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船舶電気装備技術講座 〔基礎理論編〕 (GMDSS)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導等
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


6・6 SARTによる位置特定(ホーミング)の基礎
6・6・1 SARTの動作原理
 SARTは、GMDSSの機能の中で生存艇(救命艇及び救命いかだ)の発見と位置特定のための主要な手段であり、救助船が遭難者に近づく(ホーミング)ための重要な手段を提供する。
 SARTは9GHzの周波数帯の船舶用又は航空機用のレーダー電波を受信すると、応答信号を打ち返して、捜索船のレーダーPPI画面に一連の信号映像を表す。この場合船用レーダーは、全く改造を必要としないという利点がある。
 
図6・14 SART信号が表われる原理解説図
(拡大画面:51KB)
 
 SARTは生存艇に恒久的に搭載しておくこともできるし、膨脹型救命いかだに持込んで、その上に取り付けることもできる。
 SARTは、手動でもあるいは水上に浮いたときに自動的にでも、待受状態にすることができる。待受状態になっていれば、その後救助船のレーダーのパルス電波を受信したときに応答して、周波数が鋸歯状に変化する形のマイクロ波電波を発生し、この電波は呼び掛けたレーダーに帰って、救助船のレーダーの映像面上に約12個の一列に並んだ輝点となって信号映像を表す。この輝点はSARTの位置を始点として、レーダー映像面の外周方向に、約8海里の長さの点列となって表示される。
 この独特の信号は、容易に見分けることができ、救助船は生存者に近づいて救助することができる。
 図6・14は、レーダー映像面にSART信号を発生するメカニズムを解説した図であり、写真6・2は、映像面に表示されたSART信号の一例を示している。
 
6・6・2 SART信号
(1)SART信号の受信強度
 図6・15はSART信号の受信強度の測定の一例であり、レーダー視認距離は船が遠ざかるときは8.0海里、近づくときは9海里であった。この図の中に描かれた実線の曲線は理論的計算値であり、近距離のSART信号強度は計算値より低いが、遠距離ではよく合致しており、計算によって種々の条件に対する予測が可能であることも実証されている。
 
図6・15 SART信号の受信強度測定の一例
 
(2)航空機レーダーによる視認距離
 海上保安庁の救難用航空機レーダーを捜索モードにした場合、そのレーダー視認距離は高度500ftでは20.2海里で、高度3000ftでは、27.3海里であった。またレーダーを気象モードとした場合は、SART信号は視認できなかったので、民間航空機の通常航空時の気象モード・レーダーには妨害を与えないことが実証されている。
 
写真6・2 レーダー映像面上のSART信号
昭和61年11月14日相模湾SART探知実験時の写真
海上保安庁巡視船「のじま」にて撮影
 
写真6・3 SARTに近づいた時の映像
昭和61年11月14日相模湾SART探知実験時の写真
海上保安庁巡視船「のじま」にて撮影
 
(3)捜索船がレーダーでSARTにホーミングするには、まずレーダーのレンジを12海里以上にして捜索するのがよい。これは前述のようにSART信号は約8海里の点列として表れ、そのレーダー視認距離も約10海里であることから理解される。
 そしてSART信号を発見したならば、その点列の自船に近い方の端点に向かって行き、点列が正横方向に向いたならば、SARTの横に来たことを知り、点列が後ろの方向になったならば、SARTを行き過ぎたことが分かる。このようにして徐々に近づくべきである。
 
写真6・4 SARTに近づきゲイン調節した映像
昭和61年11月14日相模湾SART探知実験時の写真
海上保安庁巡視船「のじま」にて撮影
 
 SARTに近づくと、SART信号が強くなり、自船のレーダーのサイドロープで点列は多重の弧状となり、更に近づくと写真6・3のような多重の同心円となる。しかし、このような場合はゲインを適当に調節すれば、写真6・4のように再び点列となり、SART信号をはっきり識別することができる。







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