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平成16年広審第116号
件名

押船新東明丸被押バージ新東明1号乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年1月28日

審判庁区分
広島地方海難審判庁(高橋昭雄)

理事官
蓮池 力

受審人
A 職名:新東明丸船長 海技免許:三級海技士(航海)

損害
新東明1号が船首船底外板に亀裂を伴った凹損

原因
操船不適切

裁決主文

 本件乗揚は,狭い水道を斜航する態勢の他船を避航する際,操船が適切に行われなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年8月15日22時15分
 瀬戸内海西部 山口県洲島

2 船舶の要目
船種船名 押船新東明丸 バージ新東明1号
総トン数 199トン 2,945トン
全長 28.25メートル 91.32メートル
機関の種類 ディーゼル機関  
出力 2,353キロワット  

3 事実の経過
 新東明丸は,鋼製押船で,A受審人ほか5人が乗り組み,船首3.20メートル船尾3.50メートルの喫水をもって,石灰石5,600トンを満載した船首喫水6.09メートル船尾喫水6.38メートルのバージ新東明1号を押航して,平成16年8月15日16時35分大分県津久見港を発し,山口県徳山下松港に向かった。
 ところで,当時津久見港と徳山下松港との間の石灰石輸送にあたり,その往航時の針路模様は,瀬戸内海西部周防灘を北上し,さらに山口県徳山湾南口にあたる岩島と洲島との幅約0.7海里の狭い水道(以下「徳山湾南口水道」という。)の南方約8海里沖の徳山航路第1号灯浮標付近から同水道に向けて北上を続けて,その後同水道から徳山湾内の徳山下松港徳山第1号灯浮標(以下,各灯浮標の冠称「徳山下松港徳山」を省略する。)及び第2号の各灯浮標に導かれ北東方に屈曲した航路に沿って入航するものであった。そして,その所要航海時間が片道約6時間を要する船橋当直は,3時間単独当直体制とし船長を含めた3人の輪番制で行われていた。
 A受審人は,出航操船を終えると自室に戻って休息を取るなどして次の船橋当直に備え,22時00分徳山湾南口水道の手前になる岩島灯台から176度(真方位,以下同じ。)2.2海里の地点で昇橋して単独当直に就いた。その後,引き継いだ針路350度で機関が全速力前進のまま10.0ノットの速力で自動操舵により同水道の右側に向かって北上を続けていたとき,第1号及び第2号灯浮標付近に南下船の左舷灯を認めた。
 ところが,22時11分少し過ぎA受審人は,岩島灯台から210度0.4海里の地点に達し,右舷船首13度0.7海里に徳山湾南口水道に向かって斜航する態勢で接近する前示南下船の左舷灯を認めるようになり,同船が同水道の左右いずれの側を南下してくるのか不確かであり,しかも同態勢のままでは水道内で同船を避航する状況であったが,同船がショートカットするように岩島寄りに左小回りして水道の東側寄りを南下してくるものと思い,余裕をもって水道の手前で減速または行き脚を止めるなどして同船の動向を確かめるなり或いはその通過を待つなりの操船を適切に行うことなく,間もなくそのまま北上して水道内で同船を右舷側に替わそうとして針路信号のつもりで短2回の点滅信号を行って左転を始めた。しかし,引き続き斜航態勢のまま接近する同船の動向が気になってレーダー見張りを行わないまま左転を続け,さらにその態勢から反転して避航しようとし,水道西側に位置する洲島に向かっていることに気付かないまま左回頭中,22時15分岩島灯台から260度1,350メートルにあたる洲島東岸に245度を向いた状態で乗り揚げた。
 当時,天候は晴で風はほとんどなく,潮候は下げ潮の初期であった。
 乗揚の結果,新東明1号は,船首船底外板に亀裂を伴った凹損を生じたが,自力離礁し,のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は,夜間,瀬戸内海西部徳山湾南口にあたる岩島と洲島との間の狭い水道に向けて北上中,湾内から水道に向かって斜航する態勢の南下船を避航する際,操船が不適切で,水道内で同船を右舷側に替わそうとして大きく左転し続け、水道西側に位置する洲島に向かって進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,瀬戸内海西部徳山湾南口にあたる岩島と洲島との間の狭い水道に向けて北上中,湾内から水道を斜航する態勢の南下船を避航する場合,同船が同水道で屈曲する航路の左右いずれの側に寄って航行するか不確かな状況であったから,余裕をもって水道の右側手前で減速または行き脚を止めるなどして同船の動向を確かめるなり或いはその通過を待つなりの操船を適切に行うべき注意義務があった。しかし,同人は,同南下船がショートカットするように岩島寄りに左小回りして水道の東側を航行してくるものと思い,水道の右側手前で減速または行き脚を止めるなどして南下船の動向を確かめるなり或いはその通過を待つなりの操船を適切に行わなかった職務上の過失により,水道内で同船を右舷側に替わそうとして大きく左転し続けて,水道西側に位置する洲島への乗揚を招き,新東明1号の船首船底外板に亀裂を伴った凹損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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