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平成17年横審第43号
件名

モーターボートジェイエスピー乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年9月12日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(小寺俊秋)

理事官
河野 守

受審人
A 職名:ジェイエスピー船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
ドライブユニットに損傷,航行不能

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は,水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年8月4日13時30分
 愛知県倉舞港西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 モーターボートジェイエスピー
総トン数 1.9トン
登録長 5.58メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 110キロワット

3 事実の経過
 ジェイエスピー(以下「ジ号」という。)は,Bマリーナにおいてレンタルに供されていた,電気点火機関の船内外機を装備するFRP製プレジャーモーターボートで,平成11年10月に四級小型船舶操縦士免許取得したA受審人が借り受け,同人が船長として単独で乗船し,同乗者5人を乗せ,ウエイクボードを行う目的で,ドライブユニット部分における0.85メートルの最大喫水をもって,同16年8月4日13時00分愛知県倉舞港を発し,同港西方沖合に向かった。
 発航後,A受審人は,やや波が高く同乗者が初心者であったので,ウエイクボードを取り止めてクルージングを行うこととし,梶島方面に向かった。
 ところで,A受審人は,水上オートバイで倉舞港西方沖合を何度も航走した経験があったので,改めて確認しなくても大丈夫と思い,発航に先立ち,Bマリーナに掲示されていた図名「三河湾」のヨット・モーターボート用参考図や,図名「渥美湾」の海図を精査して,水面下の険礁や干出岩の存在とその位置を確認するなど,水路調査を十分に行わなかったので,梶島北方に干出岩が存在することを知らなかった。
 A受審人は,13時28分わずか前中島灯標から108度(真方位,以下同じ。)1,400メートルの地点で,針路を同灯標に向く288度に定め,機関を回転数毎分3,000にかけ,15.0ノットの対地速力で,手動操舵により進行したところ,正船首980メートルに水面下0.2メートルに没していた干出岩が存在し,同干出岩に向首する状況となったが,水路調査を十分に行っていなかったので,このことに気付かず,原針路,原速力で続航中,13時30分中島灯標から108度420メートルの地点において,ジ号は,同干出岩に乗り揚げ,これを乗り切った。
 当時,天候は晴れで風力4の南東風が吹き,潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果,ドライブユニットに損傷を生じ,低速で帰港中に機関が停止して航行不能となり,陸岸近くに投錨した。その後,A受審人及び同乗者は泳いで陸上に上がり,ジ号はBマリーナの手配により,倉舞港に引き付けられた。

(原因)
 本件乗揚は,愛知県倉舞港を同港西方沖合に向けて発航する際,水路調査不十分で,梶島北方の干出岩に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,愛知県倉舞港を同港西方沖合に向けて発航する場合,梶島北方の干出岩の存在と,その正確な位置を確認することができるよう,発航に先立ち,Bマリーナに掲示されていた海図を精査するなど,水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,水上オートバイで同沖合を何度も航走した経験があったので,改めて確認しなくても大丈夫と思い,水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,梶島北方の水面下に没していた干出岩に向首していることに気付かないまま進行して乗揚を招き,ドライブユニットを損傷させ,機関が停止して航行不能となる事態を招くに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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