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平成17年神審第56号
件名

モーターボート幸丸沈没事件(簡易)

事件区分
沈没事件
言渡年月日
平成17年9月28日

審判庁区分
神戸地方海難審判庁(横須賀勇一)

理事官
黒田敏幸

指定海難関係人
A 職名:幸丸操縦者

損害
幸丸行方不明

原因
荒天避難の時機を失したこと

裁決主文

 本件沈没は,荒天避難の時機を失したことによって発生したものである。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年12月11日08時10分
 福井県福井港
 (北緯36度11.5分東経136度07.3分)

2 船舶の要目
船種船名 モーターボート幸丸
全長 1.6メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 1.4キロワット

3 事実の経過
 幸丸は,操縦免許を必要としない,B社製の船外機を取り付けた重量約30キログラムのFRP製手漕ぎボートで,A指定海難関係人が単独で乗り組み,あじ釣りの目的で,船首0.2メートル船尾0.3メートルの喫水をもって,平成16年12月11日04時30分福井県福井港の船揚場を発し,発航地点から南方1,500メートル付近に位置する港内の釣り場に向かった。
 ところで,A指定海難関係人は,福井港内で釣りを行ったこれまでの経験から,乾舷が0.2メートルで予備浮力もない幸丸では波が高くなれば沈没するおそれがあることを承知していたので,風速5メートル毎秒の風が吹いて波が高くなれば荒天避難することにしていた。
 こうして,A指定海難関係人は,福井北防波堤灯台から166度(真方位,以下同じ。)890メートルの地点に至り,風はなく,波高0.3メートルのうねりの中で,救命胴衣を着用して釣りを行っていたところ,06時55分北風が吹き始めて,風速5メートル毎秒となり,次第に波が高くなってきたのを認めたが,釣果がなかったのでもう少し釣りを続けたいと思い,直ちに船揚場に戻るなど荒天避難をすることなく,釣り場を移動することにした。
 07時08分A指定海難関係人は,福井北防波堤灯台から163度1,080メートルの地点に至り,水深9メートルの海底に投錨して釣りを続行中,08時05分風速8メートル毎秒の北風と増勢する波浪により船体が動揺して浸水の危険を感じたので,急遽,船揚場に戻るため錨の揚収を始めた。
 08時10分わずか前,錨を揚収したA指定海難関係人は,左舷船尾で船外機を起動し,風浪を左舷側から受けながら船首を風上に立てるため右手で船外機のスロットルレバーを右30度にとり,時速4.4キロメートルの速度で左旋回中,北からの大波に右舷船首を押し上げられ,さらに,右舷船尾を持ち上げられたところへ海水が打ち込み水船状態となったので,慌てて機関中立とし,付近の遊漁船に救助を求めたとき,08時10分幸丸は,福井北防波堤灯台から163度1,080メートルの地点において,第二波により浮力を失い,船尾から一気に沈没した。
 当時,天候は曇で風力5の北風が吹き,視界は良好であり,波高は0.7メートルであった。
 沈没の結果,救命胴衣を着用していたA指定海難関係人は,クーラーボックスにつかまり浮いているところを救助され,幸丸は行方不明となった。

(原因)
 本件沈没は,福井県福井港において遊漁中,風浪が増勢する状況下,荒天避難の時機を失したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A指定海難関係人が,福井県福井港において乾舷が小さく予備浮力もない幸丸で遊漁中,風浪が増勢する状況下,荒天避難の時機を失したことは,本件発生の原因となる。
 A指定海難関係人に対しては,本件後安全運航に努めている点に徴し,勧告しない。





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