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平成16年横審第86号
件名

引船第三十一たけ丸乗揚事件(簡易)

事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成17年1月27日

審判庁区分
横浜地方海難審判庁(西田克史)

副理事官
河野 守

受審人
A 職名:第三十一たけ丸船長 海技免許:四級海技士(航海)

損害
船底外板に破口を伴う凹損及び推進器翼に曲損

原因
水路調査不十分

裁決主文

 本件乗揚は,水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
 受審人Aを戒告する。

裁決理由の要旨

(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成16年3月14日22時00分
 静岡県相良港沖合

2 船舶の要目
船種船名 引船第三十一たけ丸
総トン数 197.74トン
全長 30.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,912キロワット

3 事実の経過
 第三十一たけ丸(以下「たけ丸」という。)は,航行区域を限定沿海区域とする鋼製押船兼引船で,A受審人ほか3人が乗り組み,船舶を所有する会社の社員1人を同乗させ,宮城県石巻港での仕事を終えて基地に回航する目的で,船首2.8メートル船尾3.0メートルの喫水をもって,平成16年3月13日12時00分同港を発し,大阪港に向かった。
 A受審人は,14日11時00分相模灘で船橋当直に就き,次第に西風が強くなる時化(しけ)模様から,交替予定の15時以降も引き続き自らが同当直にあたり,17時半ごろ石廊埼南方沖合に至ったとき,風速10メートル以上に強まった西寄りの風と波高3メートルの波を船首方から受けるようになり,航行を続けることが困難と判断し,これまで昼夜合わせて2度入港したことがある静岡県御前崎港で荒天避泊することに決め,風浪の影響を少しでも避けるため大井川付近に向けて少し北寄りの針路で駿河湾を横断したのち,同湾西岸沿いを南下して同港に向かうこととし,機関の回転数を毎分450にかけ,9.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で西行した。
 ところで,静岡県相良港は,大井川やや南方の同県吉田漁港と御前崎港とのほぼ中間に位置する港で,その沖合には航行に危険な暗岩や洗岩などからなる岩礁域が存在し,相良港平田防波堤灯台から206度(真方位,以下同じ。)800メートルの沿岸を中心として半径約800メートルの円弧のうち東側半円形の範囲及び同灯台から170度1.6海里の地点を中心として愛鷹岩と称する水上岩を含む南北約400メートル東西約600メートルの範囲がそれぞれ岩礁域となっており,また,駿河湾西岸沿いには,11月から翌年4月にかけてわかめ養殖施設が設置されることから,十分に注意して航行する必要があった。
 A受審人は,神戸港内で引船業務に従事し,同54年6月現有免許を取得して船長職を執るようになり,平成3年以降は主に大阪港や瀬戸内海で引船を運航しており,駿河湾西岸の水路状況については不案内であったが,沿岸を0.5海里程度に離して航行すれば大丈夫と思い,同湾西岸沿いを南下するにあたり,荒天下の長時間の操船の疲れもあってか,備付けの海図第1075号を精査して水路調査を十分に行わなかったので,同海図に記載されていた相良港沖合の暗岩や洗岩等の存在に気付かないまま,御前崎港に向かうこととした。
 こうして,A受審人は,21時15分吉田漁港東方1海里沖合に達したとき,徐々に左転しながら南下を始め,21時25分遠江吉田港東防波堤灯台から210度1,600メートルの地点で,6海里レンジとしたレーダーにより距岸ほぼ0.5海里となるよう針路を225度に定め,引続き9.0ノットの速力で手動操舵により進行した。
 21時38分A受審人は,相良港平田防波堤灯台から046度1,750メートルの地点に達したとき,針路を修正して沿岸に沿わせるため208度に転じると同時に,そのころ前方に点在する灯火を認め,漁網などに設置された簡易標識灯の明かりと判断し,微速力に減じて3.0ノットの速力で続航した。
 転針後,A受審人は,相良港北部の岩礁域に向首接近する状況となったものの,依然として水路調査不十分で,暗岩や洗岩等の存在に気付かず,前方の明かりに留意し接近すれば替わすつもりで進行中,突然衝撃を感じ,22時00分たけ丸は,相良港平田防波堤灯台から152度660メートルの地点において,原針路,原速力のまま岩礁に乗り揚げた。
 当時,天候は曇で風力2の西風が吹き,潮候は上げ潮の末期であった。
 乗揚の結果,船底外板に破口を伴う凹損及び推進器翼に曲損を生じたが,翌15日04時10分自力離礁して御前崎港に入港し,のち修理された。

(原因)
 本件乗揚は,夜間,駿河湾西岸沿いを南下するにあたり,水路調査が不十分で,静岡県相良港沖合の岩礁域に向首進行したことによって発生したものである。
 
(受審人の所為)
 A受審人は,夜間,御前崎港で荒天避泊するため駿河湾を北寄りに横断したのち,同湾西岸沿いを南下する場合,駿河湾西岸の水路状況については不案内であったから,危険な岩礁域の有無を確かめるよう,備付けの海図第1075号を精査して水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,沿岸を0.5海里程度に離して航行すれば大丈夫と思い,水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により,同海図に記載されていた相良港沖合の暗岩や洗岩等の存在に気付かないまま,岩礁域に向首進行して乗揚を招き,船底外板に破口を伴う凹損及び推進器翼に曲損を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。





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