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沖ノ鳥島におけるサンゴの分布と底質の状況に関する調査報告
(株)テトラ テトラ総合技術研究所 綿貫 啓、柴田 早苗
 
1.はじめに
 人間活動に起因した地球温暖化によって、海面がこの100年で10〜90cm上昇するとされている。沖ノ鳥島の2つの小島は大潮の満潮時に十数cmしか干出せず、このままでは、これらの小島は水没してしまう危機にある。日本財団が主催した平成16年11月の調査に参加された大森信博士(東京海洋大学名誉教授)や茅根創博士(東京大学助教授)はサンゴ礁の生物を増やすことで、沖ノ鳥島に州島を作る提案をした。著者らも同様な視点で、サンゴ礁域の生物生産を人為的に加速し、結果的に砂礫を作り、州島によって誰もが認める「島」の創造を考えていた。今回の調査に大森先生らが参加できないことを知り、急遽、参加させていただくことになった。視察の機会を与えてくださった日本財団および大森先生に心から感謝するとともにお礼を申し上げる。
 調査のねらいは、州島の形成にとって重要である成長の早いミドリイシサンゴの分布を把握することと、底質を採取しその中に占める有孔虫起源の砂の割合を把握することである。特に、サンゴについては1998年に沖縄をはじめ世界各地で高水温による白化現象が発生し、サンゴが死滅して、多くのサンゴ礁が壊滅的な被害を受けたが、沖ノ鳥島でもサンゴが衰退していることが危惧される。そこで、旧建設省によって1988年に実施されたサンゴの分布調査1)の側線(図1)と同じ測線上でサンゴの被度を測定し比較することとした。
 なお、現地調査の企画および実施については海洋政策研究財団の福島朋彦氏、沖縄県ダイビング安全対策協議会の横井仁志氏に協力していただいた。
 
2.調査方法
2−1.サンゴの分布調査
 旧建設省によって1988年に実施された調査では、沖ノ鳥島上に南北に8ラインを設定し、ライン上のサンゴの被度調査を実施している(図1)。
 今回の調査は2日間と限定された条件であるため、サンゴが多く分布していたL-4、サンゴの分布に変化のあるL-6を選定し、この測線に沿って目視観察による被度調査を行った。
 各ラインの設定についてはハンディGPSにあらかじめ座標を入力しておき、現地ではGPSで船を誘導し、ライン上の数点に旗を設置した。広域被度観察はスキンダイビング、ライントランセクトはスキューバダイビングで実施した。
 
図1 サンゴ類分布概略図と調査測線1)
色が濃い部分は被度30%以上を示す
 
図2 沖ノ鳥島の水深図
(緑色;水深1m以浅、赤色;水深5m以深、文献1をもとに作成)
 
1)広域被度調査
 広域被度調査は3月28日にL-4とL-6ラインに沿ってGPSを持ちながら海面上を遊泳し、サンゴの被度測定、写真、ビデオ撮影を実施した。この調査の目的はサンゴの分布概要の把握であり、被度は種ごとではなく、科のレベルで分類するものとした。
 なお、調査中に底質に砂や海藻のマット(ターフアルジー)が分布している場合は、有孔虫を採取する目的で砂や藻類を採取した。なお、調査距離が長く、潮流も強いことから、調査に当たっては水中スクーター(アポロスポーツ)を使用した。
 
図3 調査状況概念図
(参考)調査距離が長く潮流も速かったので水中スクーターも利用した。
 
2)ライントランセクト調査
 L-4ラインの北側、中央、南側の3カ所の海底に30mのラインを南北に張り、ライン上に分布するサンゴの種および底質状況について、ライン上に占める長さを測定することとした。29日の午前に3ラインのライントランセクト調査を実施した。
 サンゴの種の同定方法はラインにかかるサンゴのクローズアップ写真をとり、後日、図鑑で確認した。そのうち、判定が可能なものについては種名を記載した。写真では不鮮明なものについては属レベルでの記載に止めた。
 







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