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平成17年仙審第32号
件名

漁船のぶ丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年12月7日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(半間俊士)

理事官
今泉豊光

受審人
A 職名:のぶ丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船首船底外板に擦過傷

原因
針路選定不適切

裁決主文

 本件乗揚は,針路の選定が不適切であったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年10月6日07時20分
 新潟港
 (北緯37度57.71分 東経139度07.76分)

2 船舶の要目
船種船名 漁船のぶ丸
総トン数 2.13トン
登録長 7.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 47キロワット

3 事実の経過
 のぶ丸は,GPSを装備した,一本釣り漁業に従事するFRP製漁船であるが,平成5年8月に取得した一級小型船舶操縦士及び特殊小型船舶操縦士の各免許を有するA受審人が船長として1人で乗り組み,魚釣りの目的で,船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって,平成16年10月6日06時00分新潟県松浜漁港を発し,新潟空港北方沖合約600メートルの釣り場に向かった。
 ところで,阿賀野川河口付近は,大雨による増水の影響で水深の変化や,砂州の大きさが変化することがあり,同河口を経て松浜漁港に入航する船舶は,海上保安部が配布したパンフレットに記載されている目安を参考にしたり,GPSプロッターを見て出航時の針路の逆をたどるなどの注意を要し,A受審人はこのことを知っていた。
 A受審人は,出港後,阿賀野川東岸近くを下航して,河口東岸の砂地の西端より30メートルばかり隔てて航過したのち,06時15分釣り場に至り,漂泊して魚釣りを行い,アジやキスなど20匹ばかりの釣果を得たところで,北西風が強まってきたので帰ることとし,07時13分ごろ釣り場を発進して帰途についた。
 A受審人は,19ノットばかりの対地速力で阿賀野川河口に向かい,07時16分少し過ぎ河口の中央部よりやや西寄りにあたる,阿賀野川口灯台から313度(真方位,以下同じ。)800メートルの地点に達したとき,この地点から川筋に沿って上航しても,松浜漁港に達するまでに川底が浅くなっているところはないものと思い,GPSプロッターを見て出航時の針路の逆をたどるなど,適切な針路の選定を行わず,針路を川筋に沿った174度に定め,機関を微速力前進にかけ,2.7ノットの対地速力に落として進行した。
 A受審人は,前路に浅くなった砂地の川底があることに気付かず,同じ針路,同じ速力で続航中,07時20分阿賀野川口灯台から294度600メートルの地点において,突然船底に軽い衝撃を受け,水面下に隠れた砂地に乗り揚げた。
 当時,天候は曇で風力3の北西風が吹き,潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果,船首船底外板に擦過傷を生じ,自力で離礁できず,救助に来た僚船に引き下ろされた。

(海難の原因)
 本件乗揚は,新潟県阿賀野川河口において,松浜漁港に帰港中,針路の選定が不適切で,浅くなった砂地の川底に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,新潟県阿賀野川河口において,松浜漁港に向けて航行する場合,河口付近は大雨の影響で水深が変化していることがあることを知っていたのであるから,水深が浅くなっているところを避けることができるよう,適切な針路の選定を行うべき注意義務があった。ところが,同人は,河口の中央部よりやや西寄りの地点から川筋に沿って上航しても,松浜漁港に達するまでに川底が浅くなっているところはないものと思い,GPSプロッターを見て出航時の針路の逆をたどるなど,適切な針路の選定を行わなかった職務上の過失により,浅くなった砂地の川底に向首していることに気付かないまま進行し乗揚を招き,船首船底外板に擦過傷を生じ,僚船に引き下ろしを依頼する事態を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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