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船舶電気装備技術講座 〔機器保守整備編〕 (レーダー)

 事業名 船舶の電気装備に関する技術指導等
 団体名 日本船舶電装協会 注目度注目度5


1・3 マイクロ波の伝搬
 電波をその伝わり方によって大別すると、いろいろな形で地上を伝わる地上波と電離層で反射をしてくる電離層波などに分類できる。この地上波はさらに、次のように直接波と大地反射波及び地表波の成分に分類される。
 
(1)直接波:送信空中線から受信空中線に直接伝搬する電波で、一般にマイクロ波はこれにより伝搬する。
(2)大地反射波:大地で反射して受信空中線に達する電波で、一般に超短波は、直接波と大地反射波により伝搬する。
(3)地表波::地表面に沿って伝って伝搬する電波で、周波数の低い電波の伝搬形態であり、周波数が高いほど減衰は大きい。
 
 レーダーで使用されているマイクロ波は、地球上層にあるE層、F層等の電離層を突き抜けてしまうので、一般の無線通信などでは、もっと周波数の低い電波による地上波を利用している。一方、電波はその周波数が高くなるほど光に近い性質をもつようになり、マイクロ波ではほとんど可視範囲を中心に伝搬する。したがって、レーダーが物標を探知する範囲は、船のレーダー空中線から目で見える範囲である。しかし、厳密には、大気の密度は高さと共に変化するため、大気中における光や電波の屈折率も同様に変化する。このため、レーダー波の通路は図1・4に示すように正しくは幾何学的な直線ではなく、ごくわずかではあるが多少下方(大地側)へ曲がるので、肉眼による光学的水平線(見通し距離)は、幾何学的水平線(接線)よりは少し長くなり、電波ではそれより更に長くなる。なお、その距離Dは次式によって概算することができる。
 
図1・4 電波の見通し距離
 
 海面からの空中線の高さをha(m)、物標の高さをht(m)とすると、光学的見通し距離は
 
 
 これに対してマイクロ波の場合は、光より更に下方へ曲がり、その距離Dは次式で算出される。
 
 
 したがって、例えば ha=20mの高さから見たマイクロ波による水平線までの距離を考えてみるとht=0であるから、
 
海里となる。
 
1・4 レーダーの周波数と電波の型式
 レーダーに使用するマイクロ波の周波数はその目的に応じて選ばれる。一般に波長が短いほど小さな物標を識別できるが、同時に雨滴等による減衰も大きくなるため最大探知距離が小さくなる。したがって、3cmより短い波長、例えば、1cm以下のミリ波などは遠距離探知の必要のない飛行場の滑走路とか、港湾内の管制用のレーダー等に使われている。
 船舶や航空機等に搭載するレーダーは、空中線の寸法等の関係から表1・1に示すように10cm、5cm、3cm程度の波長のものが大部分である。
 これらのレーダーの、波長による性質の相違は表に示すとおりである。普通は波長3cmのレーダーを基本とし、2台目のレーダーを備えるときに、10cm波のレーダーを追加する場合が多い。
 レーダーでは図1・5に示すように、極めて短時間だけ一定振幅のマイクロ波を繰り返し送出する。このような電波をパルス波といい、パルスが送出されている時間をパルス幅という。また、一つのパルスが発射され、引き続いて次のパルスが発射されるまでの時間をパルスの繰り返し周期といい、これは、パルス幅に比べてはるかに長い時間である。このようなパルス電波の型式はPONと表示する。
 
表1・1 波長別のレーダーの比較表
波長 3cm(Xバンド) 5cm(Cバンド) 10cm
(Sバンド)
周波数帯〔MHz〕 9,320〜9,500 5,460〜5,650 2,920〜3,100
電波伝搬(対気象)に関する項目 雨滴に対する減衰
(1mm/h程度の雨が降っているときの距離10kmにおける減衰は約0.5dB)

(左と同じ条件で約0.09dB)

(左と同じ条件で約0.01dB)
海面反射
(シークラッタ)の影響
空中線に関する項目 同じ利得および同じ水平指向性の空中線の寸法と重量
導波管内の減衰
(長さ10mについて)

1.0〜1.4dB

0.5〜0.7dB

0.2〜0.3dB
導波管の寸法
ただし同軸ケーブルが使える
受信機の雑音指数(ノイズフィギュア) やや大 やや小
総合的な性質 晴天時において最大探知距離、最小探知距離、方位分解等の総合性能を満足し、小物標の探知性能がよい 大略XバンドとSバンドの中間的な性質を示す 荒天時における降雨による減衰が少なく、海面反射の影響も少ないので、悪天候時にとくに有効である。


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