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《第二章》
学齢期
相談のポイント
・担任とのコミュニケーションのとり方
 
・同年齢の子ども間での問題
 
・支援者(地域の理解者)の獲得
 
・養護学校・特殊学校・通常学級の教育の特色
特別支援教育〜個別支援計画〜
 
掲載されていると便利な情報
養護学校・特殊学級設置校一覧
 
高校・養護学校高等部・技能訓練校等専門学校一覧
 
学校教育について知っておくこと
 学校教育は今大きな変革期にあります。特別支援教育という新しい枠組みは、学習障害、AD/HD、高機能自閉症などをもつ子どもたちについて、通常の学級において特別な支援を受けることができるということを示しています。
 教育は学校や先生たちだけが行うものではありません。ひとりひとりの子どもにあった教育内容や指導方法は、家庭と学校とが共に情報交換し、共通理解し、意見交換していく中で初めて効果を発揮します。ここでは学校教育について保護者が知っておくことについて考えてみたいと思います。
就学・どの場で学ぶか
 現時点では就学の進路は大まかに、小学校通常学級、小学校通常学級+通級指導教室、特別支援学級、養護学校に分かれます。進路については、まず保護者は就学先の情報を集めることになりますが、必ず自分の目で見に行くということです。見学は学校に電話をすれば教頭先生が対応してくださるところが多いようです。最終的には家族の中で話し合いをして決めていくのですから、ご両親や複数で見学に行かれるのがよいと思います。近くの学校であれば園の先生にも一緒に行って頂いて就学前の課題を一緒に考えていってもらうのもよいでしょう。噂だけで判断しないでしっかり自分の目で確認しましょう。また見学は、自分の子どもがその授業や集団に入った場合、どんな形で入れるかイメージするようにしましょう。担任の先生だけでなく校長先生、教頭先生とも話をしましょう。学校側の特別なニーズを持つ子どもたちに対する考え方を知っておく機会になります。自分の子どもの現在の状態や教育的ニーズをできるだけ具体的に伝えましょう。
 具体的に伝えていくために私がお勧めする方法は表のような「発達支援ニーズリスト」を作ってもらうことです。園の先生たちに協力してもらい、朝の登園から降園までの間にどのような支援が必要か、現時点の様子をリストアップしていきます。保護者の方が一日付き合って記録すれば作成できるはずです。これによって、保護者と園の先生が現時点でのお子さんの発達や必要な支援について共通理解を得ることもできます。
 最終的な進路決定は当事者の判断です。専門家といえども子どもの未来がわかるわけではありません。子どもだけをみても受け入れ側の学校の体制までつかめないと判断できません。ですから、ぜひ実際にご自分の目で見てベターな選択だと思えるものを考えていきましょう。専門家の意見はあくまで参考です。様々な意見をふまえて家族の中で話し合ってみてください。上の学年にきょうだいがいれば、是非いろいろな話をしてみてください。お互いに理解を深めることがよりよい判断につながるはずです。どんな子どもも成長し、発達する存在です。進路決定し、就学したとしても、毎年その子にあった見直しをしていきましょう。柔軟性を持たせておくことは必要なことです。
 
表1 発達支援ニーズリストの例
時間 活動 支援内容
800 登園 連絡帳を出すように個別の声かけが必要。
出さずに園庭に出てしまう。
830 自由遊び 滑り台の上から一輪車を落とす遊びにこだわっているので、開始する前に別な遊びに誘う
随時 トイレ 水遊びを始めて帰ってこないときがあるが事前に約束をすればOK
 
学校に入ったら
 
・個別の指導計画、個別の教育支援計画
 養護学校、養護学級に在籍しているお子さんの場合には、担任の先生や校内委員会は、保護者と連携しながら「個別の指導計画」をつくることが義務づけられています(通常学級在籍の場合も作成が推奨されています)。個別の指導計画には子どもの指導目標を具体的に示し、どのように指導するかとその評価方法が記されています。書式は学校や担任の先生によって様々です。積極的に見せてもらえる場合もありますが言わないと見せてもらえない学校もあるようです。ぜひ見せてもらい家庭と学校での指導目標を共通理解し、共通化するようにしましょう。個別の指導計画を基に指導して欲しいことも一緒に考えていくようにしましょう。
 個別の教育支援計画は、乳幼児期から学校卒業後まで一貫した長期的な計画を策定しようとするものです。こちらはまだ作成しているところは少ないですが、平成19年までにはすべて策定していくようになる予定です。
・特別支援教育コーディネーター
 平成19年度までにはすべての小・中・養護学校に特別支援教育コーディネーターがおかれます。これは校内の先生のどなたかが行う役割です。校内の関係者や医療、福祉等の関係機関との連絡調整、保護者との関係づくりを行うものです。担任の先生と同様いろいろな相談にのって頂けるはずです。スクールカウンセラーが入っている学校もあります。これは外部の臨床心理に関する専門家が週に何日か来校し勤務するものです。保護者からの相談も受け付けてもらえますが自閉症に対する専門性は個人差があります。
・校内委員会
 兵庫県ではすでにほとんどの小・中・養護学校で校内委員会が作られています。校内委員会では一人一人の子どもの指導や支援のあり方について話し合われます。場合によっては保護者が参加した方が良い場合もあります。専門家を交えて行うこともできます。
・教育委員会
 教育委員会の中にも相談できる部門があります。各市町によって異なりますから事前に調べておきましょう。また県の教育委員会は巡回教育相談を行っていますし、市や町のレベルで行っているところもあります。
・養護学校
 養護学校にも地域の教育相談に応じています。近くの養護学校に問い合わせてみましょう。
・親の会やNPO
 親の会は様々な学習会や相談会を行ったり本人活動の場を提供したりしています。行政に働きかけていく場合も親の会は重要な役割を果たします。まずどこかの会に入会し、情報を集めていくのもよいでしょう。自分にあった会を選ぶのがコツです。NPOも子育てに関する様々なサービスを提供しています。
 
<学齢期参考資料>
1. 小学校の特殊学級の1日
 ここでは小学校の特殊学級での1日を、ある学校を例に挙げて紹介します。ひとくちに1日と言っても、小学校では低学年(1・2年)・中学年(3・4年)・高学年(5・6年)で時間割の内容が違うところもあり、特に下校時刻の違いや専科の授業の有無など、学年が変わるとその様子も変わってきます。
 そこで、まずは1週間の活動内容を見てみましょう。
 
*交流と書いてあるのは、交流学級での活動です。
*交流学級での教科は、ひとりひとり違ってきます。
*「朝」は朝の会までの活動時間・朝の会。「終」は終わりの会。
 
 このように、交流学級での学習と特別支援学級での学習と個別での学習とを組み合わせて、そのお子さんに合った時間割を編成していきます。
 
それでは、学校での生活を細かくみていきましょう。
 
1)登校
 集団登校で友達と一緒に登校する子どもや保護者の付き添いで登校する子どもなど、そのお子さんに合わせて登校スタイルを決めていきます。
 直接交流学級へ行き、荷物を置きます。また、登校する時間もお子さんに合わせて、ゆっくり遊ぶ時間が持てるように登校したり、朝の活動ぎりぎりに合わせて登校したりします。
2)朝の会
 交流学級で行います。日番などの役割を果たした後、特殊学級に集まってひとりひとりの健康観察や予定の確認、日記や連絡帳の披露等をします。
3)交流の時間
 交流の時間は交流学級や学年での活動になります。その教科については、その子どもの実態に合わせて決めていきます。低学年では、生活・図工・音楽・体育・学活。中学年では、総合・図工・音楽・体育・学活。高学年では、総合・図工・音楽・家庭・体育・学活などがよく交流の教科となります。もちろん、それ以外の理科や社会などもなることもあります。
 1人で活動することが難しい場合は、教師も一緒に活動します。
4)個別指導の時間
 個別指導では、基本的に子どもと教師が1対1で学習をします。教科については、国語・算数を行ないます。1時間の中でする課題は、ひとりひとりに合わせた課題を担当の教師が考え、教材を捜したり、作成したりもします、
 内容としては、マッチングやなぞり書き、発声の練習、数を数えたり、お金の学習をしたり、そのお子さんに合わせた学習をします。
5)休み時間
 業間などの休み時間は、基本的に自分の遊びたい所で遊びたいようにして遊びます。遊びを広げるために、いろいろな遊びに誘うこともあります。
6)給食
 給食は交流学級で食べます。給食当番なども一緒にします。
7)終わりの会・下校
 終わりの会は交流学級で行い、朝の会同様日番などの役割を果たします。下校は、あいさつをした後、友達と一緒にそのまま下校したり、途中まで友だちと帰って途中からは保護者も一緒に帰ったり、学校に保護者が迎えに来たりします。
 
*その他
 連絡帳などを使い、一日の様子をお知らせしたり、出会ったときにお話したりすることで連携をとりながら、日々活動ができるようにしています。


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