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平成16年門審第119号
件名

水上オートバイブルーマーリンII遊泳者負傷事件(簡易)

事件区分
死傷事件
言渡年月日
平成17年1月14日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(千手末年)

理事官
島友二郎

受審人
A 職名:ブルーマーリンII船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
遊泳者1人が1週間の自宅療養を要する全身打撲,2人が頭部打撲及び左膝打撲で全治3日間の負傷

原因
飲酒運航の防止措置不十分

裁決主文

 本件遊泳者負傷は,飲酒運航の防止措置が不十分で,遊泳者の至近でスピンターンを行い,船体が遊泳者を直撃したことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年7月11日17時30分
 福岡県博多港シーサイドももち海浜公園沖

2 船舶の要目
船種船名 水上オートバイブルーマーリンII
総トン数 0.1トン
全長 3.16メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 106キロワット

3 事実の経過
 ブルーマーリンII(以下「ブ号」という。)は,最大とう載人員3人のFRP製水上オートバイで,平成14年12月に五級小型船舶操縦士の免許を取得したA受審人が単独で乗り組み,遊走の目的で,船首0.1メートル船尾0.2メートルの喫水をもって,平成16年7月11日10時30分福岡市シーサイドももち海浜公園にある艇庫前の,福岡タワーから326度(真方位,以下同じ。)170メートルの砂浜を発進し,その後同公園の防波堤内側にあるマリゾン西方及び同防波堤外側の海域で遊走を繰り返した。
 ところで,A受審人は,平成15年2月ごろ兄から水上オートバイを譲り受けて週末になれば遊走していた。また,同16年4月にブ号をB所有者から購入し,名義のみを同所有者のままとしていたものの,実質的な所有者となり,週末には博多港で遊走していたので,ブ号の操縦には慣れていた。
 12時ごろA受審人は,海の家で昼食をとることにしたとき,同家で生ビール500ミリリットルを2杯飲み,食後もブ号に乗船すれば危険操縦となるおそれがあったが,少しぐらい飲んでいても大丈夫と思い,運航を中止することなく,更に15時30分ごろレストランに立ち寄り,カクテル250ミリリットルを1杯飲んだものの,依然として運航を中止することなく,マリゾン周辺海域から能古島周辺海域に至って遊走を続けた。
 17時ごろA受審人は,マリゾン西方海域に戻って,反時計回りに円を描いて遊走していたところ,同海域内の砂浜の少し沖において,胸まで海水に浸かって遊んでいる子供達(以下「遊泳者」という。)を見かけたことから,その至近でスピンターンを行って水しぶきを浴びせ掛けて驚かせることを思いつき,同時29分遊泳者の約15メートル沖側で左旋回の同ターンを実行した。
 17時29分半少し過ぎA受審人は,福岡タワーから301度360メートルの地点で,船首が南南西を向き,遊泳者を左舷船首方35メートルばかりに見るようになったとき,いったん行きあしを止めたものの,自船の西側を反時計回りに航走していた水上オートバイが遊泳者の少し沖側を航過する態勢をとったことから,これに後続して再度水しぶきを浴びせ掛けようと思い,同時29分54秒同地点を南南西の針路で発進し,速力を毎時35キロメートルにまで上げ,徐々に左旋回しながら,遊泳者の沖側至近に向かって進行した。
 17時29分59秒A受審人は,船首が東南東を向いて遊泳者を正船首少し右方8メートルに認めるようになったとき,左旋回のスピンターンをするため操縦ハンドルを左に切り,スロットルレバーを少し握り込んだところ,先航する水上オートバイの航走波に乗って船体が右側に横滑り状態となり,17時30分福岡タワーから297度330メートルの地点において,ブ号は,船首が東北東を向き,原速力よりやや減じた速力で,その右舷船尾が3人の遊泳者を直撃した。
 当時,天候は晴で風はほとんどなく,視界は良好で,潮候は高潮時であった。
 その結果,遊泳者Cが脳しんとう及び1週間の自宅療養を要する全身打撲の傷を,同D及び同Eが頭部打撲及び左膝打撲でいずれも全治3日間の傷をそれぞれ負った。
 なお,A受審人は,平成16年10月財団法人日本船舶教職員養成協会が実施した船舶職員及び小型船舶操縦者法第23条の31第1項の規定による再教育講習を受講した。

(原因)
 本件遊泳者負傷は,博多港内シーサイドももち海浜公園沖において,遊走を楽しむにあたり,飲酒運航の防止措置が不十分で,遊泳者の至近でスピンターンを行い,船体が横滑り状態となって遊泳者を直撃したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,博多港内シーサイドももち海浜公園沖において,遊走を楽しむにあたり,昼食時に飲酒した場合,危険操縦となるおそれがあったから,自らによる操縦を中止すべき注意義務があった。しかるに,同人は,少しぐらい飲んでいても大丈夫と思い,その後も自らによる操縦を中止しなかった職務上の過失により,飲酒運航となり,遊泳者の至近でスピンターンを行い,横滑り状態で進行して遊泳者を直撃する事態を招き,遊泳者Cに脳しんとう及び1週間の自宅療養を要する全身打撲の傷を,同D及び同Eに頭部打撲及び左膝打撲でいずれも全治3日間の傷をそれぞれ負わせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止すべきところ,国土交通大臣の指定する再教育講習を受講したことに徴し,同法第6 条の規定を適用して戒告する。





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