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海難審判庁裁決録(平成17年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




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平成16年仙審第22号
件名

漁業取締船からしま貨物船コレックスクンサン衝突事件
第二審請求者〔受審人 A,B〕

事件区分
衝突事件
言渡年月日
平成17年3月25日

審判庁区分
仙台地方海難審判庁(勝又三郎,原 清澄,内山欽郎)

理事官
西山烝一

受審人
A 職名:からしま船長 海技免許:三級海技士(航海)
B 職名:からしま一等航海士 海技免許:三級海技士(航海)
補佐人
C,D,E,F(A,B両受審人各選任)
指定海難関係人
G 職名:コレックスクンサン船長
H 職名:コレックスクンサン一等航海士

損害
からしま・・・左舷前部外板及び同水線下外板に破口,沈没、二等機関士が頭部挫創及び腰部打撲の負傷
コレックスクンサン・・・船首部及び球状船首の左舷側に擦過傷をともなう凹損など

原因
からしま・・・狭視界時の航法(信号,速力)不遵守
コレックスクンサン・・・狭視界時の航法(レーダー,速力)不遵守

主文

 本件衝突は,からしまが,視界制限状態における運航が適切でなかったことと,コレックスクンサンが,視界制限状態における運航が適切でなかったこととによって発生したものである。
 受審人Bの三級海技士(航海)の業務を1箇月15日停止する。
 受審人Aの三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 指定海難関係人Hに対し勧告する。
 指定海難関係人Gに対し勧告する。

理由

(海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成15年7月6日07時33分
 山口県角島北西方沖合
 (北緯34度32.2分 東経130度30.1分)

2 船舶の要目等
(1)要目
船種船名 漁業取締船からしま 貨物船コレックスクンサン
総トン数 499トン 4,044トン
全長 55.45メートル 98.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,029キロワット 2,160キロワット
(2)設備及び性能等
ア からしま
(ア)船体
 からしまは,平成元年4月に進水し,同13年12月に改造して上甲板下漁具庫に固定バラスト96.8トンを搭載した二層甲板型鋼製漁業取締船で,船橋前面が船首から25.6メートル後方に位置していた。
 船橋は喫水線上約5.0メートルにあって,中央にレピーターコンパスを備えた操舵スタンドを,同スタンド右方にカラー表示式GPSプロッターを,同スタンド左方には速力を表示しARPA機能を備えた1号及び2号テレビ型カラーレーダーを装備していた。
 ところで,ARPA機能は,目標の手動及び自動補足が可能で,目標の追尾を行い,自船と衝突のおそれがある目標に対して,赤色点滅するベクトルを表示して警報を発するようになっていた。
(イ)性能等
 本船は,全速力前進が機関回転数毎分390で約14.2ノットで,最大舵角時の旋回径が約139メートルで,漁業取締等の業務に従事する際には同回転数毎分330で約11.0ノットの速力であった。
イ コレックスクンサン
(ア)船体
 コレックスクンサン(以下「コ号」という。)は,平成7年6月に進水し,2機2軸の固定ピッチプロペラを備え,前部上甲板及びハッチカバー上にコンテナ積載装置を有するバルク積載兼用の船尾船橋型鋼製貨物船で,船首から75.0メートル後方に船橋前面が位置していた。
 喫水線上約13.5メートルの船橋内中央には,操舵スタンドを,それから順次右方に主機関制御用パネル及び1号テレビ型カラーレーダーを,左方に汽笛信号,発光信号,航海灯等の各スイッチを備えたパネル及び2号テレビ型カラーレーダーを配置していた。
(イ)性能等
 コ号は,全速力前進が主機回転数毎分750 のときに12.0ノットで,満載時の最短停止距離が613メートルで,航海速力が同回転数毎分720のときに10.5ノットの速力であった。

3 船橋当直体制等
(1)からしま
 A受審人は,漁業監督官から業務の指示を受けて,からしまの運航にあたり,平素,航海中の船橋当直を各航海士に任せていたものの,08時から19時まで在橋していた。
 また,船橋当直を00時から04時までと12時から16時までを二等航海士と甲板員2人,04時から08時までと16時から20時までをB受審人と甲板長,及び08時から12時までと20時から24時までを三等航海士と甲板員2人がそれぞれ行う3直制としていた。
(2)コ号
 G指定海難関係人は,船橋当直を00時から04時までと12時から16時までを二等航海士と甲板手,04時から08時までと16時から20時までをH指定海難関係人と甲板手,及び08時から12時までと20時から24時までを三等航海士と甲板長がそれぞれ行う3直制としていた。

4 事実の経過
 からしまは,A及びB両受審人ほか13人が乗り組み,漁業監督官1人を乗せ,漁業取締りの目的で,船首2.4メートル船尾4.4メートルの喫水をもって,平成15年7月3日09時00分福岡県博多港を発し,対馬南方海域に向かった。
 A受審人は,当該海域に到着したのち漁業取締りに従事していたところ,翌4日夕刻,漁業監督官が九州漁業調整事務所から,福岡県沖ノ島沖合での漁船と貨物船との衝突により,行方不明となった漁船乗組員の捜索にあたるよう電話で指示を受け,同監督官より衝突付近海域(以下「現場海域」という。)で同捜索に就くことを伝えられ,取締り業務を打ち切ったのち,沖ノ島北東方沖合に向けて発進した。
 7月5日未明A受審人は,現場海域に至り,早朝より漁業監督官とともに在橋して船橋当直者に指示を与えながら捜索を開始し,07時00分から機関回転数毎分330にかけて速力を上げ,その後夜間になったので漂泊することとし,漁業監督官と翌日の捜索を南北方向に行うことなどを打ち合せたのち,降橋して休息した。
 7月6日05時00分A受審人は,山口県角島北西方20.0海里付近で漁業監督官とともに昇橋し,機関を全速力前進にかけ,船橋当直中のB受審人及び甲板長を指揮し,北上しながら再び捜索を始め,06時00分針路を転じて西進し,06時20分角島灯台から325度(真方位,以下同じ。)29.5海里の地点で,針路を180度に定めて南下し,折からの北東流に抗してわずかに左方に圧流されながら,10.7ノットの対地速力(以下「速力」という。)として自動操舵で進行した。
 定針後,A受審人は,視界が霧により捜索開始時に比べて遮られだしたので,航行中の動力船が表示する灯火を点灯し,8海里レンジに設定した1号レーダー1台のみを作動させ,付近に多数の船舶がいてARPAの警報音が頻繁に鳴るので同音を止め,B受審人及び在橋者等と交互にレーダー監視をしながら捜索を続けた。
 07時00分A受審人は,朝食が準備されたことを知らされたので食堂に行くことにした際,視程が100メートルばかりに狭まって視界制限状態になっていたが,霧中信号を行うことも,安全な速力に減じることもせず,B受審人が三級海技士(航海)の免許を受有し,船長の経験もあったので任せても大丈夫と思い,自ら操船の指揮をとれるよう在橋することなく,同受審人と甲板長に船橋当直を任せ,漁業監督官及び通信長とともに降橋した。
 B受審人は,甲板長に朝食を摂るよう指示して降橋させ,07時10分角島灯台から312度22.8海里の地点に達したとき,レーダーで左舷船首12度7.9海里のところに,コ号の映像を初めて探知し,同映像のベクトルが赤色点滅して自船に向かっているのを認めたものの,このことをA受審人に報告しないまま,同時15分ごろ甲板長が昇橋してきたので,自らも朝食を摂ることとし,その際レーダー画面上にコ号が赤色ベクトルを点滅して自船に向かっていることを甲板長に伝え,同人を単独で在橋させて降橋した。
 07時20分ごろB受審人は,食事を終えて昇橋し,甲板長とともにレーダー監視にあたって南下し,同時27分少し過ぎレーダーでコ号の映像のベクトルが赤色点滅しながら左舷船首12度2.0海里のところになり,その後ベクトルがわずかに振れたのを認めた。
 07時29分少し過ぎB受審人は,角島灯台から305度20.6海里の地点に達したとき,コ号のレーダー映像が左舷船首12度1.3海里ばかりになり,その後同船と著しく接近することを避けることができない状況であることを知ったが,同船のベクトルの方向が振れていたことから,自ら操船して同船を替わせるものと思い,針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも,必要に応じて行きあしを停止することもなく続航した。
 からしまは,07時33分少し前甲板長が左舷船首至近にコ号のオレンジ色の船首部を視認したものの,B受審人がこのことに気付かないまま原針路,原速力で進行中,07時33分角島灯台から303度20.2海里の地点において,その左舷側前部にコ号の船首が前方から30度の角度で衝突した。
 当時,天候は霧で風はほとんどなく,視程は100メートルで,対馬海峡付近には海上濃霧警報が発表され,付近には約1.1ノットの北東流があった。
 A受審人は,食事を終えて自室に戻り,コ号の吹鳴する汽笛を聞いて自室の扉付近まで移動したとき,衝撃を感じて衝突したことを知り,昇橋して機関を操作するなどの事後の措置にあたった。
 また,コ号は,G及びH両指定海難関係人ほか11人が乗り組み,ホットロールドスチールコイル189個4,481.561トンを積載し,船首5.12メートル船尾6.08メートルの喫水をもって,同月5日10時40分岡山県水島港を発し,大韓民国浦項(ポハン)に向かった。
 発航後,G指定海難関係人は,関門海峡を経由することとして瀬戸内海を西進し,翌6日未明同海峡を通峡し,福岡県蓋井島を航過してから北上するにあたり,船橋当直者に対して視界制限時の船内業務指針を定め,安全運航教育訓練を行っており,H指定海難関係人が対馬海峡付近の航海を十分に経験しているので任せても大丈夫と考え,航行海域には通航船や漁船が輻輳していることを知っていたものの,視界が1マイルに制限された際に船長に報告することなどを夜間命令簿に記載しないまま,船橋当直中の二等航海士に,「蓋井島を右舷側に見たところで転針し,コースラインに沿って浦項に向けること。気を付けて船橋当直にあたること。」を同指定海難関係人に伝えるよう口頭で指示し,03時40分六連島を左舷側に航過したころ,降橋して休息した。
 03時45分H指定海難関係人は,二等航海士から船橋当直を引き継ぎ,航行中の動力船が表示する灯火を点灯し,漁船が多かったので甲板手を手動操舵に付け,06時00分レーダーを6海里レンジのオフセンターとして監視していたところ,視程が急速に狭まって200メートルになり,視界制限状態になったことを認めたが,この付近の航海を十分に経験していたので自ら対処できると考え,G指定海難関係人に視界制限状態になったことを報告せず,安全な速力に減じないまま航行し,07時00分角島灯台から292度15.5海里の地点で,針路を335度に定め,機関回転数毎分720の全速力前進にかけ,10.5ノットの速力で進行した。
 07時16分H指定海難関係人は,角島灯台から298度17.6海里の地点に達したとき,右舷船首13度6.0海里のところにからしまが存在し,同船が南下していたものの,多数の漁船と漂泊船のレーダー映像を認めてそれらに気を取られ,からしまのレーダー映像に気付かないまま,レンジを3海里に切り換え,霧中信号を行いながら続航した。
 07時29分少し過ぎH指定海難関係人は,角島灯台から302度19.6海里の地点に達したとき,からしまのレーダー映像を右舷船首13度1.3海里のところに認めることができ,その後同船と著しく接近することを避けることができない状況となったが,VHFで他船と交信を続けていたので,レーダーによる見張りが不十分となり,針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも,必要に応じて行きあしを停止することもしないまま進行した。
 しばらくして,H指定海難関係人は,右舷船首前方に多数の漁船のレーダー映像を認めたので左舵を令して航行したのち,舵中央を指示し,07時33分少し前自船に向首して接近しているからしまに気付き,霧中信号を連吹しながら続航中,コ号は,330度を向首していたとき,機関を操作したものの,原速力のまま,前示のとおり衝突した。
 G指定海難関係人は,連吹された汽笛で目覚め,着替えを行って昇橋中,衝撃で衝突したことを知り,レーダーで周囲の状況を確認するなどして事後の措置にあたった。
 衝突の結果,からしまは,左舷前部外板及び同水線下外板に破口を生じて浸水し,総員が救命艇で退船して漂流したのち,7月8日01時03分角島北北西方43海里ばかりの地点で沈没し,コ号は,船首部及び球状船首の左舷側に擦過傷をともなう凹損を生じ,左舷錨鎖を切断して左舷錨を失った。また,からしまの乗組員は僚船の海鳳丸に救助され,二等機関士が頭部挫創及び腰部打撲を負った。

(航法の適用)
 本件は,霧で視程が100メートルに制限された角島北西方沖合において,行方不明者の捜索に従事して南下中のからしまと,関門海峡を通峡して浦項に向けて北上中のコ号とが衝突したものである。
1 衝突地点付近は,両船が視界制限状態にある水域またはその付近を航行している船舶であって,互いに他の船舶の視野の内にない状況だったので,海上衝突予防法(以下「予防法」という。)第19条が適用される。
2 船舶は,予防法第5条(見張り),同第6条(安全な速力),同第7条(衝突のおそれ)及び同第8条(衝突を避けるための動作)のあらゆる視界の状態における船舶について適用される各航法規定を遵守し,同第35条(視界制限状態における音響信号)をそのときの状況を考慮して使用することが求められる。

(本件発生に至る事由)
1 からしま
(1)B受審人が,霧中信号を行わず,安全な速力に減じて航行しなかったこと
(2)A受審人が,視界制限状態となった際,在橋して操船の指揮をとらなかったこと
(3)B受審人が,コ号と衝突するおそれのあることに気付いた際,船長に報告しなかったこと
(4)B受審人が,コ号と著しく接近することを避けることができない状況下,針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも,必要に応じて行きあしを停止することもしなかったこと

2 コ号
(1)H指定海難関係人が,視界制限状態になったことを船長に報告しなかったこと
(2)H指定海難関係人が,安全な速力に減じて航行しなかったこと
(3)H指定海難関係人が,レーダーによる見張りを十分に行わなかったこと
(4)H指定海難関係人が,からしまと著しく接近することを避けることができない状況となったことに気付かなかったこと

(原因の考察)
 本件は,からしまが,霧中信号を行い,コ号と著しく接近することを避けることができない状況となったのを認めたとき,針路を保つことができる最小限度の速力に減じ,必要に応じて行きあしを停止していたなら,発生していなかったものと認める。
 したがって,B受審人が,霧中信号を行わず,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,必要に応じて行きあしを停止しなかったこと,そして,コ号と著しく接近することを避けることができない状況となったのを認めたとき船長に報告しなかったことは,本件発生の原因となる。
 また,A受審人が在橋していたなら,先に述べた適切な措置がとれていたものと推定できるので,自ら指揮をとるか,B受審人に報告を指示するなどの措置をとらなかったことは,本件発生の原因となる。
 安全な速力に減じて航行しなかったことは,本件発生に至る過程で関与した事実であるが,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これは海難防止の観点から是正されるべきである。
 他方,コ号が,レーダーによる見張りを十分に行い,からしまと著しく接近することを避けることができない状況となったとき,針路を保つことができる最小限度の速力に減じ,必要に応じて行きあしを停止していたなら,本件を回避することができたものと認める。
 したがって,H指定海難関係人が,レーダーによる見張りを十分に行わず,からしまと著しく接近することを避けることができない状況となったとき,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,必要に応じて行きあしを停止しなかったことは,本件発生の原因となる。
 また,G指定海難関係人が在橋していたなら,先に述べた適切な措置がとれていたものと推定できるので,H指定海難関係人に対して視界が制限されたときの報告を厳重に指示しなかったことは,本件発生の原因となる。
 安全な速力に減じて航行しなかったことは,本件発生に至る過程で関与した事実であるが,本件と相当な因果関係があるとは認められない。しかしながら,これは海難防止の観点から是正されるべきである。

(主張に対する判断)
 からしま側は,本件衝突がからしまが停止していたところに,コ号が安全な速力に減じて進行することなく,不用意に左転して進み,衝突直前に右転した不当運航によって発生したと主張するのでこれを検討する。
 本件では,からしまが針路を180度10.7ノットで,コ号が335度10.5ノットで航行していたところ,07時29分少し過ぎ約1.3海里となったとき,両船が著しく接近することを避けることができない状況となったのであり,このとき,両船は,針路を保つことができる最小限度の速力に減じ,必要に応じて行きあしを停止すべきであったのである。
 補佐人は,衝突直前にコ号が330度に転針したことを非難するが,霧中航法においては,こうした直前の行動を行為規範の対象として評価することはできず,また,本件においては,コ号が335度の針路を保持していたとしても物理的に衝突を回避できる状況になかったのである。
 したがって,いずれにおいても,その主張をとることはできない。

(海難の原因)
 本件衝突は,霧のため視界制限状態となった角島北西方沖合において,南下するからしまが,霧中信号を行わず,レーダーにより左舷船首方に探知したコ号と著しく接近することを避けることができない状況となった際,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを停止しなかったことと,北上するコ号が,レーダーによる見張り不十分で,からしまと著しく接近することを避けることができない状況となった際,針路を保つことができる最小限度の速力に減じず,また,必要に応じて行きあしを停止しなかったこととによって発生したものである。
 からしまの運航が適切でなかったのは,船長が操船の指揮をとらなかったことと,船橋当直者がコ号と衝突のおそれのあることに気付いた際,船長に報告しなかったこととによるものである。
 コ号の運航が適切でなかったのは,船長が視界制限状態となった際,船橋当直者に報告するよう指示しなかったことと,船橋当直者が視界制限状態になったことを船長に報告しなかったこととによるものである。
 
(受審人等の所為)
1 懲戒
 B受審人は,霧のため視界制限状態となった角島北西方沖合において,船長が降橋した状況下,レーダーでコ号の映像のベクトルが赤色点滅し,その後同船と著しく接近することを避けることができない状況であることを知った場合,速やかに船長に報告したうえ,自ら針路を保つことができる最小限度の速力に減じ,必要に応じて行きあしを停止すべき注意義務があった。しかるに,同受審人は,自ら操船して同船を替わせるものと思い,船長に報告せず,針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも,必要に応じて行きあしを停止することもしなかった職務上の過失により,原針路,原速力のまま進行して同船と衝突し,からしまの左舷前部外板及び同水線下外板に破口を生じて浸水させ,漂流を続けたのち沈没を招き,コ号の船首部及び球状船首の左舷側に擦過傷をともなう凹損を生じさせて左舷錨鎖の切断と左舷錨を喪失させ,からしまの二等機関士に頭部挫創等を負わせるに至った。
 以上のB受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第2号を適用して同人の三級海技士(航海)の業務を1箇月15日停止する。
 A受審人は,角島北西方沖合において,行方不明となった漁船乗組員の捜索中,霧のため視界制限状態になった場合,現場海域には多数の船舶がいて捜索に従事していたうえ,同海域が船舶通航の輻輳するところであったから,自ら操船の指揮をとれるよう,在橋すべき注意義務があった。しかるに,同受審人は,船橋当直者が三級海技士(航海)の免許を受有し,船長の経験もあったので任せても大丈夫と思い,在橋しなかった職務上の過失により,コ号と著しく接近することを避けることができない状況となった際,針路を保つことができる最小限度の速力に減じることも,必要に応じて行きあしを停止することもできずに進行して同船との衝突を生じるに至った。
 以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第4条第2項の規定により,同法第5条第1項第2号を適用して同人の三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

2 勧告
 H指定海難関係人が,角島北西方沖合において,浦項に向けて船橋当直中,霧のため視界制限状態になった際,その旨を船長に報告しなかったことと,レーダーによる見張りを十分に行わなかったことは本件発生の原因となる。
 H指定海難関係人に対しては,海難審判法第4条第3項の規定により勧告する。
 G指定海難関係人が,角島北西方沖合において,浦項に向けて北上中,霧のため視界制限状態になった際,その旨を船長に報告するよう指示しなかったことは本件発生の原因となる。
 G指定海難関係人に対しては,海難審判法第4条第3項の規定により勧告する。

 よって主文のとおり裁決する。


参考図1
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参考図2
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