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 海難審判庁採決録 >  2005年度(平成17年度) >  乗揚事件一覧 >  事件





平成16年門審第130号
件名

漁船第二十二日昇丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年2月23日

審判庁区分
門司地方海難審判庁(織戸孝治)

理事官
島友二郎

受審人
A 職名:第二十二日昇丸船長 操縦免許:小型船舶操縦士

損害
船底に破口など,のち廃船

原因
居眠り運航防止措置不十分

裁決主文

 本件乗揚は,居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。
裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年8月21日07時30分
 志布志湾

2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十二日昇丸
総トン数 13トン
登録長 14.98メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120

3 事実の経過
 第二十二日昇丸(以下「日昇丸」という。)は,まき網漁業船団の灯船として同漁業に従事するFRP製漁船で,平成16年8月に一級,特殊及び特定の資格を担保する小型船舶操縦免許証の交付を受けたA受審人が1人で乗り組み,操業の目的で,船首0.5メートル船尾1.0メートルの喫水をもって,同月20日18時00分鹿児島県内之浦港を発し,同港東方7海里ばかりの漁場で操業の後,翌21日06時00分火埼灯台から095度(真方位,以下同じ。)6.5海里の地点を発進し,帰途に就いた。
 A受審人は,発進時,自動操舵により,針路を火埼に向く275度に定め,機関を半速力前進にかけ,4.3ノットの対地速力で,以後,操舵室後部の床上約70センチメートルの畳敷台の右舷側に腰を掛けて,同室の右舷側壁に体を寄り掛からせる姿勢で,見張りに当たりながら進行した。
 A受審人は,発進後,お盆休み明けの生活リズムの変化による睡眠不足のためか,又は,乗船して1年を過ぎて仕事に慣れたことによる気の緩みのためか眠気を感じるようになり,タバコを喫ったり背伸びをしたりしたことから,まさか居眠りに陥ることはないと思い,立ち上がって手動により操舵を行うなどの居眠り運航の防止措置をとることなく,前示の姿勢のまま見張りを行っていたところ,07時ごろ火埼灯台から094度2.2海里ばかりの地点に達したころ,居眠りに陥った。
 こうして,日昇丸は,内之浦港に向け転針がなされず,火埼に向首したまま進行し,07時30分火埼灯台から030度150メートルの地点において,原針路,原速力のまま乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風はほとんどなく,潮候は上げ潮の中央期であった。
 A受審人は,衝撃により目覚めて,乗り揚げたことを知り,事後の措置に当たった。
 乗揚の結果,船底に破口などを生じ,クレーン船により引き降ろされ,のち廃船とされた。

(原因)
 本件乗揚は,志布志湾において,操業ののち,内之浦港に帰航する際,居眠り運航の防止措置が不十分で,火埼に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,志布志湾において,操業ののち,単独で内之浦港に向け自動操舵により帰航中,眠気を催した場合,居眠り運航にならないよう,立ち上がって手動操舵を行うなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,タバコを喫ったり背伸びをしたりしたことから,まさか居眠りに陥ることはないと思い,居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により,居眠りに陥り,火埼に向首進行して乗揚を招き,船底に破口などを生じさせ,廃船を余儀なくせざるを得ない事態に至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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