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平成17年長審第37号
件名

貨物船第一金盛丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年12月15日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(稲木秀邦,山本哲也,藤江哲三)

理事官
清水正男

受審人
A 職名:第一金盛丸船長 海技免許:五級海技士(航海)

損害
船首部船底外板に亀裂を伴う凹損

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は,居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
理由

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年3月12日00時50分
 速吸瀬戸高島南東岸
 (北緯33度16.5分 東経131度57.3分)

2 船舶の要目等
(1)要目
船種船名 貨物船第一金盛丸
総トン数 390トン
全長 60.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
(2)設備及び性能等
 第一金盛丸(以下「金盛丸」という。)は,昭和60年9月に進水した二層全通甲板を有する船尾船橋型鋼製砂利採取運搬船で,船首部に海砂の採取及び陸揚げ用クレーンを備え,船橋には,右側に機関操縦ハンドル左側に操舵装置を備えたコンソールスタンドが前側中央部に設置され,同コンソールスタンドの左側に順にGPS,レーダー及びジャイロコンパスがそれぞれ配備されていた。
 運動性能は,海上公試運転成績表によると,旋回径が船丈のほぼ2倍で旋回所要時間が約3分10秒,全速力前進時の最短停止距離が約250メートルで所要時間が約2分半となっていたが,貨物倉が二層甲板上に設けられ,同甲板下は空所及びバラストタンクとなっていたことから,積荷状態では船体重心がやや高くなり,回頭の際には船体傾斜を押さえるため,急激な回頭は避けて小角度で変針する必要があった。

3 事実の経過
 金盛丸は,主として宮崎県内海港と山口県小野田港間をスクラップの運搬に従事しており,A受審人,一等航海士(以下「一航士」という。),機関長及び甲板長の4人が乗り組み,スクラップ620トンを積載し,船首1.90メートル船尾3.95メートルの喫水をもって,平成16年3月11日15時45分内海港を発し,小野田港に向かった。
 ところで,A受審人は,乗船して間もなく,船長及び一航士による単独当直体制がとられていることを知って単独4時間交替3直制に改めることにし,甲板長に当直に入るよう打診したが同意が得られなかったので,乗船したばかりの遠慮もあって,しばらく2直制のまま様子を見ることとし,その後,3月7日小野田港において約1日間の待機があった以外はまとまった休息をとることができないまま,朝方から夕方にかけて荷役を行ったのち直ちに出航し,16時から22時まで一航士が,22時から07時前後となる入航まで自らが当直に就く航海を繰り返していた。
 発航時の操船を終えたA受審人は,16時00分宮崎県戸崎鼻の北東方約2海里の地点で一航士に船橋当直を委ねて降橋し,夕食をとったのち,19時ごろから自室で2時間半ほど仮眠をとり,21時45分大分県沖黒島南方2海里付近で昇橋し,22時00分一航士から引き継いで再び船橋当直に就いた。
 A受審人は,舵輪左後方のいすに腰掛けた姿勢で単独で船橋当直に当たり,23時47分高甲岩灯台から103度(真方位,以下同じ。)1.6海里の地点において,針路を大分県沖無垢島の北東方0.7海里の地点に向く328度に定め,機関を全速力前進にかけ,10.8ノットの速力で自動操舵によって進行した。
 定針後,A受審人は,乗船以来の連続した航海と荷役作業により十分な休息をとることができず,疲労が蓄積していたうえ睡眠不足の状態であり,長時間いすに腰掛けたままでいると居眠りに陥るおそれがあったが,特に眠気を自覚していなかったので,居眠りすることはあるまいと思い,手動操舵に切り替えて立った姿勢で当直を行うなり,外気に当たったりするなど,居眠り運航の防止措置をとることなく続航した。
 翌12日00時15分A受審人は,沖無垢島北東方沖合の,海獺碆灯台から160度6.5海里の地点に当たる,関埼灯台と豊後平瀬灯標間に向首する変針点に達したとき,前路に反航船を認めて左舷対左舷で航過することとし,転舵による船体傾斜を考慮して早めに自動操舵のまま佐田岬灯台に向首する004度までゆっくり右転を開始した。
 A受審人は,00時20分海獺碆灯台から159度5.6海里の地点で反航船を替わし終え,針路を戻して関埼沖400メートルの地点に向く310度とすることとし,数度に分けて自動操舵の設定つまみを回しながらゆっくり左転を続け,同時25分海獺碆灯台から159度4.7海里の地点に差し掛かったころ,同つまみを333度まで戻したとき,眠気を覚える間もなく,いすに腰掛けたまま居眠りに陥り,予定針路まで戻されないまま金盛丸は,大分県高島に向首する333度の針路で進行し,00時50分海獺碆灯台から226度1,000メートルの地点に当たる,高島南東岸の岩礁に原針路,原速力のまま乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力1の南西風が吹き,潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果,金盛丸は,船首部船底外板に亀裂を伴う凹損を生じたが,サルベージ船の来援を得て離礁し,のち修理された。

(本件発生に至る事由)
1 連続した航海と荷役作業により疲労が蓄積していたうえ睡眠不足の状態であったこと
2 航海当直者を増員して航海当直を3直制としなかったこと
3 いすに腰掛けて当直に当たっていたこと
4 特に眠気を自覚していなかったので,居眠りすることはあるまいと思い,居眠り運航の防止措置をとらなかったこと
5 居眠りに陥ったこと

(原因の考察)
 本件は,居眠り運航の防止措置を十分にとっておれば,発生を回避できたものと認められる。
 したがって,A受審人が,舵輪左後方のいすに腰掛けたまま当直に当たっていたこと,特に眠気を自覚していなかったので,居眠りすることはあるまいと思い,居眠り運航の防止措置をとらないで居眠りに陥ったことは,本件発生の原因となる。
 A受審人が,連続した航海と荷役作業により疲労が蓄積していたうえ睡眠不足の状態であったこと,航海当直者を増員して航海当直を3直制としなかったことは,いずれも本件発生に至る過程で関与した事実であるが,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これらは,海難防止の観点から是正されるべき事項である。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,山口県小野田港に向けて豊後水道西岸沿いを北上中,居眠り運航の防止措置が不十分で,大分県高島南東岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,山口県小野田港に向けて豊後水道西岸沿いを北上中,連続した航海と荷役作業により疲労が蓄積していたうえ睡眠不足の状態の下,単独で船橋当直に当たる場合,長時間いすに腰掛けたままでいると,居眠りに陥るおそれがあったから,手動操舵に切り替えて立った姿勢で当直を行うなり,外気に当たったりするなど,居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,特に眠気を自覚していなかったので,居眠りすることはあるまいと思い,居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により,自動操舵でいすに腰掛けたまま当直に当たり,反航船を替わしたのち,予定針路まで戻すためゆっくり左転中に居眠りに陥り,大分県高島南東岸に向首進行して岩礁への乗揚を招き,船首部船底外板に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。





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