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平成17年長審第24号
件名

漁船旭龍遭難事件(簡易)

事件区分
遭難事件
言渡年月日
平成17年6月30日

審判庁区分
長崎地方海難審判庁(山本哲也)

理事官
清水正男

受審人
A 職名:旭龍船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
プロペラ軸にわずかな曲がり,主機クラッチ,主機の船尾側ケーシング等に損傷

原因
プロペラによる錨索巻込みの防止措置不十分

裁決主文

 本件遭難は,プロペラによる錨索巻込みの防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年2月27日14時00分
 長崎県臼浦港域内の陸岸付近

2 船舶の要目
船種船名 漁船旭龍
総トン数 19トン
登録長 17.46メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190

3 事実の経過
 旭龍は,春から秋にかけては片口いわし,冬季はあじやさばを対象魚に,長崎県生月島周辺海域で操業に従事する中型まき網漁業船団所属のFRP製運搬船兼灯船で,A受審人(平成6年3月一級小型船舶操縦士免許取得,同16年2月一級小型船舶操縦士免許と特殊小型船舶操縦士免許に更新)ほか1人が乗り組み,船団とともに操業中,網船の漁網が大きく破損したことから,平成16年2月27日早朝同漁網の修理準備のため船団から離れて帰航し,09時ごろ同県北松浦郡小佐々町神崎(こうざき)に所在する浮桟橋に入船右舷付けで着桟した。
 浮桟橋は,船団経営者が水揚場兼船団所属船の係船場として設置した私設桟橋で,長崎県臼浦港域内の通称「杉の浦」と称する,南側に開口した浦の西側陸岸付近に位置し,ほぼ東方に向けて陸岸の岸壁に直角に敷設されており,A受審人が甲板員とともに浮桟橋近くの岸壁で,漁網の取替え部位を揃えるなどの修理準備をしている間に,続いて到着した船団の運搬船B号(総トン数19トン)が,同桟橋から南東方70メートルばかりの地点に投錨したうえ,直径25ミリメートルの合成繊維製の錨索を延出し,旭龍の左舷側に出船左舷付けで接舷して係留していた。
 その後,A受審人は,網船到着の連絡を受け,一旦沖出しして同船を着桟させ,自船をB号の右舷側に係留し直す目的で,1人で旭龍に乗り組み,船首1.0メートル船尾2.0メートルの喫水をもって,13時40分離桟し,浮桟橋の北東方100メートルばかりの地点において,到着した網船がB号と同桟橋の間に入船状態で着桟するまで待機したのち,自ら操船に当たり,B号の右舷側に出船係留するつもりで同時50分後進を開始した。
 A受審人は,機関の回転数を毎分500回転の微速力後進にかけて2.0ノットの対地速力で南西方に向かって進行し,B号の錨索を斜めに横切る態勢で接近したが,同錨索は海底近くまで沈下しているものと思い,B号の船首から十分離れた位置で横切るなど,プロペラによる錨索巻込みの防止措置を十分にとることなく続航した。
 こうして,旭龍は,B号の船首方20メートルばかりの位置で同船の錨索を西方に向かって斜めに横切ったとき,14時00分臼浦港楠泊東防波堤灯台から真方位295度1,750メートルの地点において,プロペラが海中で浮遊していたB号の錨索と接触して巻き込み,航行不能となった。
 当時,天候は曇で風力4の南西風が吹き,潮候は下げ潮の中央期であった。
 A受審人は,衝撃で錨索を巻き込んだことに気付き,すぐにクラッチを切って各部を点検したところ,主機クラッチのケーシングが割損し,潤滑油が漏洩していることを認め,船主,機械修理業者等に連絡した。
 遭難の結果,旭龍は,近くの造船所に曳航されて精査したところ,プロペラ本体に損傷はなかったが,錨索をプロペラボス部と船尾材の間に多量に巻き込んだことから,過大な引張り応力を受けてプロペラ軸が後方に移動し,同軸にわずかな曲がりが生じたほか,主機クラッチ,主機の船尾側ケーシング等に損傷が生じていることが判明し,のち,修理された。

(原因)
 本件遭難は,長崎県臼浦港において,浮桟橋に着桟中の僚船に接舷する目的で,同船の船首方を横切る態勢で後進する際,プロペラによる錨索巻込みの防止措置が不十分で,海中で浮遊していた僚船の錨索をプロペラが巻き込んだことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,長崎県臼浦港において,浮桟橋に着桟している僚船に接舷する目的で,同船の船首方を横切る態勢で後進する場合,プロペラが同船の錨索を巻き込むことのないよう,同船の船首から十分離れた位置で横切るなど,錨索巻込みの防止措置を十分にとるべき注意義務があった。しかし,同人は,錨索は海底近くまで沈下しているものと思い,錨索巻込みの防止措置を十分にとらなかった職務上の過失により,プロペラが海面近くで浮遊していた錨索を巻き込み,プロペラ軸,主機クラッチ等を損傷させる事態を招き,航行不能となるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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