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平成17年横審第12号
件名

漁船福栄丸乗揚事件

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年6月24日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(岩渕三穂,黒岩 貢,西田克史)

理事官
亀井龍雄

受審人
A 職名:福栄丸漁ろう長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
全損

原因
居眠り運航防止措置不十分

主文

 本件乗揚は,居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

理由

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年7月13日20時35分
 東京都三宅島東岸
 (北緯34度06.0分 東経139度34.0分)

2 船舶の要目等
(1)要目
船種船名 漁船福栄丸
総トン数 19トン
登録長 16.93メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190
(2)設備及び性能等
 福栄丸は,昭和62年2月に進水したFRP製漁船で,操舵室には,レーダー,GPSなどの航海計器及び操舵装置,機関操縦装置が設備され,右舷側窓際に床からの高さ70センチメートルの椅子代わりの台が置かれていた。

3 事実の経過
 福栄丸は,毎年4月下旬から8月末まではかつお一本釣り漁業に,10月から翌年4月中旬まではまぐろ延縄漁業に従事する近海かつお・まぐろ漁船で,A受審人ほか5人が乗り組み,船首0.8メートル船尾2.5メートルの喫水をもって,かつお一本釣り漁の目的で,平成16年7月12日08時00分三重県引本港を発し,遠州灘に向かった。
 ところで,福栄丸では,かつお一本釣り漁船の常態として,漁ろう長のA受審人が操業全般の指揮を務め,漁場移動時には同人が船橋当直を,他の乗組員は魚群発見の見張りをそれぞれ行い,水揚げで帰航するときに全員で交代制の同当直を行っていた。
 A受審人は,遠州灘で操業して漁場を移動し,翌13日早朝から銭洲及び三宅島西方海域で操業後,18時ごろから南西風が強くなってきたので,同島の東側に避難することとし,19時06分サタドー岬灯台から038度(真方位,以下同じ。)0.8海里の地点に至り,漂泊を開始した。
 A受審人は,漁獲物の整理を終えた乗組員を部屋で休ませ,自らも早朝からの操業指揮と漁場移動中の船橋当直を続けていて疲労気味であったものの,単独で同当直に就いていたところ,折からの風潮流により北東方に圧流され,三宅島の陰から外れて次第に風波を強く受けるようになったので,再び同島陰に避難することとし,19時35分サタドー岬灯台から052度3.4海里の地点を発進して針路を244度に定め,機関を極微速力前進にかけ,3.0ノットの対地速力(以下「速力」という。)で,操舵室右舷側の台に腰掛けて自動操舵により進行した。
 20時25分A受審人は,サタドー岬灯台から024度1.1海里の地点に達し,三宅島東岸まで0.7海里となったとき,疲労気味であったことから,眠気を催したが,間もなく漂泊予定地点だから,それまで我慢できるものと思い,直ちに腰掛けていた台から立ち上がって洗顔するなどの居眠り運航の防止措置をとることなく,台に腰掛けたまま続航中,いつしか居眠りに陥った。
 こうして,福栄丸は,船橋当直中のA受審人が居眠りに陥り,三宅島東岸に向首したまま,漂泊予定地点を航過して進行中,20時35分サタドー岬灯台から353度0.7海里の地点において,原針路,原速力のまま,同東岸に乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力5の南西風が吹き,潮候はほぼ低潮時であった。
 A受審人は,衝撃で目覚めて乗揚に気付き,転覆の危険があったので乗組員全員を退船させるなどの措置に当たった。
 乗揚の結果,船体は波浪の衝撃により全損となったが,乗組員は全員が救命筏(いかだ)に乗り移り,付近で錨泊中の貨物船に救助された。

(本件発生に至る事由)
1 A受審人が,かつお一本釣り漁船の常態として,早朝からの操業指揮及び船橋当直を連続して行い,疲労気味であったこと
2 南西からの風潮流に圧流されて三宅島陰から外れたのち,再び同島陰に入るために同島東岸に接近したこと
3 A受審人が,眠気を催したときに,間もなく漂泊予定地点だから,それまで我慢できるものと思い,直ちに腰掛けていた台から立ち上がって洗顔するなどの居眠り運航の防止措置をとらなかったこと

(原因の考察)
 船橋当直者が,単独で当直中に眠気を催したとき,直ちに眠気を払拭する行動をとっていたなら,居眠りに陥らずに乗揚を回避できたものと認められる。
 したがって,A受審人が,眠気を催したときに,間もなく漂泊予定地点だから,それまで我慢できるものと思い,直ちに腰掛けていた台から立ち上がって洗顔するなどの居眠り運航の防止措置をとらなかったことは,本件発生の原因となる。
 A受審人が,かつお一本釣り漁船の常態として,早朝からの操業指揮及び船橋当直を連続して行い,疲労気味であったことは,本件発生に至る過程で関与した事実であるが,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これは海難防止の観点から是正されるべき事項である。
 南西からの風潮流に圧流されて三宅島陰から外れたのち,再び同島陰に入るために同島東岸に接近したことは,強風を避ける場合の通常の運航技術であり,居眠りがなければ乗揚は回避できたから,原因とならない。

(海難の原因)

 本件乗揚は,夜間,三宅島東方沖合において,強風避難のために同島陰に向け南西進中,居眠り運航の防止措置が不十分で,同島東岸に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)

 A受審人は,夜間,単独で船橋当直に就き,三宅島東方沖合において,強風避難のために同島陰に向け南西進中,眠気を催した場合,居眠り運航とならないよう,直ちに腰掛けていた台から立ち上がって洗顔するなど,居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,間もなく漂泊予定地点だから,それまで我慢できるものと思い,居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により,居眠りに陥り,三宅島東岸に向首進行して乗揚を招き,福栄丸を全損させるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。





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