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平成16年那審第41号
件名

モーターボートみか丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年5月18日

審判庁区分
門司地方海難審判庁那覇支部(平野研一)

理事官
入船のぞみ

受審人
A 職名:みか丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底外板全般及び推進器等に損傷,全損

原因
船位確認不十分

裁決主文

 本件乗揚は,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年8月7日15時50分
 沖縄県糸満漁港西方沖合

2 船舶の要目
船種船名 モーターボートみか丸
全長 11.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 200キロワット

3 事実の経過
 みか丸は,船体中央やや船尾寄りに操舵室を設けた最大搭載人員13人のFRP製モーターボートで,平成10年3月に一級小型船舶操縦士(平成15年7月一級小型船舶操縦士・特殊小型船舶操縦士免許に更新)の免許を取得したA受審人が,1人で乗り組み,友人2人を同乗させ,釣りの目的で,船首0.3メートル船尾0.8メートルの喫水をもって,平成16年8月7日07時00分沖縄県糸満漁港を発し,08時00分同港西方沖合ルカン礁の南方0.5海里の釣り場に到着し,漂泊しながら釣りを始めた。
 ところで,A受審人は,主にルカン礁周辺に,5年ほど前から月あたり1回の割合で釣りに出かけ,同礁外縁の拡延模様について,良く知っていた。
 A受審人は,水深が約50メートルの釣りポイントを維持するため,ときどき機関を始動して潮上りを繰り返していたところ,釣果が思わしくなかったので,12時ごろルカン礁の東方沖合に移動し,パラシュート型シーアンカー(以下「パラアンカー」という。)を投入し,釣りを再開した。
 15時10分A受審人は,ルカン礁外縁の風上となる,ルカン礁灯台から092度(真方位,以下同じ。)820メートルの地点で,船首が081度に向いていたとき,機関を始動して潮上りを行うこととし,同乗者1人が,パラアンカーを揚げようとしたところ,誤って同アンカーの錨索を推進器に巻き込んだことから,漂流を避けるため,底質砂とさんごのところに,船首部から重さ7キログラムのステンレス製四爪錨を水深25メートルの海中に投じ,10メートルのチェーンを介して直径2センチメートルの錨索を長さ約50メートルまで延出して錨泊したのち,機関を停止した。そして,同人とともに海中に潜り,巻き込んだパラアンカーの錨索の取り外し作業を始めたところ,折からの強い東北東風と波浪で,みか丸が,ルカン礁に向かって走錨を始めたことに気付かないで,同作業を続けた。
 15時40分A受審人は,ルカン礁灯台から095度660メートルの地点に達したとき,推進器に絡んだパラアンカーの錨索がほぼ解けたので,一旦船上に上がり,残りの同錨索を外すためウインチで巻き始めたが,同ウインチが作動不良で巻き揚げることができず,みか丸が,次第に圧流されてルカン礁外縁に接近し,乗り揚げるおそれのある状況となったものの,ウインチの復旧に気をとられ,ルカン礁外縁との距離を目視で確認するなど,船位の確認を十分に行わなかったので,このことに気付かなかった。
 その後,A受審人は,再び潜水し,残ったパラアンカーの錨索の除去を終えて船上に戻ったが,依然船位の確認を十分に行わなかったので,ルカン礁外縁が間近に迫っていることに気付かないまま,15時50分ルカン礁灯台から096度600メートルの地点において,船首を081度に向けて同礁外縁に船尾から乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風力5の東北東風が吹き,潮候は下げ潮の末期であった。
 乗揚の結果,船底外板全般及び推進器等に損傷を生じ,A受審人及び同乗者は海上保安庁のヘリコプターにより救助され,船体は船固めされたが,その後荒天となって船体は流失し,全損となった。

(原因)
 本件乗揚は,沖縄県糸満漁港西方沖合において,ルカン礁外縁の風上に錨泊して推進器に絡んだパラアンカーの錨索の除去作業を行う際,船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,沖縄県糸満漁港西方沖合において,折からの強い東北東風と波浪がある状況下,ルカン礁外縁の風上に錨泊して推進器に絡んだパラアンカーの錨索の除去作業を行う場合,同礁外縁に乗り揚げることのないよう,ルカン礁外縁との距離を目視で確認するなど,船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,ウインチの復旧に気をとられ,船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により,折からの強い東北東風と波浪により走錨して圧流され,同礁外縁に接近し,乗り揚げるおそれのある状況となったことに気付かず,同礁外縁への乗揚を招き,船底外板全般及び推進器等に損傷を生じさせ,船体は船固めされたが,その後荒天となって船体を流失させ,全損とさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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