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平成17年広審第84号
件名

貨物船新日丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年10月6日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(道前洋志)

副理事官
神南逸馬

受審人
A 職名:新日丸船長 海技免許:四級海技士(航海)

損害
球状船首に亀裂を伴う凹損など

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は,居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
 
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年11月3日22時00分
 広島湾黒島

2 船舶の要目
船種船名 貨物船新日丸
総トン数 699トン
全長 81.25メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット

3 事実の経過
 新日丸は,航行区域を限定沿海区域とする船尾船橋型貨物船で,A受審人ほか4人が乗り組み,カルサインコークス2,000トンを積載し,船首3.82メートル船尾5.02メートルの喫水をもって,平成16年11月3日20時10分広島県佐伯郡大野町の岸壁を発し,大阪港に向かった。
 これより先,A受審人は,同月2日午前兵庫県東播磨港を発して翌3日00時ころ大野町沖合に錨泊して休息し,07時00分着岸して積荷を行い,昼食後1時間ばかり休息をとって発航したものであった。
 A受審人は,出港操船に引き続いて単独で船橋当直に就き,他船を避航しながら広島湾北部を南下し,21時23分安芸白石灯標から165度(真方位,以下同じ。)2.6海里の地点で,針路を黒島に向首する131度に定めて自動操舵とし,機関を全速力前進にかけて11.0ノットの対地速力で進行した。
 A受審人は,定針したのち,広島県倉橋島南西端の城岸鼻沖に達したとき鹿島と羽山島の間に向けて転針して安芸灘に向かう予定で,操舵スタンド右舷側に置いてあるいすに腰掛けて当直に当たっていたところ,前路に他船を見かけなくなったことから気が緩んで眠気を催すようになったが,発航して間もないので居眠りに陥ることはあるまいと思い,いすから立ち上がって外気に当たるなど居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった。
 A受審人は,いすに腰掛けたまま当直を続けているうちいつしか居眠りに陥り,21時54分ころには予定転針地点に達したことに気付かず,針路を転じることなく黒島に向首したまま続航し,22時00分西五番之砠灯標から102度1.3海里の地点において,新日丸は,原針路,原速力で,同島北岸に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力1の西風が吹き,潮候は上げ潮の中央期であった。
 乗揚の結果,球状船首に亀裂を伴う凹損などを生じたが,救援船により引き降ろされ,のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は,夜間,広島湾を南東進する際,居眠り運航の防止措置が不十分で,黒島に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,単独で船橋当直に就いていすに腰掛けて広島湾を南東進中,前路に他船を見かけなくなったことから気が緩んで眠気を催した場合,そのままの姿勢でいると居眠りに陥るおそれがあったから,いすから立ち上がって外気に当たるなど居眠り運航の防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,発航して間もないので居眠りに陥ることはあるまいと思い,いすから立ち上がって外気に当たるなど居眠り運航の防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により,居眠りに陥り,予定の転針ができず,黒島に向首したまま進行して乗揚を招き,球状船首に亀裂を伴う凹損などを生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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