日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2005年度(平成17年度) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成17年長審第69号
件名

遊漁船優美丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年12月7日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(藤江哲三)

理事官
平良玄栄

受審人
A 職名:優美丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底全体に破口を伴う損傷を生じて廃船,釣り客2人が頭部打撲,頚部捻挫等,船長が頭部打撲,裂創等

原因
針路保持不十分

裁決主文

 本件乗揚は,針路保持の措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年4月8日03時25分
 長崎県三重式見港南防波堤南東方陸岸
 (北緯32度48.2分 東経129度46.0分)

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船優美丸
総トン数 4.9トン
登録長 11.78メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 308キロワット

3 事実の経過
 優美丸は,平成元年6月に進水し,レーダー,GPSプロッター,魚群探知機及び自動操舵装置を備えたFRP製遊漁船で,A受審人(平成3年9月一級小型船舶操縦士免許取得)が1人で乗り組み,釣り客2人を乗せ,遊漁の目的で,船首0.7メートル船尾1.5メートルの喫水をもって,平成17年4月8日03時07分長崎県三重式見港奥にある係留地の船だまりを発し,同県野母埼南西方沖合約20海里の地点に当たる,鯵曽根と称する釣り場に向かった。
 発航後,A受審人は,法定灯火を掲げてGPSプロッターとレーダーを作動させ,釣り客を船室と操舵室左舷側でそれぞれ休息させて自らは同室右舷側に設けた舵輪の後方で操舵操船に当たり,折から霧のため視程が700ないし800メートルの状況下,レーダーレンジを0.75海里とし,機関を微速力前進にかけて港内を南下した。
 03時23分半A受審人は,三重式見港三重南防波堤東灯台(以下「南防波堤東灯台」という。)から154度(真方位,以下同じ。)70メートルの地点に達して防波堤入り口を航過したとき,レーダーレンジを2海里とし,左舷前方約1海里に映った長崎県神楽島を左舷側に約450メートル離して通過するよう,針路を222度に定め,機関を半速力前進に増速し,15.0ノットの速力で,前日から吹き続ける南西風の影響で発生したうねりを右舷船首方から受ける状況下,手動で操舵に当たり,神楽島南岸の南南西方約500メートルのところにある平瀬を左舷側に離して航過したのち,GPSプロッターに入力してある鯵曽根のポイントに向けて針路を転じることにして進行した。
 定針して間もなく,A受審人は,平瀬の西方沖合に達したときに,すぐに鯵曽根に向く針路に転じることができるよう,あらかじめGPSプロッターの表示を調整することを思い立ったが,短時間であれば当て舵をとらなくても直進するので大丈夫と思い,自動操舵に切り替えるなど,針路保持の措置を十分に行うことなく,手動操舵のまま舵中央として舵輪から手を離し,操舵室前部左舷側に備えたGPSプロッターの操作を始めた。
 A受審人は,03時24分少し過ぎ南防波堤東灯台から209度290メートルの地点に達したとき,うねりを右舷船首に繰り返し受けて優美丸が徐々に左転を始めたが,釣り客と一緒にGPSプロッター画面をのぞき込んでその表示を調整する作業に当たったまま,このことに気付かず,左転しながら続航中,突然衝撃を受け,03時25分南防波堤東灯台から188.5度620メートルの地点において,優美丸は,原速力のまま,船首が140度を向いたとき,三重式見港南防波堤南東方の陸岸に乗り揚げた。
 当時,天候は霧で風力2の南西風が吹き,潮候は上げ潮の初期であった。
 乗揚の結果,優美丸は,船底全体に破口を伴う損傷を生じ,のち廃船とされ,A受審人が頭部に打撲及び裂創などを,釣り客2人が頭部打撲,頚部捻挫などをそれぞれ負った。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,長崎県三重式見港において,港奥の係留地から沖合の釣り場に向けて航行中,針路保持の措置が不十分で,同港南防波堤南東方の陸岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,長崎県三重式見港において,港奥の係留地から沖合の釣り場に向けて航行中,GPSプロッターの調整を行う場合,自動操舵装置を備え付けていたのだから,自動操舵に切り替えるなど,針路保持の措置を十分に行うべき注意義務があった。しかし,同人は,短時間であれば当て舵をとらなくても直進するので大丈夫と思い,手動操舵のまま舵中央とし,舵輪から手を離してGPSプロッターの操作に当たり,針路保持の措置を十分に行わなかった職務上の過失により,徐々に左転しながら三重式見港南防波堤南東方の陸岸に向首進行して乗揚を招き,優美丸の船底全体に破口を伴う損傷を生じさせて同船を廃船とさせ,釣り客2人に頭部打撲,頚部捻挫などを負わせ,自身も頭部に打撲及び裂創などを負うに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION