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2.2 グリッド化未測深域の補間アルゴリズムの開発
 グリッド化未測深域の補間プログラムとしてグリッド化プログラムおよびグリッド補間・公開グリッドの挿入プログラムを作成した。
 
2.2.1 グリッド化
(1)目的と概要
 従来のグリッド化は水深点間隔に対して小さいグリッドを計算する場合、図13のように補間を多用している。グリッド化により発生したグリッドは測得水深によって根拠付けられるのに対し、補間は両隣のグリッド水深の均等配分等で計算されるため、根拠が薄く信頼性に欠ける。例えば補間されたグリッドの位置に実際は海底地形の高まりがあった場合でも表現されない。本プログラムは根拠の薄い補間グリッドを減らすことにより、詳細で根拠のあるグリッド化を行うことを目的とする。
 従来は計算対象グリッドの水深をグリッドに含まれる音響ビームの代表位置の平均値、中央値、最浅値、最深値で計算していた。この代表位置を以降「水深点」と呼ぶ。実際には音響ビームは海底に到達するまでに円錐状に拡がり、図15のようにフットプリント内の水深を計測している。フットプリントとは、拡がった音響ビームが海底面に投影された範囲である。図14で海底に投影された水色の楕円形がフットプリントである。音響ビームはフットプリント内に照射されているため、フットプリント内は漏れなく計測している。したがって計測したフットプリント上のグリットは補間せずに計算できると考え、新しいグリッド化手法を開発した。
 図14の赤色のグリッドは緑色のグリッドと同様、測得水深に基づいている。
 
図13 従来方法のグリッド化
図14 新しい方法のグリッド化
 
図15 フットプリントの概念
 
(2)入出力データ
 ピングデータを入力し、グリッドデータを出力する。
 
(3)計算方法
 本プログラムでは、図16のように計算対象グリッド水深を、グリッドにフットプリントが重なるすべての音響ビームの重み付け平均で計算する。
 
図16 グリッド計算に使用する音響ビームの概念
 
 各音響ビームの重みは計算対象グリッドからの距離ではなく、計算対象グリッドと音響ビームのフットプリントが重なる部分の確率密度の合計で決定する。確率密度とはフットプリント内の微小の位置からの反射波が最初にソナーに到達し、その音響ビームの水深値となる確率である。
 
(4)動作状況
 実際の調査データを使用し、動作確認を行った。使用したピングデータはノイズ除去プログラムの動作確認で使用したものと同じである。
 
 表4に示すデータでグリッド化の比較を行った。グリッドサイズは5秒とした。これは約150mに相当する。
 
表4 使用ピングデータ概要
水深範囲 4600mから7000m
ビーム間隔 水深4600m 直下ビーム 80m
45°ビーム 163m
水深7000m 直下ビーム 122m
45°ビーム 249m
平均ピング間隔 約100m
フットプリントサイズ 水深4600m 直下ビームの長軸 160m
直下ビーム短軸 160m
45°ビームの長軸 321m
45°ビームの短軸 227m
水深7000m 直下ビームの長軸 244m
直下ビーム短軸 244m
45°ビームの長軸 498m
45°ビームの短軸 346m
備考:平均ピング間隔は船速とピッチングに依存する。
 
 図17が従来のグリッド化手法による結果、図18が本手法による結果である。従来方法では水深の深いスワス端でグリッドの欠落が多く認められる。これは使用したデータにおいて、グリッドサイズが発振角度約45°以上の場所でビーム間隔より小さく、特にスワス端でグリッドと水深点が重ならないためである。また1直線にグリッドの欠落が認められる場所もある。これはピッチが大きくピング間距離が大きい場所である。
 それに対して本手法では、グリッドの欠落がほとんど認められない。フットプリントサイズはグリッドサイズより大きいため、全ての場所でグリッドを作成することができるからである。
 
図17 従来の手法による動作試験結果
 
図18 本手法による動作試験結果
 
 次にグリッドサイズ3秒の小さいグリッドを計算し、グリッド化の比較した。これは約90mに相当する。使用したデータの概要は表5に示すとおりである。
 
表5 使用ピングデータ概要
水深範囲 2050mから2700m
ビーム間隔 水深2050m 直下ビーム 36m
45°ビーム 73m
水深2700m 直下ビーム 47m
45°ビーム 96m
平均ピング間隔 約100m
フットプリントサイズ 水深2050m 直下ビームの長軸 72m
直下ビーム短軸 72m
45°ビームの長軸 146m
45°ビームの短軸 101m
水深2700m 直下ビームの長軸 94m
直下ビーム短軸 94m
45°ビームの長軸 96m
45°ビームの短軸 133m
 
 図19が従来のグリッド化手法による結果、図20が本手法による結果である。これを見ると従来の手法では未生成のグリッドが航跡と直交方向に多数欠落しているが、本手法では欠落が認められない。また海底地形の形状を比較すると、両手法による尾根の位置・形状は一致する。同様に谷の位置・形状も一致する。
 本手法は地形の特徴を残したまま補間グリッドを減らすことができる。
 
図19 従来の手法による動作試験結果
 
図20 本手法による動作試験結果


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