵抗増加は在来船型に比べて14%大きいが、ノンバラスト船型の空荷状態の抵抗増加は在来船型に比べて17%小さくなっている。平均的に見ると、ノンバラスト船型の方が良い傾向を示しているが、その違いは小さい。
 
図23 波浪中抵抗増加
満載状態:14knots
空荷状態:15knots
4m模型船
抵抗値∝(縮率×速度)2で実船換算
 
9 操縦性能
 ノンバラスト船型は幅広船型となることから、操縦性能が悪化する懸念がある。スエズマックスタンカーのノンバラスト船型についてPMM試験を実施し、その結果を用いてシミュレーション計算で操縦性能を評価した。
 
表2 ノンバラスト船の操縦性能
PMM試験+シミュレーション計算による
スエズマックスタンカー 満載状態
旋回牲能 δ=+35° -35° IMO基準
アドバンス/LPP
3.69 3.65 4.5以下
タクティカルダイヤメーター/LPP 4.34 4.30 5.0以下
初期旋回性能 δ = +10° -10° IMO基準
トラックリーチ/LPP
1.86 1.81 2.5以下
保針性能 δ = +10°
-10°
-10°+10° IMO基準
第一オーバーシュート角
4.3° 5.6° 20°以下
第二オーバーシュート角
10.0° 8.0° 40°以下
δ = +20°-20° -20°+20° IMO基準
第一オーバーシュート角
8.4° 9.2° 25°以下
 
 表2にその結果を示すが、すべての性能がIMO基準を満たしていると共に、保針性能が非常に良いことが分かる。当初、ノンバラスト船型は、幅広化のため保針性能が悪くなるのではと心配されたが、長さ幅比Lpp/Bが小さくなった分だけ肥痩係数Cbも小さくなっていることから、悪化しなかったと考えられる。
 
図24 スパイラル特性の在来型肥大船型との比較
 
 図24はスエズマックスタンカーノンバラスト船型のスパイラル特性を他の肥大船(日本造船技術センターの最近の水槽試験結果、満載状態)と比較したものである。図に示すように通常の肥大船のスパイラル特性は不安定ループを有するが、ノンバラスト船型では不安定ループが無い。


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