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2.1.2 離岸流の最近の研究
 近年、海岸についての「防護」、「環境」と共に「利用」に係る安全性の面からの研究が進められている。海岸利用の促進を図るためには、同時に、海岸管理者は海岸利用者の安全確保を図ることが必要になり、この観点からの離岸流の研究が、例えば、高橋ら(1998、2002)、出口ら(2003、2004)、宇多ら(2003)、西ら(2003、2004)、栗山(2005)により行われている。
 各管区海上保安本部海洋情報部では、海難防止の立場から離岸流に係る調査研究が進められ、調査結果及びそれに基づく般利用者への啓発・広報がホームページに公開されている。また、独立行政法人港湾技術研究所においてもそのホームページにおいて、海岸の利用における市民の安全性に関する研究の重要性が示され、研究成果の一部が公開されている。
 しかしながら、これら海岸利用の安全性に係る離岸流研究は、未だ日が浅く、安全工学的な検討までには至っていない。
 一方、離岸流の発生メカニズムや発生パターン等の離岸流の流れの構造解明についての研究も、ビデオ等による観測技術や流れの数値シミュレーション技術が向上したことにより、盛んになってきている。
 近年、離岸流の発生パターンや構造が次第に明らかになり、発生に起因する条件から以下のように分類される。
 
流体運動場の不安定性に起因する離岸流
Type-Al: 不安定性に起因する離岸流
 平均水位、流体運動と漂砂移動(水深変化)などの間の複雑な相互干渉とそれらに起因する不安定現象によって発生する離岸流
Type-A2: shear instability, Far-infra-gravity waves
 強い沿岸流の岸沖方向の速度勾配に起因するせん断不安定現象によって、沿岸方向に定まった波長を持って発生する離岸流
 
地形によって生ずる波浪場の不均一性に起因する離岸流
Type-B1: 入射波の集中・発散に起因する地形性離岸流(汀線の凹部から発生)
Type-B2: 入射波の集中・発散に起因する地形性離岸流(汀線の凸部から発生)
Type-B3: 波浪場の平面分布に起因する(構造物によって決定される波浪場で発生する)離岸方向流れ
 
長周期流体運動による入社波波浪場の変調
Type-C: 反射波海浜に波が斜め入射し、定常エッジ波(Standing modeのEdge wave)が形成されることによって引き起こされる入射波浪場の空間的な不均一性によって発生する離岸流。逸散型海浜ではなく反射型海岸でエッジ波が形成される必要がある。
 
図−2.1.5 離岸流のパターン


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