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2・2・11 電圧変動率試験
 発電機の電圧変動特性で規則・規格に規定されているものは、原動機・発電機・励磁機及び自動電圧調整器の特性を含む総合特性であり通常原動機の製造工場で行われる。ただし、発電機の製造工場で行う場合は原動機の速度変動特性を考慮しなければならない。この場合、原動機の速度変動特性が不明の場合は全負荷から無負荷まで直線的に変化するものとみなし速度変動率を3.5%と仮定して実施してよい。
(1)漸変電圧変動特性試験
 定格力率及び全負荷のもとで、定格電圧、定格回転速度に調整後、負荷を100%、75%、50%、25%、0%、25%、50%、75%、100%に順次変化させ、かつ原動機の速度特性に応じた回転速度の変化による端子電圧と各負荷(%)の関係を測定する。この値が既定値以内にあることを確認する。この既定値は船舶設備規程では定格電圧の4%未満、NK規則では±2.5以内(非常発電機の場合±3.5%)である。
 なお、製造工場で、このほか、力率を1.0にした時の特性及び、原動機の速度変動がない時(一定回転速度)の特性も同時に測定しデータをとっておくとこのデータは、船内試験で水抵抗負荷(力率=1.0)を使用したとき及び原動機の速度変動特性が良かったときに参考になる。
(2)瞬時電圧変動特性試験
 瞬時の変動率試験はNK、JGに規定されていないが、船舶用では発電機容量に比し電動機始動kVAの割合が大きな値を占めるのが普通で重要な試験である。JEM規格によると発電機・励磁機及び自動電圧調整器の特性を含み、原動機の速度特性を考慮しないものとして、電動機の始動kVAの大小により4種類が規定されている。
 試験は発電機を定格周波数で運転中規定された負荷を突然加え、そのときの電圧変動特性をオシログラフにより求めた値が既定値内におさまっているかどうかを確認する。なお使用負荷は原則として三相誘導電動機とする。
 この規定値は、JEM1274:97(船用交流発電機)に規定されている4種類の特性のうち第(3)特性によると、力率=0.4以下の80%負荷(誘導電動機の始動kVAが発電機の定格kVAの80%に相当)を加えたとき瞬時15%以内で復帰は0.6秒以内に最終の定常電圧の-3%以内におさまるものとされている。
2・2・12 並行運転試験
(1)並行運転の実施
 船舶設備規程及びNK規則で要求されている並行運転試験の規定は、並行運転を行う計画の2台以上の発電装置に対して実施されるものであって、かつ並行運転中の各発電機の分担すべき負荷の不平衡値は有効電力(kW値)が規定されているため、原動機の「負荷−速度特性」に左右されるものである。従って、試験は、原動機の製造工場において、計画された船に装備される全発電装置について並行運転試験を実施しなければならない。
(2)並行投入試験
 1台の発電機を適宜の負荷において、定格電圧・定格周波数・定格力率で運転中、他の発電機をこれと並列に投入して負荷を移動し並列投入の難易及び任意の負荷分担において異常のないことを確認する。
(3)負荷漸変試験
 2台以上の発電機を並行運転する場合の定格力率における、各機の有効電力の不平衡は、各機の定格負荷の総和の20〜100%間のすべての負荷において、各機の定格出力にもとづく比例配分の負荷と各機出力との差の値が、それぞれ最大機の定格電力の15%未満におさまること。(又は各機の25%を超えないこと。NK規則)
 この場合の発電機は定格力率で75%負荷においてそれぞれの定格負荷に比例する負荷を分担するよう調整した後、試験を開始する。
2・2・13 励磁装置試験
 励磁装置は単独試験終了後のものを使って総合試験において、発電機本体試験と同時に試験する。
(1)温度試験
 温度試験は各部温度が一定となったと認められるまで継続し、各部の温度上昇が表2・18(NK規則)を超えないことを確認する。
(2)容量試験
 定格出力で発電機及び励磁機の温度上昇が一定となった状態で、発電機定格の150%電流(遅れ力率0.6)を2分間通電したとき、励磁機が実用上支障ない発電機電圧を維持するに必要な能力をもつことを確める。
(3)絶縁抵抗試験
 温度試験後、発電機の励磁装置回路と大地間及び励磁機用交流発電機の界磁回路と大地間の絶縁抵抗を、直流500V絶縁抵抗計により測定し、それぞれ規定値以上であることを確認する。
 なお半導体整流器の整流素子は試験前に短絡しておくこと。
(4)耐電圧試験
 絶縁抵抗試験後、商用周波数のなるべく正弦波に近い規定の交流電圧を、充電部と大地間に1分間加え耐電圧試験を行う。
 なお半導体整流器の整流素子は試験前に短絡しておくこと。
 規定の試験電圧は表2・19(NK規則)参照のこと。
2・2・14 過負荷試験
 温度試験に引きつづいて行い、発電機の電圧、回転速度及び周波数を一定に保って、規定の過負荷条件を与え、電気的・機械的・熱的に異常のないことを確かめるものである。
 規定の過負荷条件としてはNK規則では50%過電流で2分間、船舶設備規程では50%過負荷で1分間支障なく運転できるものと規定している。
2・2・15 過速度試験
 回転機の過速度試験では、振動・音響その他機械的な異常を調べる。交流機の場合は電源周波数を上昇させて回転速度を上昇させるのが便利である。
 この試験に対して船舶設備規程では1分間、NK規則では2分間、下記の速度で支障なく運転できるものと規定している。
船舶設備規程    
  発電機    
    タービンにより駆動されるもの・・・ 定格速度の 115%
    内燃機関により駆動されるもの・・・ 120%
    その他のもの・・・ 125%
  NK規則    
    交流機・・・ 最大定格回転速度の 120%
2・2・16 その他の試験
(1)振動試験
 振動試験は、回転機単体の釣り合いの良否を知るために行うもので、回転機を定格電圧、定格周波数又は定格回転速度、定格励磁状態で無負荷運転し、次により振動を測定する。
(a)測定条件
(i)据付状態は、400kg以上については定盤上で400kg未満は弾性体支持で行うのが原則である。
(ii)軸端のキーみぞには、使用するキーの半分の厚さのものを取り付けるのを原則とする。
(iii)電動機は固定せず無負荷運転できるが、発電機の場合は無負荷にして、他の駆動機により定格回転速度で回すか、電動機として運転する。
(b)振動レベル
 定盤上に据え付け、指示振動計又は記録振動計をもって軸受部の振動を測定し、その値は複振幅で2/100mm以下とすること。
(2)騒音試験
 機器を定格電圧、定格周波数又は定格回転速度、定格励磁状態で無負荷運転し、次により騒音レベルを測定する。
(a)測定条件
(i)測定には、周囲からの反射音及び暗騒音ができるだけ少なく、また、変化の少ない場所を選んで弾性体上で行うことが望ましい。
 実際には小容量機種は設備のよい防音室で測定されることがあるが、中容量以上の機械は工場内試験場の定盤上で測定されることが多い。
(ii)暗騒音すなわち周囲騒音と測定された騒音すなわち合成騒音との差が10dB以上のときは暗騒音を無視してよいが10dB未満のときは表2・9により補正する。差が少なく3dB未満のときは測定値に信頼性がない。
 
表2・9 騒音値補正
合成騒音と暗騒音の差(dB) 3 4 5 6 7 8 9
補正値(dB) -3 -2 -1
 
(iii)測定に際しては反射音の影響が少ない場所で行うことが必要で、機器表面からマイクロホンまでの距離に対して、騒音レベルが一様に減少し、かつ距離を2倍にしたとき約4dB以上減少するような場所を選ぶことが望ましい。
(b)測定法
(i)騒音測定はJIS C 1502:90(普通騒音計)を使ってJIS Z 8731:99(環境騒音の表示・測定方法)により行い、周波数補正回路はA特性を使う。ただし、周波数分析を行う場合及び他の特性による測定値との関連を必要とする場合などには、C又は平たん特性の測定も合わせて行うことが望ましい。
(ii)測定位置は、回転機に対して軸中心線を含む水平面上の軸方向及び固定子枠のほぼ中心で軸と直角方向の4点で、定格出力1kW未満は距離0.5m、1kW以上は1.0mの距離で測定する。
(iii)マイクロホンは、機械自体の冷却風の影響を受けないところにおく必要がある。
(c)騒音レベル
(i)騒音レベルは測定値の算術平均をもって機器の騒音レベルとし、A特性で測定したとき、その数値のあとにA記号を付記しておく。なお、騒音計の指示が変動するときは多数回読みとり、その平均値をとる。
(ii)騒音計並びに測定上の誤差を考慮して、騒音レベル測定値に対して3dBの許容値を認めることができる。
(iii)騒音レベルに対する規定値は特にないが船用回転機に対しては100dB以下とされている。
 
図2・14 基準レスポンスと許容差
 
 騒音計の周波数補正回路にはA特性、C特性及び平たん特性とがあり、図2・14の曲線のような基準レスポンスをもったものである。A特性は補正された特性で騒音レベル(計量法によって法定計量単位デシベル(dB)又は(ホーン)として規定されている)を表している。また、平たん特性はほぼ音圧レベルを表す。
 なお、A、C及び平たん特性はそれぞれ別個の周波数補正曲線で重み付けられた互いに換算できない独特の単位系である。
(3)はずみ車効果(GD2)の測定
 船舶電気装備技術講座「電気計算編10.0付録」を参照のこと。
2・2・17 復習問題(3)
(1)発電機の規約効率の算定式について述べよ。
(2)巻線の温度上昇を抵抗法で測定する場合の温度上昇の算定式を述べよ。
(3)交流発電機の温度試験方法にはどんな種類があるか。
(4)交流発電機の漸変電圧変動特性試験について述べよ。
(5)交流発電機の並行運転試験における各機の有効電力の不平衡値はどの程度にしたらよいか。
(6)B種絶縁の交流発電機固定子巻線の抵抗法による温度上昇限度はいくらか。
(7)交流発電機の過負荷試験方法について述べよ。







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