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船舶電気装備技術講座 〔機器保守整備編〕 (レーダー)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導等
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


第6章 プロッティング機能付レーダー(ARPA、ATA、EPA)
6・1 概要
 プロッティング機能付レーダーには自動衝突予防援助装置(ARPA: Automatic Radar Plotting Aids)と自動物標追跡装置(ATA: Automatic Tracking Aids)、そして電子プロッティング装置(EPA: Electronic Plotting Aids)がある。これらの装置を備えていないレーダーでは船舶相互間の衝突を防止するためには、リフレクションプロッタなどを用いた手動のプロッティングによらなければならないが、ARPA、ATAは、この代わりにレーダーからの情報を電子回路と演算器(マイクロプロセッサ、以下CUPという。)で処理をして他船の動きを常時自動的に監視し、衝突の危険の度合いを計算して、それらを分かりやすい形で表示器に表示するとともに、危険な状態になったらそれを警報する装置であるが、ARPAについては更にその船を避ける操船方法を試行する(以下、模擬操船という。)ことができるようになっている。また、EPAは電子的に他船の位置を指定する操作は手動であるが、計算は自動的に行い、ARPA、ATA同様に分かりやすい形で表示し、危険な状態の場合はそれを警報する装置である。
 ARPA、ATA、EPAの主要性能を比較すると表6・1のようになる。
 
表6・1 ARPA、ATA、EPAの主要性能比較
ARPA ATA EPA
主要要求性能 画面サイズ
(画面有効直径)
340mm以上 船舶GTにより異なる
・10,000≦GT
 340mm以上
・1,000≦GT<10,000
 250mm以上
・500≦GT<1,000
 180mm以上
180mm以上(注2)
捕捉モード 手動捕捉(必須)、自動捕捉(自動捕捉を持つ場合は、捕捉抑制領域の設定ができること) 手動捕捉 手動捕捉
物標数、追尾方式 20物標以上、自動追尾 10物標以上、自動追尾 10物標以上、手動プロット(自動追尾機能なし)
レンジスケール 3、6、12NM 3、6、12NM 3、6、12NM
方位モード N-UP、C-UP(注1) N-UP、C-UP(注1) N-UP(注1)
模擬操船 必要 - -
(注1)N-UP: ノースアップ、C-UP: コースアップ(6・3・2項参照)
(注2):船舶設備規程第146条の12(航海用レーダーの搭載要件)に関する告示第2章第7節第8条第2項では、国際航海に従事しない船舶であって、総トン数150トン以上500トン未満の旅客船及び総トン数300トン以上500トン未満の非旅客船船舶に備える航海用レーダーの表意面の有効径は140mm以上と規定している。
 
6・2 プロッティングと相対速度
 航行中の船舶や障害物等(以下、物標という。)との衝突を防ぐためには、衝突の危険の予測と回避の二面を考えなければならない。そのためにはレーダーの情報を解析して種々の必要なデータを得なければならないが、レーダーそのものは物標の相対的な位置(方位と距離)を測定する機能しか持っていない。
 すなわち、自船に搭載されているレーダーによる物標の測定は、あくまでも物標の相対位置がどのように変化しているかを測定することであり、これをレーダーの画面上でプロットしても、(図6・1のt1〜t3)それは物標の相対運動(6・3・1(1)参照)が分かるだけであって、真運動(6・3・1(2)参照)を表してはいない。この真運動の方位、速度は、相手船の相対速度と自船速度とのベクトルの和として得られる。これらの、相手船の相対速度と真速度は、衝突予防のためには非常に重要な要素である。
 
図6・1 プロッティングと相対運動
 
6・3 レーダー映像の表示方法による分類
 6・1で述べたように衝突予防のためには、レーダーの情報を解析して物標の位置の変化をプロットしていく必要があるが、このレーダー映像の表示方法には、次のような種々の方式がある。
 
6・3・1 運動の表示方式による分類
 運動の表示方式には相対運動を表示するものと、真運動を表示するものとがある。
(1)相対運動=RM(Relative Motion)表示
 相対運動の表示では、レーダー映像面(以下、表示面という。)上の自船の位置(スイープの起点)は固定され、固定物標の映像は、自船の移動に伴って自船の針路と反対方向に移動する。
 したがって、相対運動の表示では、図6・2に示すように自船の動きに対して映像が相対的に移動する。
(2)真運動=TM(True Motion)表示
 真運動の表示にすると、表示面上の自船位置(スイープの起点)は自船の速力と針路に従って表示面上を移動する。このため、陸地などの固定物標は表示面に固定され、図6・3のように動いている物標のみが表示面上を実際の動き方に従って移動することになる。一般的なTM表示の動作は次のようなものである。
 自船の動きは“TM”に切り替えられた時点で、船首輝線が表示面上の中心を通って針路の反対側に約2/3の半径の位置にセットされ、その点から自船の速力と針路に従って移動を開始する。その後、自船の位置が進行方向の半径2/3の点に達したら自動的にリセットされ、再び船首輝線(SHM)が表示面上の中心を通り、元の針路と反対方向の約2/3の点にセットされる。この“TM”の動作中に自船の位置をリセットしたい場合(自船の前方を表示しておきたいようなとき)には、“リセットボタン”を押すことによって、手動で“TM”の開始点へのリセットができるようになっている。
 
図6・2 相対運動表示:RM表示
 
図6・3 真運動表示:TM表示
 
6・3・2 方位の表示方式による分類
 方位表示のモードには、ノースアップ、ヘッドアップ、コースアップ、の三つのモードがある。ARPA、ATAではノースアップモードとコースアップのモードを、また、EPAではノースアップのモードを持たなければならないことになっている。
(1)ノースアップ(North Up)モード
 ノースアップモードでは、図6・4のように表示面上の真上(固定ダイヤルの0度)が真北であり、真方位表示ともいわれている。この場合の船首輝線は自船の針路方位に表示される。この方式は、沿岸を航行するときなどには海図との対比がしやすく、物標の真方位(True Bearing)が即座に読み取れる等の利点があり、自船の測位等に適した方位表示モードである。
 
図6・4 ノースアップモード
 
(2)ヘッドアップ(Head Up)モード
 ヘッドアップモードでは、図6・5のように常に表示面上の真上が自船の船首方向となり、真方位表示とは無関係になる。すなわち、船首輝線は自船の針路方位とは無関係に、常時、固定ダイヤルの0度に表示され、物標方位は自船の進行方向との相対方位(Relative Bearing)として読み取れる。したがって、特に測位が必要でない場合で、大洋の航行や他船の見張り等に適した方位表示モードである。
 
図6・5 ヘッドアップモード
 
(3)コースアップ(Course Up)モード
 コースアップモードに切り替えると、図6・6のようにまず船首輝線が表示面上の0度に表示され、その後は、自船の針路が変化すると船首輝線が自船針路の変化分だけ回転する。このとき、映像の方位は自船が針路を変更しても回転せず固定されたままである。つまり、この表示方法はコースアップモードに切り替えた時点で表示面上の方位が固定されるため、ノースアップモードと同じように、自船の針路の変化による映像のにじみ等がないので、自船の針路が変化しているときでも物標の方位を正確に計測することができ、かつ、映像面と外界との対比も容易であるという利点がある。
 
図6・6 コースアップモード


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