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船舶電気装備技術講座 〔船舶自動識別装置等設置編〕 (レーダー)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導等
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


第4章 航海情報記録装置(VDR)
4・1 機器概要及び性能
4・1・1 概要
 船舶の海難事故後の原因を調査する補助装置として、船舶搭載用の航海情報記録装置(VDR:Voyage Data Recorder以下VDRという。)の発想はかなり昔から着目されていた。国際的な標準として話題に取り上げられるようになったのは、1969年後半から1980年にかけて大型ばら積船の全損海難事故が相次いで起こり、これを契機に、事故原因の探求のために航海中の船体のストレスに関する監視、計測・記録の必要性が論議され、1988年頃より船級協会、船社、製造業者等が独自の搭載実験・実績結果を発表し国際的な実用化の検討が始められたが、これらの問題は予防対策が打てたとしてVDRの搭載義務化の計画がなくなった経緯がある。
 本書で取り上げるVDRは、上記のような過去の経緯を踏まえて、1993年頃から、人為的過誤による海難の原因の調査と、今後の防止対策の目的で、操船に係わるデータを記録に残す要求が生まれて検討されてきたもので、SOLAS条約で2002年7月から段階的に一部の船種に搭載を義務付けることになったIMOの性能基準IMO A.861(20)で定義される製品で、IECの国際規格(IEC61996)に準拠する製品について言及するものである。
 VDRは、各種船内情報源に対応したインターフェイスと信号変換器を含むデータ処理装置及び最終記録媒体を含む保護カプセルから構成される。また、船舶への装備義務の対象ではないが、VDRと組合せのデータ再生装置が要求される。
 
4・1・2 性能要件
(1)本体
 本体は、データ収録の主プロセッサユニット(主演算装置)に相当するもので、センサー情報を取り込むための端子盤、入力インターフェースユニット、信号変換器、出力インターフェースユニットを含む船内常設の装置である。
 いかなる場合でも、たとえVDRが異常になったとしても、VDRと接続している、その船の機器の動作に性能低下を招くような影響を及ぼさないこと。
 各情報源との配線は、入力インターフェースユニットあるいは主プロセッサユニットへの単独配線が主体であるが、データをまとめる総合装置(IBSなど)が設置される場合、その内部でデータ信号の統合化を行った後、シリアル伝送、あるいは、ネットワーク伝送を行うことも有り得る。
 データ処理は規定される精度の信号変換処理を行い、記録するデータは改ざんできないこと。
 本体は、入力されるデータの選択、データそのもの、あるいは既に記録されたデータを故意に変更できないように設計されていること。
 データあるいは記録の完全性を妨げるいかなる試みについても記録されなければならない。
 VDR本体は、専用の予備電源装置を持ち、外部電源喪失時に船橋音響を2時間の間記録し続けることとなっている。この2時間を経過した後、すべての記録動作は自動的に終了する。外部電源停止時に警報を発し、予備電源の消費を節約するために警報音は2分後に自動消音するとしている。なお、一時的な停電の場合、外部電源が回復した後1分以内に通常の作動を再開することになっている。
 
(2)保護カプセル(最終記録媒体)
 特に取り上げるべき内容としては、カプセルで保護された記憶媒体に関しての耐火最大温度と持続時間及び水深水圧の値が、浮揚型と船体固定型の双方に課せられることである。摂氏260度10時間、摂氏1100度1時間の耐加熱性と、水深6000m相当の水圧に耐える材質・構造で設計されたものであること。
 事故後カプセルの存在位置を探査するため、水中音響ビーコンを備え、浮揚型カプセルにはさらに無線送信機と発光機能を備えること。この水中音響ビーコンは25kHz〜50kHzの周波数帯で、内部電池により30日間以上作動すること。無線発信機は、GMDSSのEPIRB相当のもので、光信号とともに、内部電池で7日以上作動すること。
 また、無線機の耐火温度条件は、GMDSS無線設備など一般の航海・通信機器の環境試験条件で規定されているが、カプセルの耐火条件より低い場合、無線機の機能が不能のまま海面を浮遊することとなり、この状態では探索はできないので、自動離脱機構は認められていない。
 いずれの型も、水中ロボットで取り外し作業ができるようにアイボルト又はハンドルをつけること。
 カプセルには外側の見え易いところに
「VOYAGE DATA RECORDER - DO NOT OPEN - REPORT TO AUTHORITIES」
(航海情報記録装置−開放禁止−所轄官庁に報告せよ)
とオレンジ色の発光塗料で記載のこと。また、最終記録媒体は記録停止後、装置の製造者が指定する動作及び保存条件下で少なくとも2年間記録されたデータを保存すること。
 
(3)再生装置
 蓄積されたデータを、カプセルを開放することなく、再生できる手段を持つこと。
 データを再生させるための再生装置は記録に使用した最終記録媒体と記録時のフォーマットに対応したもので、表示又は情報提供ができるハードウエアとソフトウエアを備える。なお、再生装置は船内に装備することを義務付けられていない。また、VDRの型式検定の対象ともなっていない。
 
(4)記録すべきデータ
 記録すべきデータは、航海中の運航データ及びVDRの構成、接続されるセンサーを明確にする船舶固有のデータである。
 運航データは規定による短時間の中断又は終了以外は、自動的、かつ、継続的に記録しなければならない。また、逐次更新される過去12時間のデータが記憶され、これより古いデータは新しいデータによって上書きされ、古いものから順次消去される。
 船舶固有のデータは、システム構成及び入力信号機器の識別で、VDRの装備時に最終記録媒体に書込み、恒久的に最終記録媒体に記憶し、構成等に変更があった場合は正式に認められた人以外には変更できないことになっている。
(A)運航データ
(a)日付と時刻
 日付と時刻は協定世界時(UTC)を基準として、もし可能であれば船外(例えば測位装置又は無線時刻信号)から得ること。あるいは、少なくとも毎時1回の船内時計から時刻信号を取り込むこと。記録はどの信号源を使用したかを示すこと。
 記録方法は、すべての記録データ項目のタイミングを、詳細な事故の履歴を十分再構築できるように1秒以内の精度で結果の再現ができること。
 相対的なタイミングを確実に0.1秒以内の分解能で決定するために、0.05秒の分解能をもつVDRのシステム時計から得られる時間目盛りで、すべてのデータを記録すること。このシステム時計のズレは1時間に1秒を超えてはならない。
(b)船の位置
 緯度と経度及び使われた測地系は、指定された電子測位装置から、あるいは、もし利用可能であるならば、INS(Integrated Navigation System)から得られること。
 記録は、位置信号の同一性と信号源の状態を再現時に確認できるものであること。船位は、船上で可能な限り、緯度経度の0.0001分までの値で、記録されること。
(c)速力
 船速距離計より取り出された、対水−対地のどちらかであるかの情報を含み、対水速力、あるいは対地速力(可能であれば、前後方向と同様に横軸方向)を記録すること。可能であれば、0.1ノットまでの分解能で記録されること。
(d)船首方位
 指定された船のコンパスに指示されている値。船の方位は、船上で可能な限り、0.1度までの分解能で記録されること。
(e)船橋音響
 船橋での、1台又は複数のマイクロフォンの位置は、指揮する場所(Conning stations)、レーダー表示器、海図机等の船橋内の作業場所で、会話が十分に記録されると思われる近くの位置に置かれること。
 実行可能な限り、マイクロフォンの位置は、インターフォン、船内指令装置及び船橋での可聴警報(船橋装備品)の入出力を捉える所であること。
 すべてのワークステーションにおける音声・音響信号は連続的に記録されること。
 オプションとして、記録された情報の再現で分析される音声・音響信号がどの作業所からか、収録源が識別される手段があってもよい。
(f)通信音声
 操船に関連するVHF通信は、船橋音響から独立して記録されること。
 記録は、送信及び受信の両方を含むこと。そして装備時に指定された固定VHFに直接接続され連続して記録すること。
(g)レーダーデータ
 レーダーデータは、船のレーダー設備の1つから、記録している時点に、このレーダーの主表示器に、実際に表示されている、電子信号情報を含むすべての情報を記録すること。
 これは、すべての距離環又はマーカ、方位マーカ、電子プロットシンボル、レーダー図表、選択されたECDISのSENC情報の一部、又は他の電子海図あるいは図表、航路計画、航海データ、航海警報、及びレーダー画像上で見られる状態を示すデータを含むこと。
 記録方法は、再現上、記録している時に見られるすべてのレーダー画像の、正確な複製を表示することが可能であること。データ収集は15秒毎に1回行うこと。
(h)音響測深機データ
 キール下水深を、可能であれば0.1mまでの分解能の深さにて記録すること。
 可能であれば、現在表示されている深さのスケール及びその他の状態が記録されること。
(i)主警報
 これは、IMOで義務付けられた船橋におけるすべての警報の状態を含むこと。
 IMOで義務付けられたすべての警報状態は、船橋音響、及び実際的に可能な場合はデータパラメータとして記録されること。
(j)操舵命令と応答
 舵の命令舵角及び実舵角の両方が、船上において可能で、かつ許容できる場合は、1度までの分解能で記録されること。
 方位制御(ヘディング・コントロールシステム:HCS)又は航路保持制御装置(トラック・コントロールシステム)が装備されている場合には、針路又は航路の設定と状態を記録すること。
(k)主機操作命令と応答
 これは、すべてのエンジンテレグラフの位置、あるいは、直接主機/プロペラ制御の位置、主軸の回転数(又は同等)及び、もし装備されているならば前進、後進の指示も含む応答指示を含むこと。船首、船尾スラスタも、もし装備されていれば、含むこと。
 回転数は、1min-1(r.P.m)、プロペラピッチは1度までの分解能で記録されること。
(l)船体開口部の状態
 これは、IMOで義務的に船橋で表示されることを要求されている状態に関する情報の表示をすべて含むこと。
(m)水密扉及び防火扉の状態
 これは、IMOで義務的に船橋で表示されることを要求されている状態に関する情報の表示をすべて含むこと。
(n)加速及び船体応力
 IMOで、船体ストレスモニタの装備を義務付けられている船舶は、その中で利用できる予め選定されたデータ項目について、記録を行うこと。
(o)風向・風速
 適当なセンサーが船に取り付けられている場合には適用すること。
 真又は相対風速及び風向が記録されてもよい。しかし、これがどちらであるかも記録すること。
(B)船舶固有のデータ
(a)型式承認当局及び承認番号
(b)IMOの船舶識別番号
(c)使用しているソフトウェアバージョン番号
(d)マイクロフォンの位置及び割当てた記録ポート
(e)VHF通信―どのVHF無線電話かを記録する
(f)日付と時刻の入力源
(g)船位―記録する情報源及び船上におけるその相対位置
(h)その他のデータ入力―記録するデータを供給する機器の識別
(i)最後に行った修正の日付と時刻の自動書込み


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