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平成17年広審第64号
件名

モーターボートウェーブ被引ウェイクボーダー負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成17年10月21日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(道前洋志)

理事官
前久保勝己

受審人
A 職名:ウェーブ船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
ウェイクボーダーが左肋骨骨折など

原因
操船不適切(護岸からの安全な距離)

裁決主文

 本件ウェイクボーダー負傷は,護岸からの安全な距離をとらなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年6月19日14時30分
 香川県志度港

2 船舶の要目
船種船名 モーターボートウェーブ
全長 6.34メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 147キロワット

3 事実の経過
 ウェーブは,航行区域を限定沿海区域とし,船体中央部のオーニングの下方で操縦するFRP製モーターボートで,香川県志度港内でウェイクボードを行う目的で,A受審人が1人で乗り組み,友人2人を同乗させ,船首0.4メートル船尾0.7メートルの喫水をもって,平成16年6月19日13時20分同港内のマリーナを発した。
 ところで,A受審人は,ウェイクボードを行うには海面が平穏な海域が適しているので,当時沖合は少し波があったことから,志度港内の東部に造成された埋立地西側の,南北に約600メートル延びた高さ約4.8メートルの護岸沖で行うことにしたものであった。
 また,ウェイクボードは,1枚のボードを用いて行う水上スキーの一種で,ボードに乗った者(以下「ウェイクボーダー」という。)が引航用ロープを握り,モーターボートによって引かれて片舷約45度の範囲でスラロームしたり,航走波を乗り越えるなどして楽しむもので,滑走中のウェイクボーダーは航走波を見ることに気をとられることから,周囲の見張りを行うことは難しい状況であった。
 13時25分A受審人は,前示護岸沖に至り,友人にウェーブを操縦させて自らウェイクボードを楽しんだのちに操縦を交替し,同乗者のBをボードに乗せて(以下「Bウェイクボーダー」という。)長さ約20メートルのロープを持たせ,護岸沖を南北に進行することを繰り返した。
 14時29分半少し前A受審人は,Bウェイクボーダーを後方に引き,志度港防波堤灯台から001度(真方位,以下同じ。)950メートルの地点から南下することとしたが,操縦することに気をとられて左舷側の護岸からの安全な距離をとることなく,針路を護岸に沿う175度に定め,時速35キロメートルの速力で,護岸から15メートルばかり離して手動操舵により進行した。
 Bウェイクボーダーは,最初に護岸の反対側の右側に滑走し,次いで護岸側の左側に滑走を始めて大きく移動したとき,14時30分志度港防波堤灯台から006度570メートルの地点の護岸に接触した。
 当時,天候は晴で風力4の東風が吹き,潮候は下げ潮の中央期であった。
 その結果,Bウェイクボーダーが左肋骨骨折などを負った。

(原因)
 本件ウェイクボーダー負傷は,香川県志度港内の護岸沖において,モーターボートで引航してウェイクボードを行う際,護岸からの安全な距離をとらず,ウェイクボーダーが護岸に接触したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,香川県志度港内の護岸沖において,モーターボートを操縦してウェイクボードを行う場合,護岸に沿って進行しながらウェイクボーダーがスラロームするのであるから,同人が接触しないよう,護岸からの安全な距離をとるべき注意義務があった。しかるに,A受審人は,操縦することに気をとられて護岸からの安全な距離をとらなかった職務上の過失により,ウェイクボーダーが護岸に接触する事態を招き,左肋骨骨折などを負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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