日本財団 図書館




 海難審判庁採決録 >  2005年度(平成17年度) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成17年神審第79号
件名

遊漁船関丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年11月2日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(工藤民雄)

理事官
平野浩三

受審人
A 職名:関丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底に亀裂

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成17年5月8日19時50分
 福井港三国区,九頭竜川河口付近
 (北緯36度12.7分 東経136度08.3分)

2 船舶の要目
船種船名 遊漁船関丸
総トン数 3.58トン
全長 10.25メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 190キロワット

3 事実の経過
 関丸は,昭和54年6月に進水し,船体中央やや後方に操舵室を配置したFRP製小型遊漁兼用船で,A受審人が1人で乗り組み,釣客4人を乗せ,船首0.3メートル船尾1.2メートルの喫水をもって,平成17年5月8日11時50分福井県福井港三国区,九頭竜川支流の竹田川河口右岸の係留地を発し,12時20分ごろ同港南西方沖合の釣り場に至って釣客に釣りを行わせ,19時30分福井港福井石油備蓄シーバース灯から273度(真方位,以下同じ。)0.9海里の地点を発進し,発航地に向けて帰航の途についた。
 ところで,A受審人は,これまで竹田川河口の係留地に夜間の出入航を頻繁に繰り返し,九頭竜川河口付近の南西方に湾曲する左岸近くには多数の杭が存在するうえ,浅瀬が拡延していることをよく承知しており,平素,係留地に向け入航する際には,適宜減速して同河口中央部を通過したあと,同川右岸近くに存在するケカチ岩東方の,陸上の赤色灯火(以下「赤色灯火」という。)を船首目標としたうえ,周囲の明かりを確かめ,湾曲する同川河口中央部付近を通航していた。
 発進後,A受審人は,操舵室の舵輪後方で操船に当たり,片苔埼の陸上灯火を目標として北東進し,19時42分半少し過ぎ九頭竜川河口右岸の三国防波堤先端に設置された,三国防波堤灯台から240度1.1海里の地点で,針路を同川河口のほぼ中央に向ける063度に定め,機関を全速力より少し減じ,15.5ノットの対地速力(以下「速力」という。)で,手動操舵によって進行した。
 19時46分少し過ぎA受審人は,三国防波堤灯台から227度420メートルの地点において,10.5ノットの速力に減速し,やがて九頭竜川に入り,同じ針路で同川河口の中央部付近を続航した。
 A受審人は,19時48分半少し過ぎ三国防波堤灯台から078度420メートルの九頭竜川の湾曲部付近に達したとき,更に7.5ノットに減速し,いつも船首目標としている赤色灯火に向けて転針することとしたが,同灯火が他の街明かりなどに紛れて視認しにくかったものの,通い慣れた水域であることに気を許し,以前,プロペラにゴミを絡ませたことがあったことから,川のゴミが気になって水面を見ていて,船首目標とする赤色灯火及び周囲の明かりにより川岸との距離を確かめるなど,船位の確認を十分に行うことなく,右転して093度の針路としたところ,九頭竜川左岸の浅瀬に向首する状況となった。
 転針後,A受審人は,赤色灯火を見失ったまま,依然船位の確認を行わなかったので,九頭竜川左岸の浅瀬に近づいていることに気付かずに進行中,19時50分三国防波堤灯台から085度740メートルの地点において,関丸は,原針路,原速力のまま,九頭竜川左岸の浅瀬に乗り揚げた。
 当時,天候は曇で風力1の北風が吹き,潮候は下げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果,関丸は,船底に亀裂を生じ,僚船の援助を得て離礁し,のち修理された。

(海難の原因)
 本件乗揚は,夜間,福井県福井港沖合の釣り場から同港三国区,九頭竜川支流の竹田川河口右岸の係留地に向け帰航中,九頭竜川河口の湾曲部を上航する際,船位の確認が不十分で,同川左岸の浅瀬に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,福井港沖合の釣り場から同港三国区,九頭竜川支流の竹田川河口右岸の係留地に向けて帰航中,九頭竜川河口の湾曲部を上航する場合,同川河口付近の湾曲部の左岸近くには多数の杭が存在するうえ,浅瀬が拡延していることを知っていたのであるから,浅瀬に向首することのないよう,船首目標とする赤色灯火及び周囲の明かりにより川岸との距離を確かめるなど,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら,同人は,通い慣れた水域であることに気を許し,以前,プロペラにゴミを絡ませたことがあったことから,川のゴミが気になって水面を見ていて,船首目標とする赤色灯火及び周囲の明かりにより川岸との距離を確かめるなど,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,九頭竜川左岸の浅瀬に向首進行して乗揚を招き,船底に亀裂を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION